2013年02月08日

777氏:第3話「スイートプリキュア♪の世界―前編―」02

943777:2013/01/09(水) 12:14:23 ID:tNx2.IzI0

 変身を終えた二人は構えを取った。
 エレンは少し戸惑いの眼差しを向け、アコは明らかな嫌悪の眼差しを向けていた。

「思い出した。こういうのをデジャヴュって言うのよね」
「ちょっと違うと思いますけど」
「って、夏海!?」

 いつの間にかディケイドの隣には夏海とナギサがいた。
 誰もいないと思い独り言を呟いたのに夏海やナギサに聞かれ得るとは予想外だった。

「はい? どうしたんですか?」
「ちなみに私もいるわよ」
「……。夏海、勝手に独り言にツッコミ入れないでよ」
「え、なんで嫌そうな顔されないといけないの!? そして、またスルー!?」

 元気に切り返してくるナギサの様子にディケイドは安心した。どうやら調子は取り戻したようだ。
 そのディケイドの微妙な様子に気が付いたのか、夏海は笑みを浮かべた。

「大丈夫ですよナギサちゃん。士子ちゃんは少し照れているだけですから」
「え、そうなの?」
「はい」
「なんだ、そうならそうと言ってくれればいいのに」
「……ふん。二人とも少し下がっていて」

 ディケイドは二人の顔を見ないようにビートとミューズの方に振り返った。

「どうやらあちらはあんまり気が長くないみたいだから」
「分かったわ。夏海下がるわよ。士子あとで覚えておきなさいよ!」

 ナギサは捨て台詞を吐くと夏海の手を引いて後ろに下がった。

「またせたわね」

 ディケイドの前には四人の戦士が並んでいた。
 左から順に、キュアメロディ、キュアリズム、キュアビート、キュアミューズ。
 その中からミューズが一歩前に出る。

「一つだけ確認させて、あなはキュアディケイドで間違いないのよね」
「さっきもそっちの二人に言った通りよ。答えは、YES」
「そう。じゃあ、手加減はいらないわね!」


944777:2013/01/09(水) 12:15:03 ID:tNx2.IzI0

 ミューズは胸元に装着してあったモジューレを手に取った。

「シの音符のシャイニングメロディ!」
『プリキュア・シャイニングサークル』

 ミューズがそう叫ぶとミューズの体から四体の分身が生み出された。分身はディケイドを取り囲んだ。その直後にミューズのモジューレの先から光線が発せられる。光線は分身と分身で結ばれ、綺麗な五芒星を作り出した。

「やば!」

 五芒星の中心にいたディケイドは危険を感じすぐにその場を離脱する。
 しかし、ミューズの攻撃の方が少しだけ早かった。

「逃がさない!」

 五芒星の中心から光が吹き出した。離脱が間に合わなかったディケイドの左足が光に包まれる。

「くっ」

 なんとか光から抜けだしたディケイドだが、光に包まれて左足が思うように動かないことに気付く。
 今の攻撃は拘束系の技だ。左足がしびれて動かないのもそのせいだ。
 ディケイドがそう考えるているうちキュアビートの声がした。

「弾き鳴らせ、愛の魂! ラブギターロッド!」

 気が付けばビートの手には大きなギターが抱えられていた。

『ビートソニック!』

 ビートがギターを弾き鳴らすと音符のエネルギー体が出現した。
 その音符の矢が飛来する。それも一つではない。数え切れないほどの音符が雨のように降ってきた。
 ディケイドは左足を庇うように右足の力のみで跳んだ。

「先手を取られたのが不味かったわね」

 苦言を口にしながらも音符の矢を避け続ける。

「ビート!」
「!」
「後ろ!?」

 回避を続けるディケイドの後ろからメロディとリズムが迫っていた。メロディの声にビートは射撃を一時中断する。
 最後の矢の一陣が地面に突き刺さると同時にメロディとリズムが攻撃する。

「はあ!」
「やあ!」

 避け切れないと思ったディケイドはその場で攻撃を受けることを選択した。
 しかし、痺れの残る左足の踏ん張りが効かずに吹き飛ばされる。

「きゃ!」
「今よ、みんな!」

 ミューズのかけ声に三人が頷く。

「奏でましょう、奇跡のメロディ!」
「刻みましょう、大いなるリズム!」

 二人がかけ声を発すると前にそれぞれの道具が現れた。

「ミラクルベルティエ!」
「ファンタスティックベルティエ!」

 ディケイドは地面を転がるもすぐに起き上がる。
 だが、すでにスイートたちの攻撃の準備は整っていた。

「駆け巡れ、トーンのリング」
「駆け巡れ、トーンのリング」
「駆け巡れ、トーンのリング」
「シの音符のシャイニングメドレー」

 ディケイドは先とは比べ物にならいほどの危険を感じた。


945777:2013/01/09(水) 12:15:23 ID:tNx2.IzI0
 すぐさまポシェットに手を伸ばし、カードを取り出した。

「間に合って!」

 カードをドライバーに挿入すると同時に攻撃がきた。

『プリキュア・ミュージックロンド!』
『プリキュア・ミュージックロンド!』
『プリキュア・ハートフルビートロック!』
『プリキュア・スパークリングシャワー!』

 三色の光の輪と大量の音符がディケイドに向かって勢いよく飛翔する。

《FINAL ATTACK RIDE D D D DECADE!!》

 ディケイドの前にカードが出現する。片膝を付きながらも構えを取った。

『プリキュア・ディメンジョンバスター!』

 ディケイドは急いで攻撃を放った。しかし、光弾は全てのカードを通過する前にスイートたちの攻撃で数枚のカードが破壊される。

「くぅ!?」

 光と光が激しくぶつかり合う。
 



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


946777:2013/01/09(水) 12:15:42 ID:tNx2.IzI0

「士子ちゃん。大丈夫ですか?」

 四対一の状況に夏海は困惑する。大量にいる敵とは違い、今の相手はプリキュア。それが四人も士子に襲いかかっているのだ。
 いくら士子が強いといっても心配だった。

「大丈夫。あれくらいなら一人でも勝てるわ」

 夏海の心配を他所にナギサはなんとも気楽な発言だった。

「どうしてですか? 相手は四人もいるんですよ」
「だって、あの娘たち一人で戦ってるじゃん」
「は?」

 戦場に目を向けるもそこでは四人のプリキュアが次々に襲いかかっている様子がはっきりと見える。
 とても一人で戦っているようには見えなかった。

「私にはみんな一緒に戦っているように見えますけど」
「あ〜。夏海には難しかったか」

 ナギサは一度咳払いをすると解説を始めた。

「あの娘たちは一見するとちゃんとコンビネーションを駆使して、戦っているように見えるけど実は違うの。
 よく見れば分かると思うけどあの娘たちは攻撃のタイミングが全くといって言いほど取れていない。」

 ナギサの言葉に夏海は注意して見る。
 すると不思議なことが分かった。

「本当だ。みんな自分たちのタイミングで攻撃しています」

 夏海の言葉にナギサは頷く。

「そう。あの娘たちは仲間の攻撃を邪魔しないように自分の攻撃を仕掛けている。だから思うようにディケイドに攻撃が当たらない。
 最初の一撃こそ当たったけどそれも不意打ちだった。一つの目標に対して四人が一斉に攻撃してるだからお互いの攻撃が邪魔になる。仲間の行動にも気を配らないといけないから思うように攻撃できない。
 結果として、自分たちの攻撃が萎縮してしまう。
 これだったら一人ずつ戦った方がマシね」

 ナギサは深いため息をついた。
 そんなナギサの様子を見て、夏海は思った。
 ナギサは前の世界では一人で戦ったきた。相棒はいたけどその子とは一緒に戦えなかった。一人で戦うことの寂しさと辛さを知っている。だからこそ不甲斐ない戦いをしている彼女たちに落胆しているのかもしれない。
 それでもナギサは戦いから片時も目を逸らしていなかった。

「こんな戦い方を続けていたら、いつか私みたいになる」

 ナギサはぽつりと呟く。
 仲間を友達を失うような思いはして欲しくない。それがナギサの純然たる気持ちだった。

「だから、士子。ビシッと決めてあげて」

 ナギサはそう言った。直後に互いの必殺技が衝突した。




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947777:2013/01/09(水) 12:16:03 ID:tNx2.IzI0



「う〜ん。ちょっと厳しいかな?」

 ディケイドは目の前で激しくぶつかり合う光を見ながら言う。
 ディケイドの放つ『ディメンジョン・ブレイカー』は上乗せ型の必殺技だ。まず目標物と自分の間にカード型のエネルギー体を出現させる。次に小さなエネルギー弾を生成し、放つ。カードを通過するさいにカードのエネルギーを吸収し威力を増大させ、速度を加速させる。
 その絶対の威力を誇る『ディメンション・ブレイカー』を支えるカードがスイートたちの必殺技によって半数が砕かれてしまったのだ。

「特化型ってのは怖いわね」

 軽口を叩くが心中は穏やかではなかった。
 スイートたちの攻撃そのものは驚異ではなかった。ただ警戒しなければいけなかったのが、必殺技の豊富さと威力の高さだ。
 それを気をつけていたはずだったが、現状は自分が圧倒的に不利な立場にいる。

「万事休すね」

 そういう間にディケイドの放った攻撃がスイートの光弾に飲み込まれた。
 無駄だと思いながらもディケイドは防御の体勢を取る。
 そして、派手な爆発が響く。


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948777:2013/01/09(水) 12:16:20 ID:tNx2.IzI0


「やった!」

 必殺技がディケイドに直撃したのを見て、メロディは歓声を上げた。
 四人の必殺技が直撃したのだ。無事で済むはずなかった。
 しかし、煙が晴れて中から現れたのは、地に伏したディケイドの姿ではなかった。

「……うそ」

 ディケイドはゆっくりと立ち上がる。服に付いた汚れを取り払う。

「だいたい分かったわ」

 ディケイドはそれだけ言うと一歩踏み出した。
 じゃり、という地面を踏みしめる音が聞こえた。
メロディはディケイドの足踏みの音だと思った。
 しかし、それは間違いだった。音は自分たちの足元から聞こえたのだ。
 ふと周りを見ればみんなも僅かだが後退しているのが分かった。
 気が付いたのだ。このままだと負けると。
 自分たちが持てる最大級の攻撃が失敗した。今までは何とかこの攻撃で敵を撃退することができた。
 けど目の前の敵は格が違った。
 最大限の攻撃が破れた。単純な事実。だが、とてつもない現実だった。

「このままだと私の負けね」

 ミューズのあまりにも冷静な一言がメロディ、リズム、ビートの肩に重くのしかかった。
 ミューズは仲間内では一番幼いが、一番のしっかり者である。いつも全体のフォローに回って状況を見極めてくれる。
 そんな頼もしい存在から聞きたいくない言葉だった。
 
「ミューズ、そんな言い方しなくても!」
「ビート。私は現状を言ったまでよ」
「でも。さっきはいい形で攻撃が通ったじゃない」
「それも不意の攻撃だったからよ。今度は通用しないはずよ」

 ビートが反論しようとするもミューズは一蹴した。
 たまらずリズムが言った。

「じゃあ、どうすればいいの!?」
「さっきも言ったけどこのままだと全滅。だったらやることは一つよ」

 リズムの問に先ほどよりも端的に答えるミューズ。

「黙っててもやられるならこっちから仕掛けるしかない」
「ならもう一度さっきの要領で攻撃しましよう」

 リズムの意見にメロディも同意した。
 メロディは思った。同じ手が二度効くとは思っていない。だが、必殺技を繰り出すまでの流れは良かった。もう一度、先ほどのような攻撃が繰り出せれば。
 そんな淡い期待を抱きながら身構えた。
 不安を抱きながらもスイートたちはディケイドに対して構えた。

「止めよ、止め」

 ディケイドは突然そんなことを言い出した。

「はい?」

 メロディは一体なにを言われたのか分からなかった。
 ディケイドの体に光が集まる。光が弾けた後には制服姿の門矢士子がいた。

「どうして変身を解くの!?」

 メロディは声を荒げた。
 最強の敵が獲物を目の前にして刃を引いたのだ。助かったという安堵と強い疑問が浮かび上がった。
 その事に士子はこちらに背を向けながら言った。

「あなた達とこのまま戦っても負けないからよ。あなた達みたいな弱いプリキュアには興味ないわ」

 そんなことをさらりと言ってのけた。
 そして、踵を返し歩き出した。

「……ふざけないで!」
「メロディ!?」

 激昂したメロディはリズムの制止を振りきって士子に殴りかかった。

「ふん!」
「え?」

 士子の背中に向けて拳を突き出したメロディであったが、気が付けば空を見上げていた。

「イタ!」

 背中に痛みを感じる。肺にあった空気が強制的に吐き出される。
 苦しみながらも目を開けると目の前には士子の小さな拳があった。

「分かったでしょう。今のあなたたちじゃ勝ち目がないことくらい」
「そんなことはーー」
「現に変身を解いている私に攻撃を当てることすらできない時点で勝算はゼロよ」
「くっ」

 拳を退けると士子は再び歩き出した。

「すでに壊れかけている物を破壊するのは私の趣味じゃないわ」

 それだけ言うと士子は、夏海たちの元へと歩き始めた。 


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949777:2013/01/09(水) 12:16:38 ID:tNx2.IzI0


「待たせたわね」

 士子は近くで戦いを見ていた夏海とナギサに近づいた。さっきまで、殺伐とした戦いを繰り広げていたにも関わらず、実にいつも通りの士子だった。

「大丈夫でしたか、士子ちゃん」
「ふ、心配してくれるの夏海?」
「べ、別に心配なんてしてませんよ。ただ、士子ちゃんが怪我すると手当をする身として大変だからです」
「素直じゃないわね」
「士子ちゃんに言われたくありません!」

 夏海をからかうといつも通りの反応が返ってきた。そのことに安堵しながら隣りにいるナギサに目を向けた。

「あんたも来てたのね。てっきり今でも部屋でいじけると思ったのに」
「誰がいついじけてたのよ。本当に口が減らないわね。……ところで」

 ナギサが士子から視線を外し、奥へと向けた。

「あの娘たちはあのままにしておいていいの?」
「いいのよ。少しは自分たちで何が悪いのか向き合う時間が必要でしょう」

 士子はやはり振り返らずに言った。そして、写真館へと帰路に着いた。

「そう。なら、私から特に言うことはないわね」

 ナギサもそれだけ言う歩き始めた。

「あ、二人とも待って下さい」

 夏海は一度だけ後ろを振り返った。
 そこでは、プリキュアたちがなんとも言えない表情で立ち尽くしていた。


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950777:2013/01/09(水) 12:17:33 ID:tNx2.IzI0

 音楽の街、加音町は至るところに音楽があふれている。それは時計台とて例外ではない。街の中心部にその大きな時計台はそびえ立っている。
 時計台は時間になると音楽を奏でる仕掛けが施されている。その仕掛けを内蔵している塔内にはいくらかの空間が存在する。
 もとは整備用に作られていたが、仕掛けの作りが良かったのか、整備をすることはほとんどなくなり、今では、この空間の存在を知る者の数自体が少なくなった。

「くそ、今回も失敗か!」

 そんな誰も寄り付かないはずの時計台の上段から男の声がした。

「なんだってんだ。一体!」

 声の主はバスドラだった。バスドラは巨体に似合うだけの怒声を上げ、テーブルであるちゃぶ台に拳を叩きつけた。

「またしてもですね。しかし、まさかあのような助太刀が来るとは。あと、バスドラちゃぶ台を叩くのはやめなさい。あなたの馬鹿力では壊れてしまいます」

 そんなバスドラとは対照的にバリトンは冷静に努めていた。バスドラの怒りも最もだが、今はミシミシと音を立てているちゃぶ台の方が心配だった。

「というか、今回は予想外の事が多すぎたよ。せっかく僕が立てた作戦が台なしになっちゃった」

 窓の外を見ながらファルセットはつまらなそうに言った。
 トリオ・ザ・マイナーの三人はアジトである街一番の時計台の最上階で反省会を開いていた。

「セイレーンの動揺を誘って、オチビちゃんが来る前にあの二人を一気に叩いておくはずだったのに」
「途中までは完璧な運びだったんですが……」
「それもこれも、あの新しいプリキュアが出てきたのが悪いんじゃ!」

 再びバスドラが怒声を上げる。バリトンとファルセットの二人は寸で耳を塞いでいた。

「確かにあのプリキュアは私たちの情報にはない敵でしたね」
「そもそもプリキュアは全部で四人のはずだよ。どうして新しいのが出てくるのさ?」
「それは私にも分かりません。ただ、一つ言えるのは厄介な敵が一人増えたということです」

 そういうとバリトンはどこからか移動式の黒板を持ってきた。そこには今回の計画の概要が絵を用いて描かれていた。
 そこに新たにディケイドと枠を用意した。

「このディケイドが何者かは分かりませんが、少なくても私たちの味方になることはないでしょう」
「そうだね。前のミューズみたいに傍観者を気取る訳じゃなさそうだしね」
「今後は、ディケイドが助けに来る前提で、作戦を考えないといけないわけですね」

 怒り心頭のバスドラを他所にバリトンとファルセットは次回に向けて対処方を考えていた。

「お前らー! リーダーを差し置いて勝手に作戦会議を始めるんじゃない!」

 そのことが更にバスドラの血圧を上げてしまった。

「今の頭に血が登ったままのあなたでは役に立ちませんよ。まあ、元々あんまり役には立っていませんが」
「それにいつバスドラがリーダーになったのさ?」
「そんなもん最初からに決まってるだろ!?」
「それは、あなたの理屈ですよ」
「むしろ、作戦とか考えてる僕の方がリーダーには向いてるよ」
「いえ、そこは容姿良し。頭脳良し。性格良しの三拍子揃った私がリーダーに相応しいです」

 バスドラのリーダー発言に二人が噛み付く。バスドラは自分がリーダーだと主張するが、他の二人も自分こそがリーダーだと言って譲らない。
 これは、このトリオがこの任務に就いてからずっと言い争っている事柄だ。

「……どうやら今日という今日こそは決着を付けないといけないみたいだな」
「……いいでしょう。いい加減その偉そうな口を矯正しないといけないと思っている所でした」
「……僕だって、君たち二人より下だなんて思ったことは一度もないよ?」

 三者の間に火花が飛び散る。三人ともゆっくりと構えを取る。周囲の空気は静まり返っていた。


951777:2013/01/09(水) 12:17:51 ID:tNx2.IzI0

「……」
「……」
「……」

 三人の殺気に押されて窓際にいた鳥が羽ばたいた。その羽音を開始の合図と取った三人は同時に動いた。

『♪〜〜♪〜〜♪』

 それと時を同じくして、時計台の時刻を知らせる仕掛けが作動した。
 人形たちが飛び出し、小さな舞台の上で演奏を繰り広げる。人形たちは軽快な音楽で嬉しそうに演奏している。
 それとは対照的にさっきまで殺気をみなぎらせていた三人は耳を抑えて身悶えしていた。

「しまった! この音があるのを忘れていた!」
「ここは良いアジトですけど、この楽しげな音楽だけは許せません!」
「もう、楽しい音楽は嫌だ!」

 マイナーランド出身である三人には、楽しい音楽は苦痛でしかなった。彼らにとって心地良い音楽とは悲しみで溢れた音楽なのである。
 苦痛でしかない音楽を間近で、しかも大音量で聞いているのだ。三人のダメージは計り知れない。
 しばらくすると人形たちの舞台は終了した。

「ぐお〜」
「ああ〜」
「うう〜」

 演奏が終わってもダメージの抜けきっていない三人は苦しんだでいた。
 そんな三人を見下ろしている人物がいた。

「騒がしいな君たちは」

 男は床でぐったりしている三人に話しかけた。

「だ、誰だ!?」

 一番最初に反応したのは、体力のあるバスドラだ。バスドラが顔を上げるとそこには中年の男がいた。

「私か? 私は予言者だ。君たちに力を貸そう」

 男はバスドラの質問に口元を歪めながら答えた。


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952777:2013/01/09(水) 12:18:08 ID:tNx2.IzI0

 加音町の丘の上には聖堂がある。少しばかり古びた外装とは不釣合いなほど巨大で立派なパイプオルガンが設置されている。街のイベントなどにも度々使用されるなど今でも街の象徴の一つだ。その聖堂と隣接する建物がある。聖堂の管理棟だ。巨大な聖堂を管理するためや演奏会を開く際に遠方からの音楽団を宿泊させるためにも使われている。
 その管理棟の一室、リビングに当たる場所で初老の男と少女たちが談笑していた。

「皆さんお茶が入りましたよ」
「ありがとう。おじいさん」

 士子は栄次郎からコーヒーを受け取ると香りを楽しんでから口に含んだ。ほろ苦い味が口に広がる。あとにはさっぱりとした酸味が残っていった。

「う〜ん。なかなかね。また腕を上げたわね」
「はは。さすがに毎日入れていれば自然と上達するよ」

 栄次郎はそう言うと他の二人には紅茶を差し出した。栄次郎からの紅茶を受け取る夏海とナギサ。
 ナギサは紅茶に口をつけながら言った。

「コーヒーは嫌いじゃないけど苦いのが未だに慣れないのよね」
「私もそうですね。インスタントは苦手ですけどおじいちゃんの淹れてくれるコーヒーは好きです」
「まだまだお子ちゃまね」

 士子はやれやれと首を振った。

「特にナギサなんて、ブラックでしょ? ブラックがブラックコーヒーが飲めないなんてギャグよね」
「それは関係ないでしょ!?」
「本人の嗜好がブラックと正反対よね。あんたツッコミ待ちで名前付けたでしょ?」
「そんな訳ないでしょう! 大体、私が名付けたんじゃなくて、最初に変身したときに勝手に口走ってたの」
「そう。やっぱりその頃から残念だったのね」
「私の頭を哀れみの目で見るな〜!」

 そのやり取りに夏海がふふっと笑みをこぼす。

「士子ちゃん、ナギサちゃんが元気になったのが嬉しいからってあんまり苛めちゃだめですよ?」
「へえ、そうだんだ士子」

 夏海の言葉を聞いたナギサは急にニヤニヤとし出した。

「ねえ、そうなの士子? 私が元気になって嬉しい?」
「は? なに言ってるの。私はおもちゃが直ったと思っただけよ」

 士子は残っていたコーヒーを一気に煽って、あさっての方向を見ながらお代わりを要求した。


953777:2013/01/09(水) 12:18:26 ID:tNx2.IzI0
 三人はそんな士子を見て、にっと笑い合った。

「おじいさん、お茶のお代わり遅いわよ!」

 カラ〜ンカラ〜ン。来客を告げる鐘の音が鳴った。

「おや、お客さんかな?」
「おじいさんはお茶のお代わりをお願い。出迎えは私がするから」

 言うが早いか、士子は出迎えに行こうとしていた栄次郎を制して席を立った。
 その光景をまたしても三人は笑って見ていた。

「は〜い。どちらさま? ここは光写真館ですけ……ど」

 玄関に向かった士子は横柄な態度は思いもよらない人物たちを見た。

「なんで?」
「え?」
「にゃぷ?」

 そこには先ほど戦ったばかりの二人の少女と白髪の少女がいた。

「新しいお茶が三つ必要ね」

 士子は小さく呟いた。



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954777:2013/01/09(水) 12:19:03 ID:tNx2.IzI0


 ラッキースプーンという洋菓子店がある。加音町でも人気の高いお店である。美味しいお菓子に可愛らしい外装と買った商品をその場で食することができる景色の良いバルコニーが売りである。
 そんなラッキースプーンの厨房では二人がお菓子を作っていた。

「……」
「ヒビキちゃん、大丈夫?」
「え?」

 その言葉にヒビキは我に帰る。隣りを見れば、この店主である美空が作業を止めてこちらに来ていた。
 美空はポニーテールを揺らしながら心配そうに見ていた。
 
「手。止まってるけど」
「あ、ごめんなさい。ちょっと考え事してて」
「何かあったの?」

 美空はヒビキの顔をじっと見つめてきた。覗きこんでくる美空は若々しく、とても同級生の母親だとは思えない。
 美空はカナデの実の母親だ。幼い頃から良くしてもらっているヒビキはいつものようにこの店で美空のお手伝いをしていた。
 いつもなら楽しくお菓子作りに励めるのだが、今日はここに来る前の出来事がどうしても頭から離れなかった。

「……ううん。なんでもない」

 その視線から逃れるように目を逸らした。

「そう。ならいいけど」

 それだけ言うと美空はカウンターへと戻っていった。

「……」

 嘘を付いたようで、なんとも言えない心苦しさがあった。
 それを取り払うかのように作業を始めた。

「飾り付けの続きしないと」

 近くに出してあった苺を手に取る。よく洗ったまな板の上に苺を乗せ、包丁でヘタの部分を切り落としていく。
 しかし、その手つきはおぼつかないものだった。
 ヒビキの脳裏をよぎって行くのは、カナデの顔だった。
 一番の親友。もちろん、エレンやアコも親友と呼べる存在だろう。
 しかし、カナデは別格だ。幼い頃から一緒に過ごしてきた。楽しいときも辛いときも一緒になって経験してきた。
 始めてプリキュアに変身したときも大変だったが、なんとか二人で乗り越えてきた。
 そんなカナデに対する思いが揺らいでいるのをヒビキは感じていた。

「ズレてる、か」

 突然現れた少女、門矢士子。あのキュアディケイドでもあった彼女からの一言が胸の奥に突き刺さっていた。

「そんなこと言われなくても分かってるわよ」

 ヒビキにもその言葉の意味は分かっていた。勉強はできなくてもそれくらいのことは分かる。なぜなら自分自身のことだから。

「でも、分かってても変えられない」

 ヒビキの口から出た言葉には、悔しさと憤りが混ざっていた。


955777:2013/01/09(水) 12:19:21 ID:tNx2.IzI0

「イタ!」

 ヒビキは指先に鋭い痛みを覚えた。見れば指先に小さな切り傷ができており、そこから微かにだが血が流れていた。
 すぐさま近くの水道の蛇口をひねる。痛みを覚えながらも傷口を洗い流していく。

「ヒビキちゃん大丈夫!?」

 ヒビキの声を聞いた美空が慌ててカウンターから戻ってきた。

「ええ、大丈夫です」
「本当に!?」
「もう心配性だね、美空さん。ちょっと切っただけだよ」
「そう? はい、絆創膏よ」

 傷が大きいものでないのを確認した美空は安心したようで、救急箱から絆創膏を一つ取り出した。

「ありがとう」

 受け取った絆創膏を貼る。指先を覆う絆創膏を見るとふと懐かしい感情が現れた。
 美空に料理を初めて教えてもらったこと。何度も失敗して、手を傷だらけにしたこと。
 それかもっと昔に手だけでなく、体中にーー。

「ヒビキちゃん!?」
「え?」

 深い思考に陥りそうになっていたヒビキは美空の大声で現実に引き戻された。

「あなた大丈夫じゃないわよね? 顔だって真っ青よ!」

 ヒビキは近場にあった鏡を見る。そこには店に来たときは別人のような顔の自分がいた。

「……ヒビキちゃん。もう今日は帰りなさい」
「え? でもまだ明日の仕込みが終わってない」
「これは、店長としての判断よ」
「……」

 美空の真剣な顔を見るとヒビキはそれ以上なにも言えなくなった。
 自分のせいで美空に負担を掛けさせてしまった。
 そんな落ち込んでいるヒビキを励ますように笑顔で美空は言った。

「大丈夫よ。それくらいは私一人でも十分出来るから。それにしばらくはお店もお休みしないといけいないから」
「どういうこと?」
「あら、忘れたとは言わせないわよ?」

 美空のヒビキの額に軽く指を当てた。片目を閉じて、魅力たっぷりにウィンクしてみせた。

「だってもうすぐよ。私たちのーー」


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956777:2013/01/09(水) 12:19:39 ID:tNx2.IzI0

 街の中心部から少し離れた場所にその洋館は建っていた。少しばかり古めかしい装いだが、しっかりとした印象を与える。
 内装は現代風のリフォームが施されているため、外見よりもずっと立派である。そんな洋館にはたくさんの部屋がある。その一室に防音設備の整った部屋がある。
 そこでは、一人の少女が男性からピアノのレッスンを受けていた。
 少女はポニーテールを揺らしながら懸命に鍵盤を叩いている。指導者である男性はその音をしっかりと耳にした。しかし、次第に男性の顔が曇っていく。
 ある程度弾き終えてところで男性は手を叩いた。

「ストップ、ストップ」

 男性の声に少女は手を止めた。

「カナデさん。どこか調子でも悪いのかい?」
「すいません」
「別に謝る必要はないんだけど」

 俯き加減のカナデに団は困ったという風に頭をかいた。

「昨日はこんな調子じゃなかったよね。学校で何かあったのかい?」

 団は腰を落として、カナデの顔を覗き込んだ。カナデは団の優しい顔を見るとなんとも言えない気分になった。
 カナデは少しでも演奏が上達出来るように団に放課後のレッスンをお願いしていた。とは言うものの毎日レッスンを受けれる訳ではない。
 学校の先生で、吹奏楽部の顧問まで担当して、その上プロの演奏家としても活躍している団だ。忙しいなかでも時間を割いてくれるのだ。
 感謝の気持ちでいっぱいなのだが、今日ばかりはその気持ちとは別の気持ちが胸を支配していた。

「……いいえ。何もなかったです」

 カナデの言葉を聞いた団は少しだけカナデの顔をじっと見めた。

「そうかい? それならいいんだけど」

 団はゆっくりと腰を上げると扉の方に向かった。

「どこに行くんですか?」
「ちょっと飲み物でも取ってくるよ。少しゆっくりしててね」

 それだけ言うと団は扉の向こうへ消えて行った。

「最近、なにやっても上手くいかないなぁ」

 そうぼやくと自然とため息が出た。
 ここ最近の出来事を振り返ってみる。学校の助っ人も上手くいっていない。勝利に貢献できるのだが、その成績は芳しくない。プリキュアとしての戦いはいつもぎりぎりの勝利だ。あげく、団先生には気を使われてしまった。
 上手くいかない原因はなんとなくだが予想はついている。

「けど、そう簡単じゃないわよね」

 カナデは何の気なしに人差し指で鍵盤を叩いた。ポーン、という音が響く。続けて他の鍵盤も叩いてみる。一つだった音がいくつも重なりそれだけで一つの音楽になっていた。

「鍵盤を叩くくらいヒビキに何か言えたらいいなのにな」

 そうして、鍵盤の端を叩き終えると同時に扉が開いた。団は水の入ったペットボトルを二つ持っていた。

「はい、カナデさん」
「ありがとうございます」

 団から渡されたペットボトルを受け取ると一口飲んだ。冷たい水が体の中を流れていくのを感じた。
 このお水と一緒にもやもやした気持ちも流れてくれればいいのにとカナデは思った。

「ふーむ」

 未だに浮かない顔をしているカナデを見て団は決心した。

「カナデさん、いいかな?」
「はい。何ですか?」

 団に呼ばれてカナデは顔を上げた。

「今日の練習はこれで終わりにします」
「え? ど、どうしてですか!?」
「どうしてもこうしても。それはカナデさん自身が良く分かっているんじゃないかい?」
「そ、それは」
「いずれにせよ。集中できていないならいくら練習を続けても身にならないよ」
「……はい」
「それにそろそろレッスンはお休みしようと思ってたところだ」
「え?」
「ほらもうすぐじゃないか。僕たちのーー」



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


957777:2013/01/09(水) 12:20:08 ID:tNx2.IzI0


「で、どうしてあなたがここにいるの。ディケイド?」

 アコは殺気のこもった視線を士子に向けた。
 家に入ってきたアコたちは促されるままにリビングに入った。アコとエレンは周囲を警戒しながら席に着いた。ハミィは状況がよく分かっていないらしく忙しく家の中を見回している。
 テーブルにはアコ、エレン、ハミィが座っている。その三人と対面するように士子は座っている。その後ろには夏海とナギサが立っている。

「どうしてと言われても私にもよく分からないのよ」
「ふざけてるの?」
「別にふざけてないわよ。なんとなくじゃないの?」

 士子の物言いが気に入らなかったアコは勢いよく席を立った。今にも襲いかかりそうだったが、エレンはそれを手で制した。
 エレンの行動にアコは大人しく席に着いた。
 代わりとばかりにエレンが口を開いた。

「あなたがいるこの場所は私たちが住んでいる家なの。いえ、この様子だと私たちの家だったと言った方が正しいでしょう」
「でもどうして違う家になっちゃったにゃ?」
「そんなの分からないわよ」
「どうせあなたの仕業でしょう。ディケイド?」

 三人はそれぞれ疑惑の目を士子に向けた。

「なるほどね」

 士子はそう言うと背もたれに寄りかかった。

「どうしてあなた達の家が写真館に変わったのかを説明するのは簡単よ」
「どいうことなの?」

 ナギサの問いに士子は答えた。

「簡単よ。私はこの世界でも何か役割を持っている。だからこの場所が選ばれたのよ」
「……ごめん。よく分からないんだけど」

 自信満々に答えた士子だが、ナギサの反応に出鼻をくじかれてしまった。
 こほんと咳払いを一つ取った。

「さて、この状況を説明する前に自己紹介でもしましょうか」
「あれ、私の発言なかったことにされたる?」

 士子はそれすらも無視した。拳を握っていたナギサを横にいた夏海がまあまあとなだめる。

「知ってると思うけど一応言っておくわ。門矢士子。またはキュアディケイドよ」
「光夏海です。この写真館の持ち主である光栄次郎の孫娘です」
「美墨ナギサよ。みんなと同じプリキュアよ。正確には、プリキュアだったかな?」
「私たちは色々な世界を旅しているの。世界の消滅を防ぐためにね」
「世界の消滅?」

 その言葉に反応したのはアコだった。アコは訝しげな目で士子を見た。

「そうよ。この世界以外にも様々な世界があるの。私たちはあなたちの世界を『スイートプリキュアの世界』と呼んでいる。この世界は、こことは別の世界がいくつかあるわよね?」
「ええ。この人間界とは別にメイジャーランド。マイナーランドがあるわ」
「それよ。この世界はいくらかの世界を内包している。いわゆるビルのようなもの。そのビルがたくさんあると思ってくれればいいわ。そのビルは縦ではなくて横に繋がってるの。たくさんのビルたちは何らかの力によって崩壊しようとしている」

 士子は一息置いて言った。

「私たちはそれを。世界の崩壊を止めるためにこの世界を訪れたの」
「……」

 士子はアコの目を見た。さきほどと同じでこちらを疑っている目だ。
 しかし、その瞳からいくらかの疑念の色が薄くなっていることに気が付いた。その視線が士子を通り越し後ろに立っているナギサに目をやった。 

「そう。じゃあ、そこの美墨さんとやらも他の世界のプリキュアなの?」
「そうよ。私はここの世界に来る前、えっと一つ前の世界で士子に助けてもらったの」
「で、お礼に一緒に旅をしているの?」
「う〜ん。お礼ってわけじゃなくて、どっちかというと巻き込まれた感じかな?」

 あはは、と頬をかきながらナギサは答えた。
 その表情にアコは直感的にこの娘は嘘を付けるような人間ではない思った。どことなくだが、自分の近くで世話を焼いてくる元気な方と雰囲気が似ていた。彼女も嘘をつくのが苦手だった。
 士子はアコの表情が少しだけ和らいだのを見るとほっとした。自分としても無駄な争いは避けたいところだった。

「ま、そういう訳で、私はあなたちを倒しにきたんじゃないの」

 自己紹介を終えると士子は次をそちらだという視線を向ける。


958777:2013/01/09(水) 12:20:30 ID:tNx2.IzI0
 アコは無視。エレンはどうしようかと悩んでいた。そんな二人とは別に白髪の少女が元気な声を上げた。

「白山ハミにゃ。でもこれはこの姿の時の名前にゃ。本当はハミィっていうにゃ!」
「この姿ってどういうこと?」

 ハミィの発言に夏海は首を傾げる。

「ふふ、こういうことにゃ!」

 そういうとハミィの体が淡く光った。そして、気が付くとテーブルの上には真っ白な猫が座っていた。

「え?」

 夏海のあっという間の出来事に付いていけなかった。

「……もしかして、ハミィちゃん?」
「そうニャ。これがハミィの本当の姿ニャ!」
「え、ええ!?」

 夏海の問いに小さな猫は元気よく返事をしてきた。しかも人間の言葉を喋ってきた。

「へえ、なんかあるとは思っていたけどそれが本当の姿なのね」
「ありえな〜い! ちっちゃくてかわいい! ねえ、触ってもいい?」
「いいニャ」
「うわ〜。毛並みが凄くいい。さらさらだ」
「ニャ〜。ナギサくすぐったいニャ!」
「ああ、ごめんごめん」

 驚きを隠せない夏海とは対照的にナギサと士子はいたって冷静な対応だった。
 ナギサは本当の猫を扱うように遊んでいる。士子は興味深そうに二人がじゃれている様子を観察している。
 そんな二人に対して夏海はなんとなく面白くなかった。

「どうして、二人はそんな冷静なんですか!? いきなり人間が猫になったんですよ!?」
「んん? そうね、私は自分の世界でこんな感じの出来事があったから特に不思議はないかな?」
「私は最初からこの子たちはなにかあると思っていたから特に、ね」
「うう、なんだか私一人驚いて馬鹿みたいじゃないですか」
「ま、夏海もそのうち慣れるわよ。私みたいにね」
「……ナギサちゃん。それ、フォローできませんよ?」
「あれ?」

 上手くフォローしたつもりだったのにとナギサは頬を掻いた。その間もハミィを撫でるのを止めはしなかった。
 そのナギサの行為を面白くない目で見ている人物がいた。エレンだった。
 彼女は咳払いを一つするとナギサに言った。

「ちょっといつまでハミィを撫でてるのよ」
「え?」
「あんまり撫でるとせっかくのハミィの綺麗な毛並みが崩れるから止めて」
「あ、ごめんなさい」
「ほら、ハミィあんたもこっちに来なさい」

 そう言ってハミィを手元に引き寄せた。

「セイレーン、どうしたのニャ? ハミィは別に嫌じゃなかったニャ」
「ハミィは嫌じゃなくても私が嫌なのよ」

 エレンは澄ました顔で言った。その事が嬉しかったのかハミィは小さな頭をエレンの手に押し付けるようにして擦り寄せた。

「ニャプ〜。セイレーン♪」
「はいはい。大人しくしててね」

 そんな本当の猫のように甘えてくるハミィの頭をエレンは軽く撫でた。さらさらとした感覚が手に残る。気持ちのよい肌触りなのだ。それが自分にとって愛しいものであらればなおさら撫でていたくなる。そんな衝動に駆られるがこのままでは話ができないとぐっと我慢して手を離した。

「さて、それじゃ次は私ね。……なにニヤニヤしてんのよ?」
「別に。なんでもないわよ」
「ふん。まあいいわ。私の名前は黒川エレン。ハミィと同じ世界の出身で本当の名前はセイレーンていうの」
「セイレーン? それって、凄く歌が上手な神様か何かと同じ名前ですよね?」
「神様じゃないわよ、夏海。伝説上の生物の名前よ。歌で人々を魅了したっていうね」
「へえ。士子って物知りね」
「私があんたと同じレベルだと思ったの?」

 士子の上から目線にナギサは悔しさを感じた。エレンはやれやれと肩を落とした。


959777:2013/01/09(水) 12:20:49 ID:tNx2.IzI0

「門矢士子、あなたの見込み通り私たちはこの世界の人間じゃない。私たちは音楽の国メイジャーランドから来たの」
「メイジャーランドね。私の世界の光の園みたいなもんね」
「ナギサにしては冴えてるわね。この世界も多重世界。そのマイナーランドもこの世界の一つよ」
「そうね。お互いの世界が影響を及ぼし合うっていうことを考えればその言い方は間違ってないわ」

 士子たちの話をエレンは肯定した。そして、隣りに座っているアコを横目で見た。アコは不機嫌そうにしながらも小さなため息をつくと、好きにすれば、と小さな声で言った。
 それを了承と捉えたエレンは手をアコの方へと向けた。

「そして、この方は私たちの国メイジャーランドの姫なの」
「……ええ!?」

 今度は夏海だけではなく、士子とナギサも驚きの声を上げた。

「アコちゃんが?」
「こんな無愛想な子が!?」
「ありえなーい!?」
「ちょっと後の二人は驚きの意味が違うでしょ!?」

 アコの鋭いツッコミがナギサと士子を指す。

「だって、あんたみたいに無愛想で生意気そうで好戦的なお姫様なんていないわよ」
「なんですって!?」
「士子いくらなんでも言い過ぎでしょ」
「本当の事を言ったまでよ?」
「あなたって、本当に悪魔ね!」
「お、落ち着いてください。姫様」

 腰を上げて今にも飛びかからんとしているアコをエレンはなんとかなだめて席に座らせた。

「これで、お互いの簡単な自己紹介は終わりね」
「まあ、いいわ。それよりも問題はあなたたちね」

 士子はそう言うと三人に質問した。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


960777:2013/01/09(水) 12:21:18 ID:tNx2.IzI0


「どうして私にいきなり襲い掛かってきたの?」

 士子は目の前の三人、正確にはアコに向けて質問した。
 士子の視線を受けて、アコが口を開いた。

「そうね。さっきも言った私はメイジャーランドの姫なの。私の国には有名な預言者がいて、その人が言っていたの。この世界の調和が乱れるときにディケイドっていう世界の全てを破壊する悪魔が現れるってね」
「それはまた悪意がたっぷりの予言ね」

 悪魔という言葉で士子はふと思い出したことがあった。

「ねえ、ナギサ。あんたも私に襲いかかってきたわよね」
「え、そうだっけ?」

 すっとぼけた態度を取るナギサに士子は厳しい視線を送る。

「あんたね、あれだけ私をコテンパンにしておいてよくそんな事言えるわね」
「あ、あはは。冗談だって。私だって悪かったと思ってるんだから」
「ちょ、ちょっといい!?」

 驚いた様子のエレンが口を挟んできた。

「あなたディケイドをコテンパンにしたって言ったけど本当?」
「え、ええ。まあ」

 口ごもりながらナギサは答えた。ナギサはあの頃の自分を思い出したくないのでそれ以上は何も言わなかった。
 エレンはそのことに驚愕した。さきほど四人がかりでも倒すことが出来なかった事実を思い返せば凄いことだった。

「言っておくけど私は負けたとは思ってないからね。たまたま調子が悪かっただけよ」

 士子はそう言ったが、周りの人間からすれば負け惜しみにしか聞こえなかった。

「私も見てましたけど、確かに攻守で圧倒されてましたね」
「夏みかん、余計なこと言わなくていいよ」
「本当のことじゃないですか。あのときのナギサちゃんは鋭い刃物みたいでしたからね。あと夏みかんはやめてください」
「も、もう私の話はいいでしょう!」

 ナギサはこれ以上あのときの事をあれこれ話される前に話題を移した。

「それよりもその預言者って人はもしてかして、茶色のフェルト帽とトレンチコートのおじさんじゃない?」

 そのことにアコは目を丸くした。

「どうしてナルタキのことを知ってるの?」
「やっぱり。私の世界にもいたのよ。その人は私にプリキュアとして戦える力を貸してくれたの」
「ナルタキが?」

 アコは不思議な気持ちでいっぱいだった。別世界から来たはずのナギサが自分たちと同じ世界のはずの人間を知ってる。そんなことがありえるのかと。
 しかし、その疑問は士子に一言で消えた。

「なるほどね。だいたい分かったわ。そのナルタキっていう人はこの世界の人間じゃないわね」
「それってメイジャーランドの住人ってことですか?」
「ちょっと違うわね。そのナルタキは、この次元の世界ではないということよ」

 士子の言葉にナギサとハミィは首を傾げる。アコとエレンははっとした表情を浮かべた。先に口を開いたのはエレンだった。

「ナルタキはあなたたちと同じ別の世界から来た人間だってこと?」
「ナギサと姫の話を聞いて、総合的に考えればそうでしょう。いくら似ている世界とはいっても容姿やあり方まで全部同じなんてありえないわ」
「私の世界で手を貸してくれたおじさんは、このメイジャーランドの預言者さんと同一人物ってこと?」
「そういうことになるわね」
「それじゃ、ハミィたちの世界にいた預言者は偽物ってことかにゃ?」


961777:2013/01/09(水) 12:21:36 ID:tNx2.IzI0

 そのハミィの一言でアコは気付いた。

「……私たち、騙されてってこと?」
「え?」

 エレンはアコの小さな呟くに反応した。

「騙されていたってどういうことですか?」
「そのままの意味よ。どんな目的があったかは知らないけど偽物の預言者、ナルタキにいいように踊らされていたみたいね」
「そんな!? じゃあ、私達がディケイドと戦う意味なんて本当はなかったということですか」
「……そうなるわね」

 少しの沈黙が続いた。自分たちの信じていたものが間違っていた。そんな不安を抱かされるような事態にアコとエレンは慣れていなかった。
 目の前が真っ暗とはいなくても自分たちが仕出かしたことが間違えだと気が付いた今、二人の心に影を落とした。
 特にアコは申し訳ない気持ちでいっぱいだった。間違った情報を鵜呑みにしていたとはいえ自分たちの世界とは関係のない人を本気で攻撃してしまったのだ。どう取り繕えばいいのかアコには分からなかった。

「大丈夫にゃ!!」

 落ち込んでいる二人に対してハミィは底抜けに明るい声で言った。

「間違っても大丈夫にゃ。間違えて謝ればいいにゃ。誰でも間違うことはあるからにゃ」
「……ハミィ」

 アコはハミィの元気な笑顔を見ると元気が出てくるのを感じた。
 ハミィは二人の前に立つと小さな前足を懸命に突き出した。

「相手に許してももらえて、それでも気がすまいならハミィがまた叱ってあげるにゃ」
「もう、ハミィったら」

 その一言でエレンの心も軽くなった。以前にもそんなことがあったなと懐かしくなった。
 アコとエレンはお互いの顔を見合わせると同時に席を立った。
 そして、士子に対して向き直した。

「門矢士子、ごめんなさい。私の勝手な勘違いであなたに襲いかかってしまって」
「私もごめんさい。あなたを傷付けるようなことをしてしまって」

 二人は深々と頭を下げた。
 その行為に士子は驚いた。プライドの高そうな二人が自分に頭を下げてきたのだ。自分だったらここまで素直に行動できただろうか。士子はそんなことを思いながら二人を見つめた。

「いいわよ別に。気にしてないから。それよりも早く顔を上げてよ。むず痒くして仕方ないわ」

 それはいつも以上にぶっきらぼうな物言いだった。その物言いを聞いたナギサと夏海は顔を合わせてにやりと微笑んだ。
 二人はゆっくりと顔を上げた。アコは不安そうな瞳で士子を見た。

「それじゃ……」
「ああ、もう。許すわよ。あんたたちだって騙されてただけなんだから」
「門矢士子」
「……士子」
「え?」
「……士子でいいわよ」
「……うん。ありがとう、士子」

 そういうと士子は笑顔でアコとエレン、ハミィと向き合った。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


962777:2013/01/09(水) 12:21:57 ID:tNx2.IzI0


 夏海はその光景を目の当たりにしてほっとした。これでこの世界でプリキュア同士が戦う心配はなくなったのだ。
 あの夢とは正反対の光景が今自分の前にある。
 これがどうしたらあんな悲惨なことになってしまうのか。夏海は疑問を感じずにはいられなかった。
 それと同時にもう一つの疑問があった。

「それにしてもそのナルタキさんという人はどうしてそんなことをしているんでしょう?」

 その自称予言者のナルタキの行動がよく分からなかった。ナギサにプリキュアとして戦えるように手を貸すかと思えば、アコたちをそそのかして士子と戦わせるようにしたりと行動がいまひとつ読めない。

「さあ、コレばっかりは本人に聞いてみないと分からないわよね」

 士子はさして興味がないのか、軽く流した。だが、夏海は不安を抱かずにはいられなかった。

「さて、もう一つ質問いいかしら?」

 そんな夏海の不安を他所に士子は話を続けた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


963777:2013/01/09(水) 12:22:20 ID:tNx2.IzI0


「あなたたちって、いつからそんに『ズレてる』の?」
「え?」

 それがどういう意味なのかエレンには理解出来なかった。

「どういう事?」
「そのままの意味よ。今日の戦いを見て感じたよ。あなたたちはチームとして上手くいってないってね」

 そのことにエレンは絶句した。たった一度戦っただけで不調を見抜かれてしまうことに。

「……どうしてそんなことが分かるの?」

 エレンは重くなりかけた口をなんとか開く。

「そうね。戦いそのものは単に調子が悪かったのかと考えたわ。けど、決定的なことに気が付いたの」
「それは?」
「必殺技よ。あなた達の最大の長所にして唯一の欠点。その攻撃を受けたときだったわ」
「あれは、あなたの攻撃で私たちの攻撃が大きく減衰されたからじゃないの?」
「まさか。私の苦し紛れの攻撃にあなた達の必殺技が敗れるわけないじゃない。それくらい自分で分かってるはずでしょう?」

 士子の刺すような視線にエレンは胸が苦しくなるのを覚えた。言い訳を口に出したエレンだが、あの攻撃の失敗が士子にでなく、自分たちにあることは気がついていた。
 ただ、それを口にしてしまえば何かが終わってしまってしまう。そんな気配をエレンは感じていたのだ。

「まあ、原因は色々あるでしょう。けど最大の原因はあなたたちじゃないわね」

 士子の言葉にエレンは背筋が冷たくなるを感じた。たった一度必殺技を受けただけで、そこまで分かっていしまうのか。いや、あの攻撃を受けた士子だからこそ原因に気が付いたのかもしれない。

「ヒビキとカナデのこと?」
「そう、あの二人。あなたたちがプリキュアとして上手くいっていない原因の二人によ」
「ーー」

 エレンは何も言わずに俯いてしまった。それは無言の肯定だった。
 そんなエレンを庇うようにアコが言った。

「ヒビキとカナデのせいで私が戦えてないって言ってるの?」
「その通りよ。聡明なお姫様のあなたが気付いていないなんて言わせないわよ?」
「そ、それは……」

 反論しようにアコにはそれが出来なかった。自分たちの不調の原因は分かっていた。しかし、分かっていながらもそこに踏み込めなかったからだ。

「あなたたちの様子を見ている限りだとなかなか根の深い話みたね」
「……」
「……」

 士子の言葉にエレンとアコは押し黙るしか出来なかった。


964777:2013/01/09(水) 12:22:40 ID:tNx2.IzI0

「……話してはくれないのね。ただ、これだけは言わせて」

 士子は一拍おいて言った。

「このままだといずれ負けるわ。それも近い内にね」

 士子の一言でただでさえ静かになっていた室内はいっそう静まりかえった。

「そんなこと言われなくても分かってるわよ」

 アコは絞りだすように言った。

「でも、どうしようもないじゃない。二人の家族のことなんだから」
「どいうこと?」
「……っ」

 アコに問いかけた士子だったが、アコは横を向いてしまった。その際に目元に少しだけ光るものが見えた。

「涙?」

 士子は呟く。それが何を意味しているのかは士子には分からなかった。
 小さく肩を震わせているアコをエレンがそっと抱きしめた。

「姫様、落ち着いてくだいさい。辛いなら私がお話しします」
「……ごめん。お願い」
「はい」

 エレンは小さな肩を震わせているアコを抱きしめながら思った。この小さな体でどれだけの重荷を背負ってきたのか分からない。ただ、これを乗り越えなければ自分たちに未来はないことだけは分かっていた。
 その覚悟を胸にエレンは士子に向き合った。

「全て話すは。今までのこと。そして、これからのこと」
「これからのこと?」

 エレンは小さく頷く。

「そう。あなたが言っていたヒビキとカナデの原因ってやつよ」

 エレンは深く息を吸い込み、吐き出した。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


965777:2013/01/09(水) 12:23:13 ID:tNx2.IzI0





「一週間後、結婚式があるの。この調べの館で。ヒビキのお父さんとカナデのお母さんのね」


966777:2013/01/09(水) 12:23:45 ID:tNx2.IzI0
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 次回予告

 次回のプリキュアディケイドは――

「結婚式ですか。女の子には憧れのイベントですね」
「大音楽祭。メイジャーランドとマイナーランドが友好の証として年に一度交代で主催するお祭りよ」
「あなたたち二人はズレている。いいえ、歪んでいるといってもいいわ」
「私たち、もう終わりね」
「そうね、友情も家族もプリキュアも全部終わりにしましょう」
「私は一人でも戦う。自分の家族を取り戻すために」
「私は。私の心のビートに従うまでよ!」
「ハミィには何もできないにゃ。だから信じるんだにゃ」
「歌おう。みんなで!」

 第3話「スイートプリキュア♪の世界―後編―」

 全てを破壊し、全てを繋げ!


967777:2013/01/09(水) 12:35:28 ID:tNx2.IzI0
以上で前編は終了になります。
……どうしてこうも長くなってしまったんだろう。
ふたりはプリキュアの世界は実質的な登場人物がナギサしかいなかったからなあ。
スイートあたりになると登場人物も多くなってそれぞれに見せ場を作ろうとするとどうしても長くなってしまう。
次もこんな感じになるとは思いますが生暖かい目で見守ってくだされば幸いです。


968777:2013/01/09(水) 12:39:33 ID:tNx2.IzI0
それはそうとこのスレももうすぐ破壊されてしまいますね。
前スレの241氏のようになにか短い話で埋めた方がいいでしょうか?


969お知らせ:2013/02/03(日) 05:46:32 ID:d.D2yu/60
このスレが破壊された後はネガのスレが3スレ目となります、よろしくお願いします
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/1261/1295137442
報告だけでレス消費は忍びないので小ネタを

うえ〜ん(つД`)10周年TVシリーズはこんなの見たかったよぉ〜!!!その1

『スタースコープ』

望遠鏡型のオールスターズプリキュアのオリジナル必殺アイテム。
4人〜6人で、4人の時は2対2、6人の時は3対3で、自分達の胸辺りの高さで宙に浮く
スタースコープの左右に立ち必殺技を放つ(NGワード戦隊のバズーカじゃねーか)

更にオールスターズチップが変化したオールスターズコラボレーションアイテムを
セットし歴代チームの必殺技をオールスターズプリュキア流に変化させた必殺技を発動可能。

オールスター「スタースコープが効かない!?」

クモジャキー「そんな物、幹部3人が合体したデザトリアンには涼風ぜよ!」

追い詰められるオールスターズプリュキア。その時4人のポシェットの中から光が

オールスター「ブロッサムのオールスターズチップが光ってる?」

シャイニングスター「ムーンライトのチップもだわ」

ファンタジースター「サンシャインのも光ってるぅ〜」

バーニングスター「マリンのも」

4人は光るチップを思わず取り出した、そして次の瞬間取り出したチップが4人の
手を離れ4人の頭上へと上昇した、そしてチップがさらに強い輝きを放ちながら変化し始めた

チップはそのプリキュアの武器が変化したオールスターズコラボレーションアイテム
に成りキュアオールスター達の手元へと下降した。
アイテムを手にしたキュアオールスター達は取るべき行動を自然に理解し
順々にスタースコープにアイテムをセットしようとした。

(推奨脳内再生BGN、ゴーカイジャーのマジレン回で大いなる力発動時に流れた曲)

「「「「オールスターズコラボレーション!!」」」」

オールスター「スターブロッサムタクトセット!」

シャインニングスター「スタームーンタクトセット!」

ファンタジースター「スターシャイニータンバリンセット!」

バーニングスター「スターマリンタクトセット!」

「「「「完成!スタースコープ・ハートキャッチモード!」」」」

「「「「集まれ花のパワー!スターフォルテウェーーブ!!」」」」

スターフォルテウェーブがデザトリアンを捕える

「「「「ハートキャッチ!」」」」


数ヶ月後すべてのコラボレーションアイテムを手にして

「「「「「「完成!スタースコープ・カンゼンモード!!」」」」」」

すべてのコラボレーションアイテムをセットしたカンゼンモード

オールスター「・・・・・何この物体・・・気持ち悪い・・・・・・・」
この瞬間、誰が口にしたわけでもなく、チーム内でカンゼンモードの
使用を口にする事を禁ずる暗黙のルールがチーム内に発生した・・・・・



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posted by 保管予定者 at 13:34| Comment(0) | アニメ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

777氏:第3話「スイートプリキュア♪の世界―前編―」01

906ふたりは名無しさん:2013/01/06(日) 09:26:57 ID:kG73Fr/QO
ナレーション:五條真由美

新西暦2013年

プリキュアの記憶を奪われた
プリキュアオールスターズに代わり
みんなのピンチをプリティにキュアするのは
とんでもない少女達だった!


オールスターズ☆プリキュア
2月3日スタート!



ゴーバスターズの新西暦設定は
せめて妄想だけでも10周年で
TVでオールスターズ出来るように
設けられた救済処置やったんやね…違うか…


907777:2013/01/09(水) 11:55:54 ID:tNx2.IzI0
お久しぶりです。777です。
前回の投稿から半年も経っているとは時の流れは早いものですね。
今更ですが、本編を更新したいと思います。
気が付けば、スイートも終わり。スマイルも終わろうとしています。
そして、ついに10週年でドキドキプリキュアが始まりますね。
戦隊シリーズや仮面ライダーのように他の作品とのコラボはあるのか?ないのか?
そこが一番気になります。

前置きはこれくらいにして本編スタートです。


908777:2013/01/09(水) 11:56:31 ID:tNx2.IzI0


 これまでのプリキュアディケイドは――



「ここ『虹の園』は平和だったわ。けど、ある日突然ドツクゾーンって奴らが暴れ始めたの」
「ドツクゾーンの目的は?」
「プリズムストーンを奪って世界を闇に染ることよ」
「たぶん気付いてると思うけど『キュアホワイト』は雪城ホノカよ」
「プリズムストーンには全てを生み出す力があるわ。だから七つのプリズムストーンを集めてホノカを助けるの」
「ピ、ピーサード!?」
「今日はお前に決闘を申し込みにきた」
「ま、まさか! あたなは!?」
「そうだ。貴様の主であり、世界の支配者。ジャアクキングだ!」
「私はあいつに誓ったのだ。決して卑怯な手は使わないと。それをあなたはやってしまった。
私の戦士としての誇りを傷付けた! それだけは許せない!」
「簡単にいくと思うな。ダークファイブが一人。大幹部ピーサード。参る!」
「何のために今日まで頑張ってきたの? ここで立ち上がらないでどうすのよ!」
「士子ちゃんは、ナギサちゃんの強さに憧れていたんだと思います。誰かのために必死になって戦える。
一人でも戦おうとするその強い意思に」
「ねえ、ナギサ。なんで喧嘩してるのに私が庇ったのか分かる?」
「喧嘩してても私たち友達でしょう? だったら友達を助けるのに理由なんていらないじゃない」
「それに私たち、『ふたりはプリキュア』でしょう?」
「ナギサなら絶対できる。私が保証する」
「世界のためなど自分に酔った偽善者の言うことだ!」
「その子は確かに世界のために戦っているわ。
いえ、違うわね。その子は大切な友達がいる、この世界を守るために戦っているのよ!」
「見せてあげるわよ。私たち『ふたりはプリキュア』の力を!」
「ディケイド。私は許さない」
「新しい世界の扉が開いたみたいね」



 世界の破壊者キュアディケイド。九つの世界を巡り、その瞳は何を見る?



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


909777:2013/01/09(水) 11:56:58 ID:tNx2.IzI0

 光写真館のリビングでは新たに降りてきたスクリーンに注目する四人の姿があった。
 その中において真っ先に絵に近づいたのはナギサだった。

「なに、この絵?」

 ナギサは不思議な模様が描かれているスクリーンを見て疑問を持った。いくら写真館とはいってもこのスクリーンは派手すぎる。これだけ派手だと写真の背景としては使うには厳しいのでは。
 そんな疑問を感じていると隣に栄次郎がやって来た。

「ピアノとケーキから伸びてるのは五線譜だね。それが緩やかな螺旋を描いてスクリーンいっぱいに広がってる。
ピアノから伸びてる五線譜は普通の音符だけどケーキから伸びてる五線譜には苺や果物が乗ってるね。
中心にあるのはちょっと形が違うけどト音記号だね。いやいや、これは非常に綺麗な絵だね」

 スクリーンに描かれた絵の感想を述べながら栄次郎はまじまじと見つめ直す。
 その行動と物言いが不思議だったので尋ねてた。

「これって、お爺さんが飾ったものじゃないの?」
「いやいや、私はこんなに派手なスクリーンを使わないよ」
「え?」

 お爺さんのお店なのにお爺さんが知らないスクリーンがあるとはどういうことなのかとナギサは首を傾げる。
 混乱しているナギサをよそに後方では夏海と士がスクリーンのことについて話をしている。

「一体これは何の世界なんでしょうか?」
「これは、スイートプリキュアの世界ね」
「スイートプリキュア……。これで二つ目の世界ですね」

 夏海の疑問に士子が応えると夏海は確認の意味を込めて現状を述べた。
 するとナギサが士子へと詰め寄る。

「ちょっと、私の質問にも答えてよ!」
「そういえば何であんたがいるの?」
「何でって、私はあんたに謝りに来たのよ!」
「あ、いや、そういう意味じゃなくて……」
「ああ! なんでナギサちゃんがここにいるんですか!?」
「夏海まで!? なにこれ、いじめ!?」

 ナギサは悲しんでいいのか、困惑していいのか分からなかった。
 士子だけならいざ知らず、夏海にまで変な態度を取られるのはなかなかにショックが大きかった。
 先の戦いでも挫けなかったナギサの心が挫けそうになったとき、士子が口を開いた。

「ナギサ。ショック受けているところ申し訳ないんだけど今から大事な話をするわ」
「何よ大事な話って」


 ナギサは体育座りで地面にのの字を書いていた。




「あんたは、別の世界に来てしまったわ」
「は? 何言ってるの?」

 士子の言葉の意味が分からず顔を上げる。見上げた顔は真剣そのものだった。
その表情に戸惑いながらも口を開いた。

「……冗談、よね?」
「残念だけど。ここは、あんたがいた世界とは別の世界よ」
「またまた。私これから家に帰るのよ」
「じゃあ、外に出てみればいいわ。そうすれば嫌でも分かるから」

 そう言うと士子はリビングから出て行った。急いでその後を追うとシックな玄関の前には士子が立っていた。
 士子は目配せをしてきた。自分で開けて確認してみろ、とその瞳が言ったいた。
 ゆっくりと扉に近づく。扉を開けた先に待っているのは自分のよく知った風景のはずだ。
士子は私を脅かすために手の込んだイタズラを仕込んでいるに違いない。
 そうやって必死に言い訳を考えているが、胸騒ぎは扉に近づくにつれて激しくなっていく。
 とうとう扉の前に到達した。隣では士子が腕を組みながらこちらを見つめていた。
 ナギサは自分に言い聞かせた。これから家に帰ってゆっくり寝て、明日からまたホノカのお見舞いに行くのだと。
 祈るようにドアノブに手を掛けた。
 そして、一気に扉を開いた。




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910777:2013/01/09(水) 11:57:18 ID:tNx2.IzI0



 結果として扉の先にナギサの知ってる風景は一つとしてなかった。
 ナギサはなかなか現実を受け入れることができず、長い時間写真館の近くを歩きまわった。
 士子と夏海にはナギサが帰ってくるのをただ黙って待つしかできなかった。
 数時間にも及ぶ徘徊の末に光写真館の来客を告げるベルが鳴った。二人が出迎えると玄関には意気消沈したナギサが立っていた。
 そんなナギサを夏海が介抱しながら部屋へと送る。
 士子はその様子を見ながら可哀想だと思う反面、羨ましく思った。
 士子には過去の記憶がない。夏海と会う以前の記憶は全くと言っていいほどだ。唯一思い出せるのは自分の名前くらいだった。
 だからこそ思い入れのある土地を突然離れることになり、落ち込んでいるナギサを羨ましく思った。

「難しい顔してるね。紅茶でも飲むかい?」

 いつの間にか士子の隣に来ていた栄次郎は優しい笑みで話かけた。
 表情には出していないつもりだったが、栄次郎は気付いている様子だ。
 年の功というやつか。とぼけているようで鋭い人だ。

「そうね。一杯頂こうかしら」

 士子は平静を装いながら紅茶を注文した。
 内心では栄次郎の指摘に少しだけ気恥ずかしさを感じていた。だが、それと同時に嬉しくもあった。
 赤の他人である自分を受け入れてくれた栄次郎。それに夏海。この二人にはいくら感謝しても足りないくらいだ。そのことを言葉に出す気などさらさらない。
 ナギサが気持ちの整理を付けるにはしばらくかかるだろう。あの子の気持ちに整理が付いたとき、二人のように受け入れてみよう。

「ふっ。似合わないこと考えてるわね」
「何か言ったかい?」
「なんでもないわよ」

 士子はそんなことを呟きながらリビングへと向かった。




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911777:2013/01/09(水) 11:57:39 ID:tNx2.IzI0


 翌日。士子は夏海と栄次郎の三人で少し早めの朝食をとっていた。
 きれいに焼き上がった玉子焼きを口にしながら昨晩の出来事を振り返った。
 栄次郎の紅茶を飲んで自室に戻るとクローゼットの中に真新しい制服があったのだ。
 夏海と栄次郎と話し合ったところ、どうやらこの世界の役割だということが推測できた。
 更に前の世界と同じように胸ポケットに生徒手帳が用意されていたことで、推測が確信へと変わったのだ。
 学校への転校手続きを済ませるため早めの朝食をとることにしたのだ。

「ごちそうさま。夏海、また腕を上げたね」
「そんな、私なんてまだまだだよ」

 食べ終わった栄次郎が夏海に賞賛を贈る。夏海は嬉しそうにしながらも謙虚な態度をとった。

「確かにまだまだね。でも、それを自覚しているだけでも大したものよ」

 嬉しそうにしていた夏海の表情が強張った。

「むっ。文句があるなら食べなくてもいいんでよ。それに士子ちゃんの方が料理上手なんですからたまには教えてくれてもいいんじゃないですか?」

 夏海の言葉は事実だった。
 名前以外の記憶を失ってしまった士子だが、どうやら体が覚えている動きに関しては問題ないようだった。
 写真館に来た当初から夏海は料理をしていたが、まだまだ未熟で栄次郎が教わりながら調理していた。
 そんな夏海を見かねて料理をすることになったのだが、これが二人の予想を遙かに超える腕前だったようだ。
 プロ級とまではいかなくともそれに近いレベルであることは素人の二人でも十分に理解できた。
 その腕前に憧れた夏海は料理を教えてくれと頼んできたのだ。
 しかし、士子は料理のやり方を『感覚』として覚えているだけだった。それは、設計図を見ずに家を建てるようなもので、過程はどうあれ美味しい料理を作ったという『結果』だけを導き出すようなものだ。
 そのため、士子は夏海に料理を教えることができなかった。
 そのことを素直に言葉にすればよかったのだが――。

「面倒くさいわ」

 前回と同じ台詞で一蹴した。

「ほら、やっぱり」

 士子の素っ気ない言葉に夏海はむくれるが、そんな夏海を無視し食後の紅茶に口を付けた。

「士子ちゃん、そろそろ時間じゃないのかい?」

 栄次郎はリビングの壁掛け時計を気にしながら言った。見れば時計の長針は真下を指していた。

「そうね。それじゃ行ってくるわ」

 席を立つとソファーの上に置いてある真新しい学校の鞄を手にした。
 そこで、ふと動きを止めた。

「どうしたんですか?」

 その挙動に夏海が気付く。士子は一瞬だけ考えると夏海の方を向き直した。

「そういえば、あの子まだ寝てるわよね」
「え? ああ、ナギサちゃんですか。ええ、しばらくは起きてこないんじゃないですか?」
「そう。もしあの子が起きてきたら、夏海よろしくね」
「分かりました」
「それじゃ、行ってくるわ」

 それだけ言うとリビングを後にした。



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912777:2013/01/09(水) 11:58:05 ID:tNx2.IzI0


「ここが、私立アリア学園ね」

 私立アリア学園は昔ながらの木造校舎であった。その校舎に向かって大勢の生徒たちが登校している。
 そして、校舎からは小鳥の綺麗なさえずりの他に様々な楽器の音が聞こえてきた。

「ここでも音楽が聞こえるわね。この世界の人々は本当に音楽が好きなのね」

 学校に来る途中でも実に様々な音楽が聴こえてきた。
 夜明けを知らせる鶏の代理を任された豪快なラッパの音。朝露を払う清々しいまでのピアノの音。朝日のように優しく包み込むフルートの音色。
 ありとあらゆる場所から音楽が聞こえてくる。
 路上であろうと家の中であろうと関係はなかった。
 街全体が、大きな合奏団のようだった。

「音楽の街、加音町か。なるほど、その謳い文句は間違ってないみたいね」

 そう言うと士子は校舎の中へと足を踏み入れていった。



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913777:2013/01/09(水) 11:58:27 ID:tNx2.IzI0



 朝も早くから職員室は先生たちで賑わっていた。一限目の授業の準備を進める若い先生やのんびりとお茶を飲みながら談笑するベテランの先生など様々だった。
 そんな中、転入の手続きを済ませた士子は、これから担任となる先生に学校の簡単な説明を受けていた。

「これで説明は以上です。何か質問はあるかい?」
「いえ、特になにわ」
「そう。改めまして、担任の北条団です。これからよろしく。門矢士子さん」
「ええ、短い間になると思うけどよろしく頼むね」

 互いに握手を交わす。団の手を柔和な見かけに反して、しっかりとした手をしていた。

「先生は何かスポーツでもやってるんですか?」
「僕かい? 僕はこう見えても音楽家でね。主には指揮者をやっている」
「なるほど」

 その言葉を聞いて納得した。指揮者とはいえ音楽家。ならばピアノなども演奏するはずである。ピアノに限らず、楽器を演奏するというのは意外と握力を必要とする。 
 団からはしっかりとした手応えを感じた。おそらく優秀な音楽家なのだろう。

「君は何か音楽をするのかい?」
「ふっ。愚問ね。演奏できない楽器はないわ」
「おお、凄い自信だね」

 普通の人が聞けば怪訝な顔をされるような士子の言葉も団は素直に感心していた。
 この人もどこかズレてる。芸術家なんてそんなものか。そんな感想を抱いていると団が言葉を続けた。

「ところで、HRまでまだ時間はあるけど、どうする?」
「適当に構内をうろついているわ。時間になったらまた戻ってくるから」
「そうかい。では、また後で」

 団に別れを告げると職員室を後にした。

「とは言ったもののあてもなく散策するのは骨ね」

 そう言いながら足を進めるとどこからか音が聞こえてきた。

「これは。……ピアノ?」

 その音に誘われるように自然と足が向いた。



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914777:2013/01/09(水) 11:58:45 ID:tNx2.IzI0



 音楽の街、加音町。その名の通り、音楽が盛んなこの街では老若男女を問わずたくさんの音楽家たちがいる。
 この私立アリア学園も音楽に力を入れている学校の一つである。先生の中にはプロの音楽家として活躍する者もいる。そんな先生たちから音楽を学ぼうと毎年たくさんの生徒たちが訪れる。そのため自然と生徒たちのレベルも非常に高くなり、中には将来を有望視されている者までいる。
 そんな学園の音楽室から聞こえてくる音楽ともなれば、みんなが耳を傾けたくなる音楽が聞こえてくるはずだ。
 音楽室には四人の女生徒がいる。二人はピアノで演奏している。あとの二人は伴奏者に合わせて歌っている。
 演奏者と奏者。そして、窓の外から漏れてくる音楽を聞く観客。
 音楽家と観客。この二つが揃えば、どこであろうとそこはコンサート会場となる。

「あっ」

 しかし、コンサートは唐突に終わりを告げた。
 演奏者の一人である北条ヒビキの場違いな声と的はずれな低音が響いた。
 ヒビキは気まずそうに隣の少女、カナデを見て言った。

「ごめん。間違えちゃった」
「もう、ヒビキったら。また同じパートよ」

 隣に座っているカナデを見ると困ったような顔で間違いをたしなめてきた。
 カナデの忠告に頬をかく。

「あんた、また同じところ間違えてんじゃない。何度間違えれば気が済むのよ」

 そこに檄が飛んできた。
 ヒビキはその声に思わず肩をすくめてしまう。恐る恐る後ろを振り返る。
 そこには、モデルと言われれば思わず頷いてしまうほどスラリとした体躯のエレンが厳しく見つめていた。
 ヒビキの誤魔化すように曖昧な態度をとっていたのが気に入らなかったエレンはヒビキを厳しく追求してきた。

「ヒビキ、集中してるの!?」
「うぅ。だって、ここ苦手なんだもん」
「言い訳しない! そこは高音を意識する場所だって何度も言ってるじゃない。それを外すなんて、集中できてない証拠よ。それにーー」
「ひぃ!? もう、やめて!!」

 エレンは長い黒髪を逆なでながらヒビキに注意する。
 普段はスイーツ部の部員として活動しているヒビキなだけに慣れないピアノには苦戦していた。
 しかし、指導者を頼まれたエレンはそんなヒビキにも手は抜かなかった。

「仕方ないにゃ。このパートはまだ練習し始めたばかりにゃ」

 ヒビキを叱っていたエレンをなだめたのは、観客としてエレンの隣に座っていた少女だった。
 少女は目尻の下がった柔和な顔立ちをしており、白く美しい髪も印象的で、ふわふわとした長髪が彼女と柔らかい雰囲気と実に合っている。
 笑顔を浮かべながら少女は優しい声で言った。

「焦っても仕方ないにゃ。ゆっくりでも全然問題ないにゃ」
「ハミィ、あんた。……まあ、いいわ」

 脳天気ともいえる物言いに肩の力が抜けたのか、エレンは小さなため息をつくとゆっくりとハミィの隣にある自分の椅子に座る。
 白と黒の対照的な少女が並んで座る。
 指導役を頼まれた二人はヒビキとカナデの練習に付き合っていた。とは言うものの具体的な指示を出すのはエレンばかりで、ハミィは嬉しそうに二人の練習を眺めているだけだった。
 実質一人で助言をしているエレンは腕と足を組み椅子に深く腰掛けた。

「そうは言っても、もうあんまり時間もないんだから集中しなさいよ。あとハミィ、語尾が猫の時と一緒になってるわよ」
「え? そうかにゃ?」
「あんたも何度言えば分かるのよ!」

 フシャーッ、と噛み付かんばかりのツッコミを入れる。ハミィはなぜそんなに怒っているのか分からず笑顔で小首を傾げるとふんわりとカールの掛かった髪が揺れる。

「大体、ハミィは昔からそうじゃない」
「はにゃ?」

 突っかかるエレンに天然で返すハミィ。二人はいつもこの調子でじゃれ合いを始める。


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915777:2013/01/09(水) 11:59:04 ID:tNx2.IzI0


 ヒビキにしてみればまたいつもの光景が始まったと縁側でお茶をすするおじいさんのような気持ちで二人のやり取りを眺める。
 ふと隣を見れば、カナデも同じように優しい目で二人を見つめていた。それと一緒にカナデの綺麗な髪が目に留まった。
 二人を見つめて無防備に座っているカナデは、ヒビキにしてみれば襲って下さいと言わんばかりの様子だ。

「カナデ〜。エレンが怖いよ〜」

 ハミィとエレンのやり取りを他所にヒビキは隣に座っていたカナデに抱きついた。

「ちょっと、ヒビキ!?」
「う〜ん。今日もカナデはいい香りがするなぁ」

 ヒビキはカナデの綺麗にブラッシングされた髪に鼻を近づける。
 シャンプーの清潔感あふれる香りがした。
 カナデの髪は癖が少ないストレートな髪をしている。その髪を綺麗に整え後方で一房に纏めている。いわゆるポニーテールと呼ばれる髪型だ。
 その髪からシャンプーの清潔感あふれる香りとは別の甘い香りがする。
 カナデの母親が経営しているお菓子店「ラッキースプーン」の匂いだ。
 「ラッキースプーン」は、町でも人気の洋菓子店で、カナデはそこの一人娘である。カナデ自身は運動部の助っ人が忙しくときどき手伝うくらいだ。

「や、やめてよ。ヒビキ」
「や〜だ〜」

 嫌がるカナデの言葉を無視してヒビキは頬ずりを続ける。カナデの感触を確かめるように髪を触ったり腰を触ったりする。
 その触り方が少しだけ。いや、かなりオヤジっぽい触り方である。
 とは言うものの、カナデも本気で嫌がっているわけではない。むしろ、楽しんでいる風にも見てとれる。

「まーた、始まったにゃ」
「……そうね」

 いつの間にか口喧嘩を終えたハミィとエレンは、ヒビキとカナデのいつもの光景をうんざりしながら見ていた。
 ハミィとセイレーンがカナデとヒビキの二人と知り合ってから数ヶ月しか経っていない。それでも隙があればこのようにじゃれ合いを始めるためさすがに慣れてしまっていた。
 そんな日常茶飯事と化し光景を今日もハミィとセイレーンは生暖かい目で見つめる。
 二人の視線など気にもせず、ヒビキはカナデに頬ずりを続けている。そんなヒビキをカナデの髪を優しく撫でた。
 するとヒビキは気持ち良さそうに目を細める。そのヒビキの挙動が嬉しくてカナデは更にヒビキの頭を撫で続けた。

「カナデ〜♪ 大好き♪」
「もうヒビキったら。でも、そんなとこも好きよ♪」

 お互いにそう言うとにっこりと笑顔を交わした。
 幸せな時間が流れていた。
 だが、

「グハッ!?」

 血を吐くような声が音楽室に響いた。
 四人はすぐにそちらを向いた。すると音楽室の入り口でしゃがみ込んでいる少女の姿が目に入ってきた。



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916777:2013/01/09(水) 12:00:04 ID:tNx2.IzI0



「なに、この甘ったるい空間は!?」

 気になる音を頼りに音楽室まで来てみれば、イチャイチャしているカップルがいた。しかも二組も。
 本来であればツッコミの役目は夏海である。しかし、現状で彼女がいないためこの状況にツッコミをいれることができるのは自分しかいない。
 士子がそんなことを思っていると黒髪の少女が近付いてきた。

「そこで何してるの?」

 エレンは厳しい目付きで士子に問いかけた。
 黒く艶やかな長髪。猫のように釣り上がった目。モデルと言われれば頷いてしまうほど長い手足。
 中学生にしては出来すぎなくらいの美しさだ。
 
「別に。気になる音が聞こえてきたからどんな子が弾いているのかと思って立ち寄っただけよ。だけど、まさかバカップルがイチャついてるとは思わなかったわ」
「……」

 何か言いたげな表情のエレンだったが、あまりに的を射た発言だったため頭を抱えるしかなかった。

「ちょっとバカップルってどういうこと?」
「わ、私たちイチャついてなんかないわよ!?」

 ピアノの前に座っている二人の少女、ヒビキとカナデから抗議の声が聞こえてきた。
 士子は困っているエレンを尻目にピアノの方に目を向ける。
 二人はそれぞれ異なる表情を見せていた。
 カナデは頬を赤らめているが、ヒビキは本気で理由が分からないといった様子だった。
 だからこそ士子は言った。

「そのまんまの意味よ。あんなの見せつけられたら百人が百人ともバカップルだって答えるくらいよ」
「え? あれくらい普通でしょ?」

 ヒビキの言葉に士子は全身の鳥肌が立つのを感じた。
 士子は驚愕を胸にこう言った。

「いやいや、あんたアレでイチャついてないなんて言うなら全世界のピュアどもが発狂するわよ」
「そうかな? カナデはどう思う?」
「そこで私に振るの!?」

 相方のいきなりの振りに驚いたカナデはしどろもどろに答えた。

「わ、私もあれくらい普通だと思ってるけど。し、親友なんだし。そ、それにヒビキにああやってされるのは嫌いじゃないし……」

 自分で言っていて恥ずかしくなったのか末尾の声は弱々しく消えいった。
 ヒビキはカナデと目を合わせると士子にドヤ顔を向けてきた。

「いや、そこでドヤ顔されても……」
「まあ、待つにゃ」


917777:2013/01/09(水) 12:00:23 ID:tNx2.IzI0

 椅子に座っていた白髪の少女、ハミィはいつの間にかエレンと士子の間に入り込んできた。
 ハミィはエレンとは真逆の印象を受けた。色素の薄い白い髪にゆったりとした仕草。いかにも柔らかそうな、女の子らしい女の子だった。
 そんなハミィがゆっくりと口を開いた。

「ヒビキとカナデはイチャイチャじゃないにゃ」
「じゃあ、なんて言うのよ?」

 ジト目で問いかけるとハミィは自信満々に言った。

「二人は仲良くしてただけにゃ!」
「いや、ハミィ。世間一般ではそれをイチャイチャしてるって言うんじゃなにの?」
「はにゃ? そうなのにゃ?」
「そうなのよ! ちょっとハミィは退いてて!」

 エレンは士子との間にいるハミィを強引に自分の隣へと移動させる。その最中にハミィは何か考えているのか、眉をハの字に寄せていた。
 不思議に思ったエレンはハミィに問う。

「ハミィどうしたの?」
「ヒビキとカナデが仲良くしていることがイチャイチャしてるってことになるなら、ハミィとセイレーンもイチャイチャしてることになるかにゃ?」
「なっ!?」

 ハミィの言葉にエレンの顔がみるみると赤くなった。

「そ、そんなわけないじゃない!」
「ハミィとセイレーンは親友にゃ。親友同士が仲良くしていることがイチャイチャしてることになるならハミィとセイレーンもイチャイチャしてることになるにゃ。それともセイレーンはハミィのこと親友だと思ってないにゃ?」

 ハミィは心配そうにエレンの顔を覗き込んだ。お互いの顔がぶつかるのではないかと思うほど近づく。気付けばエレンの顔は真っ赤になっていた。

「そ、そんなわけないでしょ! 私はハミィこと親友だと思っているわ−−!?」
「よかったにゃ〜」

 エレンの言葉を遮るようにハミィは抱きついた。

「!」

 突然抱きつかれたことで、エレンの思考は停止してしまった。止まってしまった思考を動かしたのはハミィの体温と石鹸の香りだった。
 ハミィに抱きつかれた。そのことに気が付くと先ほど赤くなっていた顔が更に深みのある色へと染まっていった。

「ハ、ハ、ハ、ハ、ハミィ!?」
「ニャプニャプ〜」

 エレンは極度に恥ずかしがっているが、ハミィは気付きもせず頬を寄せている。
 元々が猫であるためこういう行為に抵抗はないのか。それとも人間の姿では以外にも抵抗があるようだ。

「今日もいつも通りだね」
「そうね」

 ヒビキとカナデは、仲良くしている二人を生温かい目で見つめた。
 先ほどとは立場が逆転している。

「いつまでイチャイチャしてんのよ!!」

 さすがにこの事態に業を煮やした士子が叫んだ。



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918777:2013/01/09(水) 12:00:43 ID:tNx2.IzI0



 その一言に我に帰った四人は、それぞれ佇まいを正した。ハミィだけは訳が分かっていない様子で、無理矢理エレンに引き剥がされていた。

「まったく、付き合っていられないわ」

 そう言うと士子は四人に背を向けた。歩き出そうとしたとき士子の頭に一つだけ気になることを思い出した。

「そうそう、一つ言い忘れてたわ」

 士子は振り返るとピアノの椅子に並んで座っているヒビキとカナデに目を向け、口を開いた。

「あなた達、『ズレてるわよ』」

 それだけ言い残すと士子は足早に去って行った。



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919777:2013/01/09(水) 12:01:02 ID:tNx2.IzI0



「ねえ、ヒビキ。あの子が言っていた『ズレてる』って、どういうことだと思う?」
「そんなの私に聞かれても分かるわけないじゃん」
「ハミィもよく分かんないにゃ!」
「威張って言うことじゃないわよ!」

 自分たちの教室に戻った四人は、音楽室から去る前に残した言葉の意味について話していた。

「たぶん、私たちのピアノの事だと思うの。私たちまだ上手に合わせられない箇所があるから」
「そういえば、最初の方でピアノの音が気になったー、とか言ってたね」
「でも、ハミィが聴いてる限りだと明らかに噛み合ってない場所はなかったにゃ」
「ハミィの言う通りね。私が聴いていても露骨な場所はなかったわ。まあ、ヒビキのミスは除くけど」
「それを言う必要はないんじゃない!?」

 士子が去り際に残した意味深な台詞に対して暫し問答を続けた。
 しかし、いくら話しても推測の域を出ないため、そろそろ話も終わりかけたときだった。

「あっ」

 ハミィは、思い出したような声を上げた。
 その声に反応したエレンが言う。

「どうしたのよハミィ? 変な声出して」

 ヒビキとカナデもハミィの顔を見る。
 ハミィはゆっくりと口を開いた。

「……そういえば、あの子は誰にゃ?」

 その一言に全員がはっとする。

「そういえば……」
「確かに見たことないわね」
「私も見たことないな〜」

 ハミィとエレンが聖アリア学園に入学してきたのはつい最近のことだ。全校生徒を把握していないのも無理はない。
 それとは別に入学してから既に一年が経過しているヒビキとカナデが知らないということはありえないことだった。

「あんなに目立つ子だったらとっくに知ってるはずだよね?」
「そうね。この学校も大きい方だけどさすがに私たちが知らないはずなにものね」

 ヒビキとカナデはどこかで見たことがないかと頭を捻っている。みんなで顔を寄せ合って考え始めた。
 そんな時だった。
 教室のドアが開いた。入ってきたのは癖っ毛の強い髪の持ち主であるこのクラスの担任である北条団だ。

「あ、パパ」
「もう、ヒビキ。学校では先生って呼ばないと駄目でしょう」
「ごめん」

 思わず口から漏れてしまったヒビキの言葉をカナデがたしなめる。

「よし、朝のHRを始めるよ。みんな席に着いて」

 団の言葉にクラスのあちこちに散っていた生徒たちは自分の席に着席する。ヒビキたちも同じように自分の席に向かう。
 みんなの着席を確認してから団は口を開いた。

「HRを始める前にみんなにお知らせがあります。なんと今日からこのクラスに新しい仲間が増えます」

 その言葉を聞くとクラス中が騒然となった。
 団は落ち着くように生徒たちを促したが、それでは収まりがつかなった。
 生徒たちが驚くのも無理はなかった。それは単に転校生がやってくると言った好奇心からの言葉ではなかった。

「また、転校生!?」
「ついこの前、黒川さんと白山さんが来たばかりでしょう?」
「ちょっと立て続けじゃない?」
「それに前の二人は新学期の始まりだったけど今回はまたえらく中途半端な時期ね」

 クラスメイトたちがあれこれ話をしている。
 ヒビキも他のクラスメイトと同じように隣のカナデに話かけた。

「ねえ、カナデ。転校生ってもしかして、さっきの子じゃない?」
「まさか。いくらなんでもそれはないんじゃない?」
「そうかな」

 ヒビキは脳天気な顔をしているが、カナデはどうしてもあの鋭い視線が頭から離れなかった。

「それじゃ、そろそろいいかな。門矢さん入ってきて」

 団がそう言うと教室の扉が開く。そこに立っていたのは聖アリア学園の制服に身を包んでいた士子だった。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


920777:2013/01/09(水) 12:01:23 ID:tNx2.IzI0



 士子がさっと教壇に登ると団が説明を始めた。

「彼女がこれから学校生活をともにする門矢士子さんだ。門矢さん、簡単な自己紹介を頼むよ」

 士子は団の言葉に頷くと口を開く。

「先生からも紹介があったように転校生の門矢士子よ。転校が多いのでここにも長くはいないと思うから。以上よ」

 不遜な態度で自己紹介を済ませた士子は教室を見渡す。大抵の生徒たちが士子の自己紹介に唖然としているなか、見知った顔が四つほどあるのに気が付く。

「って、やっぱりそういうオチ!?」
「ヒビキ、落ち着いて。ゆっくりと自分の席についてね。あと人に指を向けたら駄目よ」

 その一人であるヒビキは自分の席から立ち上がり盛大なツッコミを入れてきた。隣の席でカナデが、突然大声を上げたヒビキを鎮めようとしている。

「あら、あんた達もこのクラスだったのね」
「おや? 知り合いなのかい?」
「ええ。まあ、ちょっとだけね」

 団が質問してきたが、これだけの人の前でまともに答える気にもならなかったで適当に流した。
 自分の疑問には答える気はないと判断した団は教室の片隅を指差した。

「その話はおいおい聞くとして、あそこに空いている席が君の席だ」

 それだけ聞くと士子は自分の席へと向かった。すると自分の席の隣にも見知った顔が二つあった。
 一つは厳しい目つきでこちらを見つめ。もう一つは優しい目つきで見つめていた。
 その厳しい目つきをしてるエレンに対して、士子は面白くないものを感じた。

「そんなに睨まなくてもいいじゃない。それとも私の美しさに嫉妬でもしてるの?」
「馬鹿じゃないの?」
「そう? ならよかった」

 たったそれだけの掛け合いだったが、周囲の生徒たちは身を固くした。たった一瞬の出来事だが、それだけで周囲はこの二人が分かり合うのは難しいと感じ取った。
 そんな空気など知るよしもない少女がいた。

「にゃんと〜。転校生だったのかにゃ。道理でハミィが知らないはずにゃ」

 隣で睨みを効かせているエレンとは対照的に非常に友好的な態度を見せるハミィだった。

「あら、あんたまで。ついさっき会ったばかりの人間にすぐに再会するなんて」
「にゃぷにゃぷ。ハミィもびっくりにゃ。これからよろしくにゃ」
「ちょ、ちょっと!?」

 そう言うとハミィは士子の手を握りぶんぶんと振りました。
 あまりこういう事に慣れていない士子はどう対応していいのか分からずにハミィのされるがままになった。

「やっぱり白山さんは可愛いわね」
「こういう別け隔てないところがいいわよね」

 ハミィの屈託の無い行動に周囲の生徒が癒されていた。さきほどまで妙な緊張に包まれていた室内の空気は柔らかいものとなっていた。
 しかし、一人だけあからさまに機嫌が悪くなっている者がいた。

「二人ともいつまでやってんのよ!」
「わっ」
「にゃぷ?」

 いつまでも握手をしているハミィと士子の間にエレンが割って入ってきた。エレンは二人の手を解くとハミィを席に着かせた。
 そして、士子をきつく睨みつけると自分もさっさと席へ戻った。
 やれやれといったジャスチャーをして士子も自分の席に座る。
 士子が席に着いたのを見届けると団はHRを始めた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


921777:2013/01/09(水) 12:01:42 ID:tNx2.IzI0



 暗い部屋で一人の少女がベットに倒れこんでいた。カーテンを閉めきってはいるが、すき間から少しだけ光が漏れていた。光は倒れこんでいる少女の顔を照らしていた。

「眩しい」

 ナギサは素直な感想を呟いた。
 あれからどのくらいの時間が経ったのかは分からない。だけど外から漏れる光で判断する限り少なくても午前中でないと判断できる。半日は寝ていたことになる。
 体の疲れはすっかり無くなっている。それでも体を動かす気にはなれなかった。
 ナギサは精神的なショックからまだ立ち直れていなかった。それもそのはずだ。士子の助力を受けながらやっとの思いで自分の世界を救いだすことができ、親友であるホノカを助けることにも成功した。これからやっと自分たちが望んでいた普通の生活が送れると思っていた矢先の出来事だ。

「ホノカ……」

 親友の名前を呟いてみる。もちろんそれで何かが変わるわけでもなく言葉は暗闇へと吸い込まれていった。
 ナギサが辛い現実から目を背けるために目をつぶったときだった。
 遠慮がちに扉を叩く音が聞こえた。音のした方に目を向けると今度は声が聞こえてきた。

「ナギサちゃん、起きてますか?」
「……夏海?」
「ああ、よかった。起きてたんですね。はい、私です。光夏海です」

 ナギサは記憶に新しい友人の顔を扉の向こうに見た。

「気分はどうですか?」
「……ぶっちゃけ、最悪」
「そう、ですよね。ナギサちゃんにしてみればやっとの思いでホノカさんを助けることができたのにこんなわけの分からない事態に巻き込まれたんですから」

 ナギサの答えに夏海の声が沈んでいった。その事にナギサは焦った。

「あ、いや。別に夏海のせいじゃないから気にしないで!? それにこれは事故みたいなものだし、それにーーー」
「ふふっ」
「夏海?」
「あ、ごめんなさい。少しだけ元気なナギサちゃんに戻ったと思って、つい」
「え?」

 夏海からの一言に自分の心が少しだけ軽くなるのをナギサは自覚した。

「そうね。夏海と話をして気持ちが落ち着いたわ」
「それならよかったです」
「えへへ」
「ふふふ」

 扉越しの会話だが、ナギサと夏海は互いの笑顔を容易に想像することができた。
 安心を得たナギサが、少しだけ気持ちを緩めた時だった。

『ぐぅ〜』

 妙に間の抜けた音が響いた。

「……」
「……」

 しばしの沈黙が続いた。先に口を開いたのは夏海だった。

「……ナギサちゃん、お腹空いてるんですか?」
「……うん。笑って安心したらお腹空いてきちゃった」
「じゃあ、すぐに準備するんで待ってて下さい。部屋に運びますんで」
「待って」

 足早に去ろうとした夏海をナギサが呼び止める。

「何ですか?」
「私がそっちに行く」

 ナギサはそう言うとベットから身を下ろした。冷たい木造の床に足を着けると頭が少しだけすっきりした。
 この扉を開ければ、その向こうには辛い現実が待っている。知らない世界。知らない環境。その他多くの不安が待っている。それでも扉を開けて進まないといけない。自分の世界に閉じこもってばかりでは何も変えられない。その事を先の戦いで士子に教えられた。
 ナギサは取っ手に手を掛けると深く息を吸った。
 大丈夫だ。扉の向こうには友達が待っている。大切なのは一歩踏み出す勇気。それから−−

「友達を信じる心、よね」

 ゆっくりと扉を開いた。少しずつ光が差し込んできた。それと一緒に優しい笑みを浮かべた友達が見えてきた。

「おはよう。夏海」
「もうお昼ですよ」
「そうなの? 遅めの朝食をもらおうと思ってたのに」
「それは昼食っていうんですよ?」

 軽いやり取りに微笑み合う。それだけで十分だというように二人はリビングの方へと向かった。



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922777:2013/01/09(水) 12:02:58 ID:tNx2.IzI0



 雲の少ない青空の下、体育服装に身を包んだ士子はグラウンドを見回しながらこの世界のプリキュアの事を考えていた。
 この世界のプリキュアはどんな娘なのか。前のナギサの世界でプリキュアは少なくても二人以上いるということが分かった。プリキュアは自分たちの命を懸けて戦う者たちだ。必然的に二人もしくは二人以上の仲間たちの仲は非常に良くなるはず。もちろん、そのケースに該当しない可能性もあるが、そのときはその時だと思った。
 ふと辺りを見回すと気に入らない光景が目に写った。

「いたたた! ヒビキ痛いって」
「そう? そんなに強く押してないんだけど」

 北条ヒビキと南野カナデの二人が準備運動を行なっていた。ヒビキはカナデの背中を押して入念にストレッチを行なっている。
 士子から見てもカナデの体はかなり固いように見える。指先がつま先に届くかどうかの瀬戸際でさまよっている。

「ほらもう少しで届きそうだから頑張って」
「もう無理だよ〜」
「カナデならできるって」
「ヒビキ……、あっ!」

 ヒビキはカナデの耳元に口を寄せると優しく息を噴きかけた。思いもことにカナデの体から無駄な力が抜けた。
 その瞬間、ヒビキはカナデの背中を強く押した。ヒビキの力に流されるままにカナデの指先はつま先へと到達した。

「ほら、ちゃんと届いたじゃん」
「〜〜」

 嬉しそうにするヒビキとは対照的にカナデは苦悶の表情を浮かべていた。

「カナデ、大丈夫?」

 何も言わないカナデが心配になったのかヒビキはカナデの顔を覗き込んだ。
 カナデは涙目になりがらヒビキの胸をポカポカと叩きながら攻め立てる。

「もう痛いじゃない!」
「ええ!? ほんのちょっと強くしただけなんだよ?」
「だよ? じゃないわよ! もうすごく痛かったんだから!」
「ごめんごめん。次からは気をつけるから」

 その言葉にカナデは手を止めた。

「もう、しょうがないわね。次はもっと優しくしてよ」
「分かった。次からはもっとカナデの力が抜けそうな所を攻めるから」
「そうじゃないでしょ!」
「アハハ」

 カナデは文句を言うもヒビキには届いていないようだった。
 結局、先生の集合がかかるまで二人のじゃれあいは続いた。

「この世界のプリキュアが、あんなバカップルではないことを願うわ」

 準備運動が終わり体育の授業は淡々と進んでいった。



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923777:2013/01/09(水) 12:03:19 ID:tNx2.IzI0



 放課後を告げる鐘が鳴った。生徒たちは教室を出て自分たちの思い思いの場所へと向かう。士子もその一人だ。
 日中ではこの世界のプリキュアに関する情報は得られなかった。クラスメイトたちにそれとなく聞いてみても誰も知らないとのことだった。

「この世界のプリキュアもナギサたちの世界と同じで、プリキュアの存在は知れ渡っていないみたいね」

 少なくても人々の印象に残るような戦いをしていないようだ。

「さて、もう少し調べてから帰るかしら」
「なら私たちが案内してあげるわ」

 背もたれに寄りかかり大きく伸びをするしているとエレンが声をかけてきた。

「盗み聞きなんて関心しないわよ」
「それを言うならあなただって、私達の朝練を盗み見してたでしょ?」
「違うわよ。たまたま目に入っただけよ」

 士子の屁理屈にむっとするエレン。そんな様子を気にすることなく士子は続けた。

「そんなことより、あんたから誘ってくるなんてどういうこと?」
「私は、あんたに声をかけるつもりはなかったんだけど」
「ハミィが士子を案内したかったのにゃ!」

 エレンの隣にいたハミィは元気に話かけてきた。

「どうして?」
「なんだか士子はこの世界の人間じゃーー」
「ちょっとハミィ!」

 エレンはハミィの口を押さえると教室の後ろに連れて行くと小声で話始めた。

「だめじゃない。余計なこと言っちゃ」
「ごめんにゃ。ついうっかりしてたにゃ」
「もう、ハミィが言い出したんでしょ。私たちと同じ気配がするって」
「そうにゃ。士子からはハミィたちと似たような気配がするにゃ」
「それって、この世界の人間じゃないってことよね?」
「たぶんそうにゃ」

 エレンとハミィは一度だけ士子の顔を見る。確かに士子はその辺の中学生に比べても態度や纏っている空気が明らかに違う。神秘的というよりも捉え所のない印象を持つ。
 だからこそエレンはハミィの言うことに納得した。

「そうね。ハミィがそういうなら間違いないんでしょうね」
「信じてくれるにゃ?」
「私がハミィのこと疑うわけないでしょ?」
「セイレーン!」
「ちょっとハミィ!?」

 エレンの言葉に感動したハミィは思わず抱きついてしまった。この不意打ちに反応できなかったエレンは思わず体を逸らしてしまった。そこにハミィが抱きついてきためバランスを崩すこととなった。
 尻もちをついたエレンとそれに覆いかぶさるようになったハミィ。他人が見ればハミィが白昼堂々とエレンを押し倒したように見える。
 もちろん、それは士子も同じだった。
 自分に話かけてきたと思ったら教室の後ろで発情したように押し倒したのだ。

「ねえ、私帰っていいから!?」

 士子はさすがに声を張って言った。
 朝の一件にしろ、授業中にしろ、もうお腹一杯だった。

「ちょ、ちょっと待って!」
「セイレ〜ン」
「あんたも呆けてなにで、さっさと立ちなさい!」

 立ち上がり服を整えると二人は士子の前に立った。

「もう満足した?」
「う、うるさい! それよりも案内だけどどうする?」

 どうせ一人でまわるつもりだったのだ。案内役がいれば不都合はないだろう。ただ、この二人が途中で盛り上がったときは速攻で帰らせてもらう。
 士子はそう心に決めると鞄を手に席を立った。

「分かったわ。じゃあ、案内よろしくね」
「任せるにゃ。それじゃ、出発にゃ!」

 ハミィは士子とエレンの手を握ると元気良く教室を飛び出した。

「ちょっ、ちょっと!?」
「ハミィ!?」

 強引に連れ去られた士子とエレンの声が教室に木霊として残った。



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924777:2013/01/09(水) 12:03:37 ID:tNx2.IzI0



 体育館や講堂。屋上に中庭など様々な場所を案内された士子は少しばかり疲れていた。一度落ち着くために三人は中庭のベンチにて休憩することになった。

「ちょっと休憩するにゃ」
「そ、そうね」

 終始士子とエレンの二人を引っ張りまわしていたハミィは元気そのものだった。エレンはこういったことに慣れているのか平然とした様子だ。

「そういえば、あの二人は部活に入っているのね」
「あの二人?」
「あんたたちの友達の二人よ」
「ああ、ヒビキとカナデのことね」
「そう、その子たち。でも不思議ね」
「なにがにゃ?」
「私のなかでは、ヒビキは運動部。カナデは文化部ってイメージだったんだけど逆だったみたいね」

 士子は案内の途中で見かけた部活動に勤しむ二人の姿を思い出した。ヒビキはスイーツ部で一生懸命にカップケーキを作っていた。カナデはテニス部の助っ人として活躍していた。
 だが、その二人の姿に違和を感じ取っていた。言葉では上手く表現できない何かを。

「……」
「……」

 士子が何気なく言った一言に二人は急に押し黙ってしまった。

「うん? どうしたの?」
「それはーー」
「ハミィ!」

 口を開こうとしたハミィだが、エレンの声で口を閉ざした。奇妙な沈黙が流れた。
 何か事情がある。だが、他人である自分が士子が簡単に口出しできる問題ではない。そう思った。

「別に無理に説明する必要なんてないわよ。私はただの転校生なんだから」

 それだけ言うとベンチから腰を上げた。

「ところでこれで案内は終わり?」
「まだ、音楽室が残っているわ」
「音楽室って、朝の?」
「ええ。もうそろそろ練習が始まるころよ」

 そう言うとエレンは音楽室に目を向けた。
 一体なんの練習が始まるのか。そう思っていた士子の耳に美しい音色が聞こえてきた。
 それは、今朝聞いたピアノの音色だけではなかった。
 バイオリン。ヴィオラ。コントラバス。ファゴット。フルート。オーボエ。クラリネット。ファゴット。ホルン。トランペット。ティンパニー。
 この街に来て一番色彩豊かな音に出くわした。

「これって、オーケストラ?」
「そうよ。これが、この学校が誇る楽団、王子隊よ」



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925777:2013/01/09(水) 12:04:16 ID:tNx2.IzI0



 中庭から音楽室に移動した士子たちは、学生たちの演奏にただただ聞き惚れていた。音は強く、時に激しく、そして、優しかった。
 音楽室からは泉のように音があふれ出している。その泉の中心にいる人物はこの世界で一番言葉を交わした人物だ。

「すごいわね。北条先生」

 思わずそう口にしてしまった。皮肉ではなく感嘆。音楽家としての技量に対しての率直な感想だった。

「あなた解るの?」

 士子の言葉を聞いたエレンは意外そうに尋ねてきた。

「いくら音楽を嗜んでいない私でも先生がどれだけ凄いかくらいは理解できるわよ」
「へえ」


 エレンは興味がないような返事だったが、口元が緩んでいた。
エレンは、内心では感心していた。団の凄さをわずかな演奏を聞いただけで理解できたのだ。音楽に対する理解が深くなければできないことだ。

「士子、それは凄いことにゃ。普通は先生よりも演奏している生徒たちに目がいくものにゃ」
「そうなの?」
「そうにゃ。よっぽど目の付け所が良い人じゃないと気が付かないものにゃ」

 先程まで沈んだ様子だったハミィは、この素晴らしい演奏を聞いてからか元気を取り戻したようだ。

「それにしても生徒たちも凄いレベルね。朝のあんたたちとは大違い」

 比較するのもどうかと思ったが、さっきのやり取りが気になった士子はカマを掛けるつもりで言った。

「……くっ」
「にゃぷ……」

 案の定、二人は困ったような顔になった。原因は分かっているが今ひとつ踏み出せない。そんな歯がゆさの現れに感じた。

「その様子を見てる限りじゃ、あの演奏の原因はあんたたちじゃなくて、あっちにあるみたいね」
「……どうしてそうだと言い切れるの?」
「言ったでしょ。『ズレてる』って」
「……」

 エレンの無言はすなわち肯定を意味していた。
 正直なところ士子は朝の演奏と今のオーケストラにそこまで違いがあるとは思っていない。その違いが何なのか。納得できる答えを今の士子は持ちあわせていなかった。
 ただ、美しい演奏の中でわずかなノイズが聞こえた気がしたのだ。一つ一つの演奏は完璧に聞こえたのに全体を見通してみると何か釈然としない曲になってしまった。
 その原因がこの二人ではなく、演奏者の二人にあるとそう感じたのだ。

「あんたって一体ーー」
「それじゃ、今日はここまで」
「ありがとうございました」


926777:2013/01/09(水) 12:04:34 ID:tNx2.IzI0

 エレンが口を開きかけたとき終わりを告げる声が聞こえた。
 そして、音楽室の扉が開くと続々と生徒たちが中から出てきた。生徒たちは自分たちの楽器を大事そうに抱えている。そんな生徒たちを見送ると室内には人数しか残っていなかった。その内の一人がこちらに気付くと笑顔で近づいてきた。

「やあ、門矢さん。見学かい?」
「ええ。この二人に案内してもらっていたの」
「そうかい。黒川さんと白山さんは本当に仲が良いね」
「そんなことないですよ」
「そうにゃ! ハミィとセイレーンは仲良しにゃ!」
「ハミィいきなり耳元で大きな声出さないで!」
「ごめんにゃ」
「ははは。元気で良いね」

 団はハミィとエレンのやり取りに笑った。そうこうしていると一人の男子生徒が近寄ってきた。

「先生、誰と話してるんですか?」
「ああ、王子くん。黒川さんと白山さんだよ。それから転入生の門矢さんだ」

 団の隣にやってきたのは日本人離れした顔立ちの少年だ。綺麗な鼻立ちに彫りの深い目。彫刻を思わせるような容姿だ。

「こんにちは、黒川さんに白山さん」
「こんにちは王子先輩」
「にんにちはにゃ!」

 エレンとハミィは顔見知りなのか朗らかに挨拶をする。二人への挨拶を済ませると士子に向き直った。

「それから始めまして、王子です」
「門矢士子よ。初対面でなんだけど一つ質問いいかしら?」
「え? いいけど。何かな?」

 こほん、と一つ咳払いをすると士子は口を開いた。

「それって、本名なの?」

 その瞬間、隣にいるエレンから素早いツッコミが入ってきた。

「あんた、なに失礼なこと言ってるのよ!?」
「だって気になるじゃない。王子って、あだ名かと思うじゃない」
「あ、ハミィも最初はそう思ってたにゃ」
「ハミィまで」

 エレンは小さなため息をついた。

「はは。王子というのは名字なんだ。名前はマサムネって言うんだ。確かによく言われるよ。でも、両親からもらった大切な名前だからなにも恥ずかしいことはないよ」

 王子はそう雄弁に語った。

「そう。なんだか、茶化すようなこと言ってごめんなさい」
「ううん。気にしてないよ」

 軽い冗談のつもりで聞いた士子だったが、王子の自信に満ちた語り口に圧倒されてしまった。
なんとなくだが、この男はモテると思った士子だった。

「ところで、今日はもう演奏は終わりなの?」
「そうだね。隊としての練習は終わったよ。僕はもう少し残って練習しようと思っていたところだよ」
「そう。頑張るのね」
「もし良かったら聞いていくかい? なんだったら何か興味のある楽器を演奏してみてもいいよ」
「いや、私は」
「そういえば、門矢さんは何でも演奏できるんだったね。ぜひとも何か聞いてみたいね」

 王子の誘いを断ろうとした矢先に団が畳み掛けてきた。
 士子は初めて挨拶したときにいつもの調子で答えていたを思い出した。

「へえ、そうなんだ。ぜひ君の演奏を聞いてみたいね」

 子供のような目をしてくる王子と期待の眼差しを向けてくる団。そんな二人を無下にするのも気が引けてしまった。

「仕方ないわね」

そう言うと士子は音楽室へと足を踏み入れた。



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927777:2013/01/09(水) 12:05:15 ID:tNx2.IzI0



 みんなで音楽室に入ると士子は頭に浮かんだ楽器を注文した。

「バイオリンでいいの?」
「ええ。それが一番良いみたい」
「?」

 楽器棚に楽器を取りに行ったエレンは士子の言葉に首をかしげながらも棚からヴァイオリンを手に戻ってきた。
 エレンからヴァイオリンを受け取る。弦の張り具合を確認し、軽く弾いてみた。

『〜〜〜』

 小気味良い音が音楽室に響いた。
 その音色に満足すると士子は団の方を向いて言った。

「先生ピアノの伴奏をお願いしてもいいですか?」
「構わないよ。何を弾けばいいのかな?」
「ちょっと曲名は忘れてしまったので、少し弾きますんでそれに合わせてください」

 そう言うとヴァイオリンを肩に乗せ顎で固定した。弦にゆっくりと弓を乗せる。
 そして、一気に弓を引いた。

『〜〜〜〜』

 その瞬間、音が弾けた。たった一音。わずかそれだけでこの場にいる全員が飲み込まれた。

「え?」
「にゃぷ〜」
「おお」
「ほほう」

 エレンは戸惑いを。ハミィは喜びを。王子は感動を。団は感嘆を。四者の様子はどれもことなるが、士子が奏でている音に惹きつけられているのは間違いなかった。
 出始めの数小節を弾き終わると士子は手を止めて、団に聞いた。

「この曲なんですけど分かりますか?」
「サラサーテの『ツィゴイネルワイゼン』だね」
「そうなのかにゃ?」
「あれ、白山さんは知らないの? かなり有名な曲なんだけど」
「ハミィたちはこっちに来たばかりだからこの世界の曲はあんまり詳しくないにゃ」
「この世界の曲?」
「ああ! 言い間違いですよ王子先輩! ねっ、そうでしょうハミィ!」
「そ、そうにゃ! ただの言い間違いにゃ」
「?」

 ハミィがまたしも地雷を踏んでいたがエレンがすかさずカバーに入ったことで王子もさほど気にしてないようだ。
 そんなやり取りを横目に団に言った。

「それじゃ、あ願いします」
「任せたまえ」


928777:2013/01/09(水) 12:05:36 ID:tNx2.IzI0

 再び士子はヴァイオリンを構えると演奏を始めた。
 士子のヴァイオリンから流れる音は、繊細で流麗だった。静けさのなかに激しい情熱が見え隠れする。大胆でありがらもどこか感傷めいた、寂しさを感じられずにはいられなかった。
 団の伴奏も士子の演奏に負けず劣らずのものだ。今にも儚く消えて行きそうなヴァイオリンの音を下からしっかりと支える厚い音。ヴァイオリンの主張を決して上回ることもなく、かと言ってヴァイオリンの音色に決してかき消されることもない。
 素人が聞いたらこれが即興で奏でているとは思わないだろう。それほどまでに二人の演奏は完成されていた。
 観客となった三人は時間を忘れ、ただ聞き惚れていた。
 数刻後。二人の演奏が止む。三人はその静けさの中で、時計の針はしっかりと動いていたことに気が付く。
 誰からともなく拍手が起こった。
 士子は優雅に一礼すると団の方を向いた。

「どう?」
「素晴らしい演奏だったよ」

 団はその一言しか発しなかった。だが、それで十分だった。それの答えは演奏で示していたのだから。

「士子は凄いにゃ。ハミィびっくりしちゃったにゃ」
「本当に凄かったです。まさかここまでの演奏とは思いませんでした」
「……認めざるをえないわね。感動したわ」

 ハミィ、王子、エレンの三人はそれぞれに賛辞をくれた。

「ふっ。私にかかればこれくらいは当たり前よ」

 素直にお礼の一つでも言えばよかったのだが、またいつもの調子で返してしまった。
 それにいち早く反応したがエレンだった。

「せっかく見直しのに。やっぱり気に入らないわ」
「まあまあ、落ち着くにゃ。士子はきっと照れてるだけにゃ」
「そうですね。これだけ素晴らしい演奏を披露してくれたんです。心も美しくなければこれほどの演奏はできませんよ」
「別に照れてなんかいないわよ」

 口ではそう言ったが、みんなの素直な言葉に顔が熱くなるのを感じ取った。とっさにそっぽを向くが、ハミィがそれを見逃さなかった。

「士子、顔が赤いにゃ」
「え?」

 ハミィが頬に手を当てていたためつられて頬に手を当ててしまった。
 しまった、と思ったときには遅かった。
 エレンが意地の悪い目をしながら言った。

「ふ〜ん。やっぱり照れてたのね。案外かわいいところあるじゃない」
「くっ」
「別に恥ずかしがることじゃないよ。君は心もそうだけど見た目も綺麗なんだから」
「そんなこと言ってるあんたの方が恥ずかしいわよ」
「そうかい? 僕は素直にそう思ったから口にしているだけだよ」
「……」

 爽やかな笑顔で切り返してくる王子にさすがの士子も言葉が出て来なかった。気を紛らわすために顔を背けた。

「ふむ」

 そんな和やかな様子を団は遠巻きに見ていた。



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929777:2013/01/09(水) 12:05:55 ID:tNx2.IzI0



「もういいいわ。帰る」

 これ以上ここにいてもネタにさるだけだ。そう判断した士子は自分の鞄を掴むと外に飛び出して行った。

「あ、士子待つにゃ」
「ハミィ、自分の鞄忘れてるわよ!」

 音楽室から出ていった士子を負ってハミィも出ていく。それに釣られるようにエレンもハミィの鞄を手に団と王子に一礼すると後を負った。

「凄い子でしたね。まさかあれほどの腕前とは。先生はどう思いました?」
「……」

 残された王子は団に話かける。
 しかし、団からの返事はなかった。不信に思った王子が団を見る。そこにはあまり見たことのない何か思い詰めたような団の表情があった。

「先生、大丈夫ですか?」

 心配になった王子はたまらず声を掛けた。

「ん? どうしたんだい王子君?」

 するといつもの飄々とした態度に戻っていた。

「いえ、なんでもありません」

 王子はその様子を見て、やはりさきほどの表情は見間違えだったのでは思った。

「それよりももう少しだけ僕の練習に付き合ってくれませんか?」
「ああ、いいとも」

 そう言うと王子はピアノの方へと移動した。
 団は後ろを振り返り窓の外を見た。その視線の先には走り去っていく士子の姿があった。




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930777:2013/01/09(水) 12:06:13 ID:tNx2.IzI0



 夕暮れが街を赤く染め始めていく。光写真館の窓からも夕日が差し込んできた。ゆっくりとした午後を過ごした夏海は夕食の準備に取りかからなければと思い席を立つ。厨房の冷蔵庫を開けるとそこにはいくらかの食材しから残っていなかった。
 今日はナギサの快気祝いというか、励ますために景気よく豪華な食事にしようとしていた夏海にとって大きな誤算だった。

「おじいちゃん。そろそろ食材が少なくなってきたから買い出しに行きたいんですけど」
「ん? そうか?」

 切り絵をしていた栄次郎に話しかけると手を止め、厨房の奥へと消えていった。
 しばらくするとガマ口の大きな財布を持って現れた。

「それじゃ、買い出しお願いするね」
「はい、任せて下さい」

 財布を受けると自前の買い物袋を片手に厨房を出た。

「あれ? 夏海どこ行くの?」

 厨房の隣の部屋、エントランス兼撮影所兼広間でくつろいでいたナギサが夏海に気付いた。

「食材が少なくなってきたので買い出しに行こうと思って」
「買い出し!? 私も行きたい!」

 ナギサは買い出しという言葉を聞くと目を輝かせながら立ち上がった。

「え? でも」

 夏海はお昼の様子を思い出した。元の状態に戻ったとはいえ安定しているとは言いがたいナギサを外に連れていって大丈夫なのか。
 そう思った夏海は言いよどんだ。
 そのことを読み取ったのかナギサはことさら元気に言った。

「大丈夫。大丈夫。私、気分が悪いときなんかは外の空気を吸った方が元気になるの」
「そうですか? そこまで言うなら分かりました。おじいちゃん、ナギサちゃんも一緒に出かけてきます」
「うん。二人とも気をつけて行ってらっしゃい」
「それじゃ、行ってきます」
「行ってきます!」

 夏海は財布と買い物袋を手に。ナギサはお菓子を買ってもらおうという甘い考えを胸に買い物へと出かけた。




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931777:2013/01/09(水) 12:06:32 ID:tNx2.IzI0


「あんた運動もできるのね」
「士子は足が早くて追いつくのが大変だったにゃ」
「私に追いついたあんたたちも十分早いわよ」

 音楽室を飛び出した士子だが、校門を出てすぐのところでハミィとエレンに追いつかれた。それなりの速度は出していたつもりだったが、二人は息も切らさずに追いついた。
 エレンはなんとなく運動が得意な印象を受けたがハミィも運動できるのは意外だった。その理由もなんとなくだが気付いる。
 それを確かめるため士子は周囲に誰もいないのを確認すると口を開いた。

「ところで、不躾な質問だけどあなた達はこれが何か知ってるわよね?」

 士子は鞄の中から小さな物を掴みとった。虫のように小さくそれでいてゴムに近いような不思議な感触だ。

「なんだか音符みたいなの。あなた達これが何か知ってる?」

 そう言って振り向くとエレンは驚きを、ハミィは喜びの表情を浮かべていた。

「どうしたの?」
「なんであんたが見えるの!? というか、どうして持ってるの!?」

 激しく動揺したエレンは士子に詰め寄る。

「演奏が終わってあなたたちと話をしてるときに見つけたの。私の鞄に付いていたわ」
「もしかして、突然出ていったのは」
「ええ、これについて話がしたかったからよ」
「でも、私たちが追いかけてくるとは限らないでしょ?」
「いいえ、あなたたちは必ず追いかけてくるわ。だって、私のこと監視するつもりだったんでしょう?」
「あれ? 気付いてたにゃ?」
「まあ、最初は強引に連れ回されてただけかと思ったけど後半からあれだけヒントを出されたら、ね」

 士子はハミィを見つめた。やはり、ハミィは自分がヒントを出しまくっていたのに気付いていないようだった。相方であるエレンの気苦労がうかがえる。

「はあ、やっぱりハミィに無駄にしゃべらせるんじゃなかった」

 エレンはぐったりと肩を落とした。

「やっぱり、ハミィが感じた通りだったにゃ」
「あんたがそう感じたってことは二人とも私と同じで、この世界の人間じゃないのね?」
「……」
「だんまりね」

 士子の質問にエレンは口を真横に結んだ。口には出していないが、沈黙が十分に肯定の意味を持っていた。

「その通りにゃ。ハミィとセイレーンはこの世界の人間じゃないにゃ」
「ちょっとハミィ!」

 エレンは迷っていた。ここで、事情も知らない士子にこの世界で起こっていることや自分たちのことを教えてもいいのか。
 特に今は微妙な時期だ。不安要素を持ち込むようなことをしても大丈夫なのか。
 そう考え込んでいるエレンにハミィは声をかけた。

「セイレーン。音符が見えるってことは士子には何か特別な力があると思うにゃ。だから、話ても大丈夫にゃ」
「でも……」
「それにもしかしらハミィたちの力になってくれるかも知れないにゃ」
「……」

 ハミィの言葉を聞いてエレンは黙った。そして、ハミィの目をじっと見つめた。

「……」
「……」

 しばらくの間沈黙が続いた。そして、エレンがその重い口を開こうとしたそのときだった。
 どこからともなく声が聞こえた。

「ちょーと待った!!」
「今度はなに!?」
「上にゃ!」

 見上げると空から三つの影を降りてきた。影たちは士子たちの周りを囲むように着地すると顔を上げた。



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932777:2013/01/09(水) 12:07:06 ID:tNx2.IzI0


「バスドラ、バリトン、ファルセット!?」
「トリオザマイナーにゃ!」

 エレンとハミィが叫ぶ。
 士子たちを囲んでいる内の一人、バスドラと呼ばれた大柄な男が一歩踏み出した。

「ふう、セイレーン。貴様はいつまでそんなところにいるつもりなんだ?」
「あんたには関係ないでしょう」
「そんなこと言うな昔のよしみだ。帰ってくるなら今までのことは水に流そう」
「誰が。私はずっとここにいるわ」

 エレンはバスドラを強く睨みつける。
 しかし、そんなエレンの視線など無視して三人は突然歌うように言った。

「悲しいぞ〜♭」
「悲しいぞ〜♯」
「悲しいよ〜♪」
「な、なに。こいつら?」

 文字通り歌うように言葉を発した三人を見て、士子は困惑した。
 綺麗にハモりながら悲しみを強調しいるため、ふざけているのか本気なのかいまいち判断し辛い。

「さて、その音符を渡してもらいましょうか?」

 ハモリに満足したのかバスドラとは対照的に細身で長身のバリトンが手を差し伸べてきた。
 しかし、そんなバリトンの申し出もエレンはばっさりと切り捨てた。

「そんなことするはずないでしょ?」
「そうですか。あまり手荒なことはしたくないのですが、仕方ありません」
「お前たちを倒してから音符を手に入れるとするか」

 バリトンとバスドラの言葉から今までとは違った雰囲気が漂ってきた。
 仕掛けてくる。そう感じた士子は身構えた。
 そして、三人のなかで一番小柄なファルセットが声を上げた。

「いでよ。ネガトーン!」

 士子はその声を聞いて、鳥肌が立つのを感じた。ねっとりとした悪意。冷たい悲しみ。さっきまで音楽室で聞いていた心が暖かくなるような音とは真逆だ。聞いている者に深い悲しみや絶望を与えることが出来る。
 そんな悲しみに満ちた音があるのを士子は知らなかった。

「あっ、音符が!」

 士子が手に持っていた音符の色が変化した。鮮やかなピンクだった音符は、どす黒い赤へと変色した。
 音符は士子の手を離れると近くにあった外灯に飛んでいった。
 音符が外灯に触れると外灯は奇妙な形に変化した。外灯を覆うおうに背後から骨が現れ、外灯本体も巨大化した。

「なるほど、これがこの世界の敵ね」

 士子は冷静にそう言うと外灯の化け物は大きく音を鳴らした。

「ネーガトーン!」

 外灯の化物は奇声を発しながら先ほどファルセットが発した悲しみの音色を放った。すると近くを通りかかった人々はその場に崩れた。

「う、う。悲しい。もう生きていくのも辛い」
「どうして。涙が止まらないわ」
「なぜだ。こんなに胸が締め付けられるのは」

 人々は悲しみの表情を浮かべながら泣き叫んだ。

「うう、嫌な音にゃ」
「確かに聞いていて心地良い音ではないわね」

 士子はハミィと同じように耳を押さえるが、悲しい音は体中を伝って心に響いてくる。敵の攻撃に怯んでいるとエレンが前に出た。

「止めて! 世界を悲しみで包まないで!」
「ふん。お前がそれを言えるのか?」
「それは……」
「お前は俺たちの仲間だったんだ。お前も同じように人間を悲しみのどん底に突き落としていただろう?」
「仲間? それってどういうこと?」

 バスドラの言葉に士子が反応する。隣のハミィは心配そうにエレンの背中を見つめていた。
 そんなエレンは心細さに肩を小さく震わせていた。過去の悪行を突き付けられ、心が縛られて足がすくむのを感じていた。
 自分の心の中ではとうに決着の付いていることだと思っていた。だが、心のどこかでそのことを引きずっているのをエレンは自覚した。
 断ち切れない過去の出来事が次々とエレンの脳裏をよぎる。

「さあ、俺たちの元に戻れ。お前は俺たち側の存在なんだよ」

 苦悩するエレンにバスドラは優しく語りかける。徐々にバスドラが近付いてくるが、エレンはその場を動こうとはしなかった。


933777:2013/01/09(水) 12:07:25 ID:tNx2.IzI0

「ちょっとまずいんじゃない? あの子、この空気に飲まれてわよ」

 士子は心配になってハミィに問いかける。
 しかし、ハミィは。

「大丈夫にゃ。セイレーンは大丈夫にゃ」

 ただ、そう繰り返すばかりだった。
 士子はその言葉を信じながらもポッシェに手を伸ばす。何かあればすぐに飛び出せるように身構えた。

「さあ、セイレーン」
「わ、わたしは……」

 あと一歩のところまでバスドラはエレンに近づいてきた。
 もうこれ以上は待てない。
 そう思った士子がポシェットを握りしめたときだった。

「待ちなさい!」
「エレンから離れないさい!」

 二人の女の子の声が聞こえた。

「ちっ。来たか」
「バスドラ〜。来ましたよ〜♯」
「来たよ〜♪」

 バリトンとファルセットの声にバスドラは振り向く。そこには二人の少女の姿があった。

「ヒビキに」
「カナデにゃ!」

 制服姿に身を包んだ北条ヒビキと南野カナデの姿があった。
 その姿にエレンは安堵し、ハミィは喜んだ。

「またこんなに街の人たちを悲しい目に合わせて」
「女の子の過去を蒸し返すなんて」

 二人はバスドラたちに対して怒りを感じていた。
 ヒビキは街の人々を悲みに包んだことを。カナデはエレンの過去について責めたことを。
 そんな二人の気持ちが自然とこの言葉を生み出した。

『絶対に許せない!』

 二人の声がハモった。そして、二人の手にはハート型のオカリナを突き出した。

「まさか、あの二人が!?」

 士子が驚いているのをよそに二人は同時に叫んだ。

『レッツプレイ。プリキュアモジュレーション!』

 二人は光に包まれた。



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934777:2013/01/09(水) 12:07:52 ID:tNx2.IzI0



 二人の姿が光に包まれる。光が弾けると少女たちの姿はどこにもなかった。そこには戦士たちが立っていた。

「爪弾くは荒ぶる調べ。キュアメロディ」
「爪弾くはたおやかな調べ。キュアリズム」

『届け、二人の組曲。スイートプリキュア!』

 戦士たちはそれぞれ名乗りを上げると凛々しく構えた。

「また悲しい音楽で人々を悲しい目に合わせるなんて、許せない」
「ふん。だったらどうする?」
「こうするまでよ!」

 そう言うとキュアメロディーは颯爽とバスドラの元まで駆け寄った。そして、スピードの乗った拳をバスドラへと叩きこむ。

「メロディ、危ない!」

 キュアリズムからの声に反応したメロディは即座にバックステップした。
 その直後。

「ネガトーン!」

 直前までメロディが立っていた位置にネガトーンの打撃が打ち込まれた。

「ふう。ありがとうリズム」
「もう、メロディはいつも先行しすぎなんだから気を付けて」

 リズムの注意にえへへ、と頬をかくメロディ。
 二人は気を引き締め直すと一斉にネガトーンへと向かった。

「やれ、ネガトーン!」
「ネガトーン!」

 二人の戦士は怪物との戦闘を開始した。
 


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935777:2013/01/09(水) 12:08:10 ID:tNx2.IzI0


「ナギサちゃんの好きな食べ物ってなに?」
「う〜ん。色々あるけど一番好きなのは、チョコレートとたこ焼きかな」
「ふふふ。ナギサちゃん、一番好きな物が二つもありますよ?」
「う〜ん。でもどっちかなんて選べないよ」
「ナギサちゃんらしいですね」

 光写真館よりほど近いスーパーへと買い物にきた夏海とナギサ。二人は談笑しながら今晩の食材を探していた。
 夏海は商品を手に取り一つ一つ品定めしていく。

「それにしても売っている物やお店は世界が違ってもあまり変わりないんですね」

 同じようにお菓子のコーナーに置いてあるチョコレートに手に取るナギサ。

「本当だ。私が好きなチョコレートのメーカーも同じだ」

 そう言いながら手にしたチョコレートをそっと夏海の持っているかごに入れようとするナギサ。
 その手を夏海が叩いた。

「無駄遣いは駄目ですよ」
「うう〜。ちょっとぐらいいいじゃない夏海」
「駄目です。ただでさえ穀潰しの居候が一人いるんですから」
「……士子も酷い言われようね」

 和気藹々で買い物を続ける二人。
 その途中でナギサは不思議な感覚を覚えた。

「?」
「どうしたんですか?」

 辺りをきょろきょろし始めたナギサに夏海は問いかける。

「なんだかよく分からないけど嫌な感じがするの」
「それってもしかして」
「たぶん、この世界の敵が暴れているんだと思う」

 ナギサは一番気配の強い方を見据えた。
 そんなナギサに夏海は優しく声をかける。

「ナギサちゃんは行かないんですか?」
「え?」

 ナギサはその一言に戸惑った。
 変身もできない自分が出て行っても何の役にも立たない。むしろ足手まといになることだってある。
 数々の戦場を一人で戦い抜いてきたナギサはそれを十分に理解していた。

「じゃあ、ナギサちゃんの変わりに私が行ってきます」
「危険よ夏海。この世界の敵は私の世界の敵、ドツクゾーンよりも凶悪かもしれないのよ!?」
「だったら危なくなったらナギサちゃんが私を守ってください」
「は?」
「私は勝手に行きます。ナギサちゃんは私を守るため仕方なくついてくる。どうですか?」

 夏海の気遣いにナギサはようやく気付くことができた。
 ホノカにもこんな風に気遣われたことがあった。こちらが思い悩んでいるときにそっと手を差し伸べてくれた。
 その優しさを今度は夏海から受け取った。自分なんかよりもよっぽどプリキュアに向いている。
 ナギサは恥ずかしくなり頭をかく。
 そして、前を向くと夏海の手を取り走りだした。

「行こう、夏海」
「はい!」

 二人はスーパーを後にすると戦場へと走りだした。



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936777:2013/01/09(水) 12:09:53 ID:tNx2.IzI0


 学校の帰り道、アコはいつもの坂道を下っていると水平線に夕日が沈んでいくのを目にした。
辺りを見回すと夕焼けが海に面した街を綺麗に照らしている。大きい家に小さい家。それぞれが黄色く色付くのを見るといつかのひまわり畑を思い出した。
 家族みんなで出かけたあの日。突き抜けるような青空とどこまでも広がるひまわりたち。父の肩に担がれひまわりの間を駆け回る。その様子を優しく見守る母。
 そんな温かい日常があった。ほんの少し前までは当たり前に存在していたはずの時間。その時間はいつの間にか消えてしまっていた。
 それでも過去は消えない。だからこそ、過去を取り戻すために今ここにいる。
 坂道を下りながらそんな事を考えていた。

「なんで、夕日って大きく見えるんだろうな?」

 隣では一緒に下校しているソウタが馬鹿みたいな顔でそんな事を言っている。
 どうしてこんなに綺麗な夕日を見てもそんなことしか言えないのかと内心で苦言する。

「はぁ」
「……なんで、返事がため息なんだよ?」
「別に深い意味はないわ」
「なんだよ。気になるな」

 ソウタは納得していない表情だったが、特に言及してくることもなく前を向いて歩き始めた。

「ところでさ、最近ねえちゃんたちとよく一緒にいるよな。いつの間に仲良くなったんだ?」
「そう? 私は前と変わらないと思うけど」
「結構変わったぞ。前と比べると笑顔が増えたし。やっぱり笑顔の方がいいもんな」
「な!?」

 アコはソウタの真剣な表情に驚いた。自分では感情を表に出さないようにしているつもりだったが、どうやらソウタには気付かれていたようだ。

「一年前に比べると全然違うぞ。最近は特に笑うようになったし。アコの笑顔は可愛いもんな」
「そ、そう?」

 アコは努めて冷静な表情を作った。声が少しだけ上ずっていたがソウタは気付いていないようだった。このときばかりは今が夕方でよかったと真剣に思った。
 いつもは馬鹿なことしか言ってこないソウタだが、時折こちらを驚かすようなことを言ってくる。
 そんなときアコはいつもと変わらない表情を作る。いや、いつも以上に冷静な顔を作る。
 突然のソウタの告白に自分の動悸が早くなるのを感じた。
 こんなことが一年前にもあったとアコは思い出す。寂しかった自分に手を差し伸べてくれた。拒絶と絶望しかなかった自分に希望と家族を与えてくれた。
 ソウタ自身にそんな自覚はない。
 だが、とアコは思う。

「……私に笑顔が増えたと思うなら、それもこれもあんたのおかげよ」

 誰に聞こえるでもなくそう言った。
 そのときだった。

「!?」
「どうしたアコ?」

 アコは唐突に明後日の方向を見つめた。ソウタは疑問の声を上げるが、アコには聞こえていないようだった。

「ごめん、ソウタ。私学校に忘れものしたみたいだから取りに行ってくる」
「え? じゃあ、俺も一緒に行くよ」
「大丈夫よ。大したことじゃないから」
「そうか? 気をつけろよ」
「ええ」

 アコはソウタに別れを告げると駆け出した。



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937777:2013/01/09(水) 12:10:31 ID:tNx2.IzI0


「まさか、あの二人がこの世界のプリキュアだなんて。嫌な予感ていうのは当たるものね」

 士子はそう愚痴をこぼしながら首から下げていたカメラのレンズキャップを外す。
 そして、被写体となるプリキュアを撮り始めた。
 先にネガトーンと接触したメロディーにピントを合わせる。

「キュアメロディ。二人一組が基本であるプリキュアにおいて、前線の役目を果たす。プリキュアとしての身体能力においては突出したものはない。
 しかし、緩急自在な独特の攻撃で、相手に反撃の隙を与えない。絶え間なく攻撃が続くことで後方から仕掛けてくる仲間への注意を惹きつける」

 士子の解説通りにメロディーは流れるような攻撃でネガトーンを圧倒する。
 メロディの攻撃を嫌がったネガトーンは巨体を利用した体当たりで、メロディーに突進してくる。
 その挙動を見たメロディはすぐさま上空へ飛び上がり回避する。
 目標を見失ったネガトーンの目の前にはもう一人のプリキュア、キュアリズムがいた。

「やあ!」

 リズムは突進していたネガトーンに対して華麗な回し蹴りを当てる。
 木々が倒れる激しい音が響く。
 弱々しく立ち上がるネガトーンにリズムは追撃を行う。

「ネッガ、トーン!」

 立ち上がったネガトーンは突進してくるリズムに対して、自身の骨を矢のように射出する。骨が雨のようにリズムに降り注ぐ。硬く激しい雨音が街道の石畳を叩く。
 その骨の雨の中を踊るようにリズムは避けていく。アイスリンクでスケート選手が演舞するように降りゆく骨の雨を軽やかに飛び跳ねていく。
 雨が通り過ぎた後には墓標にように突き刺さっている骨と演技を終えた無傷のリズムが立っていた。

「キュアリズム。二人一組が基本であるプリキュアにおいて、後衛の役目を果たす。メロディと同様に身体能力において突出したものはない。
 しかし、相手の攻撃のタイミングや攻撃の軌道を読むことに長けており、回避や受け流しを得意とする。
 そして、相方の攻撃の準備が整うまで十分な時間稼ぎが出来る」

 士子はリズムの戦闘を撮影しながら解説を続ける。

「はあ!」

 上空へと飛んでいたメロディーは攻撃を終えて硬直したネガトーンに強烈な踵落としを叩き込む。
 死角からの攻撃で怯んだネガトーンの横腹にリズムの飛び蹴りが突き刺さる。
 
「やあ!」
「ネガー!?」

 ネガトーンは豪快に吹き飛ばされトリオたちのところまで飛んでいく。

「おお!?」

 飛んで来たネガトーンをトリオたちは慌てて避けると地に伏したネガトーンを叱咤する。

「くっ。負けるんじゃない、ネガトーン」
「ネ、ガ」

 なんとか立ち上がるもダメージが大きくネガトーンの動きは緩慢だった。その時間をプリキュアは見逃さなかった。

「いくよリズム」
「OK。メロディ」

 互いに声を掛けあうと二人は手を取り合った。
 それは、必殺技を放つ構えだ。士子はそう判断した。

「スイートプリキュアは他のプリキュアに比べると突出した身体能力は持ち合わせていない。
 だけど他のプリキュアにはない特徴がある。
 それは、必殺技の豊富さと威力の高さ。小技をたくさん持っているプリキュアもいるけどスイートほどたくさんの必殺技を持っているプリキュアはいない」

 そのスイートプリキュアの必殺技が放たれるのだ。この戦いはこれまでだ。
 士子がそう思っているとメロディとリズムの二人が叫んだ。

『プリキュア・パッショナード・ハーモニー』

 二人の前に金色のト音記号が現れると勢い良く回転し始める。その回転が限界にまで達すると巨大なエネルギーが発生した。
 エネルギーはネガトーンに向かって発射された。
 体力の限界がきていたネガトーンが避けれるはずもなく、あえなく直撃を受けた。
 そして、大きな爆発が起きた。

「ネガー!?」

 断末魔の叫びを上げるネガトーン。
 だが。

「ふ。またか」

 そうバスドラが言ったときだった。

「ネガトーン!!」

 爆風を取っ払ってネガトーンがその姿を表した。

「え?」

 その光景に士子は目を疑った。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


938777:2013/01/09(水) 12:10:54 ID:tNx2.IzI0


「うそ!?」
「どうして!?」

 ネガトーンの元気な姿に一番驚いたのはメロディとリズムだった。その二人の様子をバスドラは心底楽しそうに笑った。

「ふはは。今日も失敗か。何度やってもその技が通用しないことは分かっているはずだ!」

 笑みを浮かべるバスドラとは対照的にメロディとリズムの表情は暗かった。
 メロディは戦闘中にも関わらずそのことについて考えてしまった。
 どうして自分たちの技が通用しなくなったのか。以前は通用していた技が最近ではめっきり効かなくなった。
 しかし、敵は考える時間を与えてくれなかった。

「行け。ネガトーン」
「ネガ。ネガ」

 ネガトーンは再び大量の骨を射出した。さきほどと変わらない。むしろ、それ以上の数の骨がメロディとリズムに向かった。

「きゃあ!?」
「メロディ!?」

 思案していたメロディは少しだけ反応が遅れてしまった。次々と襲いかかる骨の射撃を一身に受けたメロディは大きくよろめいた。
 射線から離脱したリズムは直撃を受けるメロディを目にした。すぐさま駆け寄ろうとするもネガトーンは続けざまに骨を発射してきた。
 攻撃が激しくメロディのカバーに行けないリズムは歯噛みした。

「〜〜〜」

 メロディはなんとか持ち直すもダメージが抜け切れてなく動きが鈍かった。

「チャンスだ。行けバリトン、ファルセット」
「りょうか〜い♯」
「りょうか〜い♪」

 バスドラの号令でバリトンとファルセットがメロディへと向かう。
 危険を感じたリズムはすぐにでもメロディのところに行きたかった。しかし、ネガトーンがその行く手を阻んだ。

「メロディ!」

 リズムは必死になって叫ぶ。バリトンとファルセットはメロディのすぐそばにまで迫っていた。
 このままではやられてしまう。
 万事休すかと思ったそのときリズムの目に飛び込んできたのは見慣れない少女の姿だった。



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939777:2013/01/09(水) 12:11:12 ID:tNx2.IzI0


 キュアメロディの前に影が飛び出した。その影の登場にバリトンとファルセットが動きを止めた。

「ん? なんですか?」
「突然飛び出しら危ないじゃないですか!」
「あら、ごめんなさい。勝手に割って入ったことなら謝るわ」

 目の前の少女は不遜にそう言うとこちらに目をやった。
 その表情には感嘆と憐れみのような感情が混在していた。全てを見通しているような目にメロディは言いようのない不安を覚えた。
 そんな彼女がこぼすように言った。

「あんたたち本当にズレてるわね」
「え?」
「門矢さん?」

 そう言うと少女は腰に下げていたポシェットからカードを取り出した。

「見てらんないから、そこで少し休んでなさい」

 少女の左手にはいつの間にか大きな腕時計があった。少女は腕を交差させた。
 そして、言った。

「変身」

《CURE RIDE D D D DECADE!!》

 無機質な機械音声が響くと少女の体が光に包まれた。
 そして、光が弾けるとそこには今までとは違い姿の少女が立っていた。

「うそ……」

 その姿には見覚えがあった。もちろんメロディは直接見たことはない。
 しかし、その存在なら知っている。自分たちと同じ存在。

「プリキュア」

 メロディが呟くと戦士となった少女は高らかに叫んだ。

「全てを破壊し、全てを繋ぐ! キュアディケイド!」



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940777:2013/01/09(水) 12:11:29 ID:tNx2.IzI0


「さて、私があんた達の相手をしてあげるわ」

 士子はゆったりとした態度でバリトンとファルセットと向かい会った。

「キュアディケイド、ですと?」
「こんなプリキュアがいたなんて僕知らないよ。バスドラは知ってた?」
「俺も知らん。だが、邪魔をするなら一緒に片付けるまでだ」
「そうですね」
「やっちゃうよ〜」

 バリトンとファルセットは一緒に走りだす。

「はあ!」

 バリトンは上段の蹴りを放つ。ディケイドは上体を逸らすことで難なく避ける。
 伸びきった体を突くようにファルセットの手刀が伸びる。

「やあ!」

 ファルセットの鋭い攻撃は体を逸らしたばかりのディケイドに有効だった。
 回避は出来ないと考えたディケイドはファルセットの手刀を左手で掴み、引き寄せた。強引に引き寄せられ、体勢が崩れたファルセットに対してディケイドはすかさず右のストレートを叩きこむ。

「はぁ!」
「くうっ」

 吹き飛ばされるファルセット。即座に反転しがら後方のバリトンに蹴りを放つ。
 ぎりぎりのところでガードするバリトン。すぐにでも反撃したいところだったが、予想以上の重たい蹴りに身が固まってしまい反撃できなかった。

「どけー、バリトン」

 その声にバリトンは後方へと跳んだ。
 バリトンに対して次の攻撃を仕掛けようとしていたディケイドは上を向いた。そこには空から急降下するバスドラの姿があった。

「おら!」
「くっ」

 バスドラのハンマーのように重い拳がディケイドに振り下ろされる。見るからにパワーファイターであるバスドラの拳は重く、ディケイドは踏ん張ることでなんとか耐えた。

「ファルセット、バリトン!」
「りょうか〜い♪」
「りょうか〜い♯」

 ディケイドの動きが止まったの見計らって、バリトンとファルセットが挟撃してきた。
 たまらず回避を選び、後方へと跳ぶ。

「いまだネガトーン!」
「ネガートーン!」
「!?」

 メロディとリズムの攻撃で大人しくなっていたはずのネガトーンはいつの間にかディケイドの後方へと先回りしていた。
 ネガトーンは超音波による衝撃波を発生させた。

「きゃあ!」

 ディケイドは後方からの思わぬ攻撃に直撃を受けてしまった。地面に激しく叩きつけられた。

「くっ、体が」

 なんとか体を動かそうとするも超音波は衝撃波となってディケイドの体に重くのしかかる。
 地に伏したディケイドにバスドラは言った。

「どうした。しゃしゃり出てきたくせにもうギブアップか?」
「まさか。今のウォーミングアップ。ここからが本番よ」

 ディケイドはなんとか立ち上がるとポシェットから一枚のカードを取り出した。
 そのカードにはキュアブラックが描かれていた。ブラックのカードをディケイドラバーに挿し込む。

《CURE RIDE B B B BLACK!!》

 電子音が流れ、ディケイドは光に包まれる。光が弾けるとそこには全くの別人が立っていた。

「光の使者、キュアブラック」

 その姿にこの場にいた全員が驚いた。



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941777:2013/01/09(水) 12:11:46 ID:tNx2.IzI0


「やっと到着ね。て、私がもう一人いる!?」
「あの姿は、士子ちゃん?」

 戦場に到着した夏海とナギサの二人の目に飛び込んできたのはキュアブラックへと変身したディケイドの姿だった。

「私がもう一人いるなんて、ありえな〜い!」

 ナギサがそう叫んでいるうちにブラックへと変身したディケイド、いわゆるディケイドブラックはネガトーンへと確かな一歩を踏みしめた。 

「馬鹿な、ネガトーンの超音波が効いていないのか!?」
「もちろん効いてるわよ。だけど、この馬鹿な子にはそんな小技は通用しないわ、よっ!」
「ネッガ!?」

 Dブラックは一気にネガトーンとの距離を詰める。
 そして、ネガトーンを殴りつける。それだけでネガトーンは遙か上空まで吹き飛ばされる。

「なに!?」
「バスドラ前です!」

 ただのパンチ一つでは上空まで飛んでいったネガトーンをバスドラは見上げてしまった。
 そんな隙をDブラックが見逃すはずがなかった。

「よそ見は禁物よ」

 バスドラに向かって駆けたDブラック。だが、その正面にファルセットが立ちはだかった。

「させないよ!」

 ファルセットは弾丸のような速度で向かってきたDブラックに拳を放つ。

「甘いわよ」

 タイミングを合わせたはずのファルセットの攻撃は空を切った。
 Dブラックは頭を下げることでファルセットの攻撃をやり過ごした。そして、足に力を込め跳躍する勢いでアッパーを食らわす。

「ぎゃぁぁぁぁ!?」

 声だけ残しながらファルセットは彼方へと飛んでいく。

「ここです!」

 攻撃を当て速度が緩んだDブラックに対してバリトンは着地点に目がけて素早い足払いをかけた。

「よっ」

 足元を狙った攻撃にDブラックは片腕で地面を叩くと体を強引に反転させる。空中にて一回転。その勢いを利用して、下にいるバリトンを蹴りつけた。

「なん、ですと!?」

 まさか、という表情のバリトンは強烈な蹴りを受け地面に叩きつけられた。

「調子に乗るな!」

 Dブラックの顔に影が差す。上を見上げると激昂したバスドラは両手を組んで力のままに振り下ろした。
 仲間の二人がやられ、頭にきたバスドラの力は巨大なハンマーを打ち下ろしたような衝撃だった。

「ふん!」

 しかし、Dブラックはそんなバスドラの一撃に耐えた。さきほどは両腕でも防げなかった攻撃を今回は片腕のみで防いた。

「さっきとパワーが違うだと!?」
「この子の馬鹿力には力自慢のあんただって敵わないでしょうね」

 Dブラックは余った片腕でバスドラの両手を弾く。そして、バンザイの状態になったバスドラに正拳突きを叩き込んだ。

「ぐはぁ!?」

 Dブラックの攻撃を受けたバスドラはファルセットの方へと飛んでいった。
 ふう、と一息付いていたDブラックの上空を黒い影が覆う。

「士子、上!」

 思わず声を上げるナギサ。
 しかし、Dディケイドは余裕の表情をナギサに向けるとポシェットからカードを取り出し、ドライバーに挿し込んだ。

『FINAL ATTACK RIDE B B B BLACK』

 ディケイドラバーから電子音が流れる。するとDブラックの右腕に力が集まる。

「プリキュア・ブラックスクリュー!」

 Dブラックは右拳に集まった力を上空に向けて放った。

「ネ、ネガトーン!?」

 避ける術もないネガトーンはブラックスクリューの直撃を受けるとたちまち消滅してしまった。
 あとに残ったのは変色した音符だけだった。



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942777:2013/01/09(水) 12:13:59 ID:tNx2.IzI0


「にゃぷにゃぷ。音符にゃ〜」

 ハミィは嬉しそうにそう言うと手を叩く。するとハミィの手からハート型の光が音符へと飛んでいく。音符は光に包まれるとあっという間に元のピンク色へと戻っていった。
 ブラックの変身を解くとディケイドは音符を摘むと近くにいたエレンに渡す。

「ほら、大事なものなんでしょう。しっかり持ってなさい」
「……」

 エレンは無言で音符を受け取る。
 奥ではトリオザマイナーの三人がゆっくりと立ち上がっていた。

「くっ。貴様覚えておけよ〜♭」
「う、覚えておけよ〜♪」
「お、覚えておけよ〜♯」
 
 三人は捨て台詞と吐くとさっさとこの場を去っていった。

「あそこまでハモリを徹底するってことは、挑発でやってるわけじゃないのね」

 ディケイドが一息つくとブラックへの変身が解けた。通常のマゼンタの衣装に身を包んだディケイドは後方から刺さる視線を感じた。

「……ところで、あなたたちに話があるんだけどいいかしら?」

 ディケイドはそう言うとメロディとリズムを見た。
 ダメージが抜けきったのか二人は毅然と立っていた。
 そんな二人から先に言葉が出た。

「ねえ、その前に一つ聞いてもいい?」
「どうぞ」
「あなたは、キュアディケイドよね?」
「ええ、その通りよ。あなたたちダメダメコンビのピンチを救ったキュアディケイドよ」

 そう言い切ってディケイドはふと思った。こんなやり取りをどこかでやった記憶がある。こういうのをなんと言っていたか。

「ディケイド!?」

 その大きな声はディケイドの後ろから聞こえた。
 
「アコ!?」
「アコちゃん!?」
「姫!?」
「アコにゃ!」

 ディケイドが振り返るとそこには赤いランドセルを背負った女の子がいた。

「小学生?」

 女の子はきつくディケイドを睨みつけている。

「やっと姿を現したわね。ーー悪魔!!」

 その小さな体のどこから大音量を出せるのか。激昂したアコは懐からハート型のオカリナを取り出した。

「変身よ。エレン!!」
「は、はい!」

 エレンは急いで懐からアコと同じハート型のオカリナ、キュアモジューレを取り出し構えた。

『レッツプレイ。プリキュアモジュレーション』

 二人の声がハモる。すると二人の体を光が包んだ。

「まさか!?」

 ディケイドの疑惑の声を他所にエレンとアコに纏わりついていた光が消えた。

「爪弾くは魂の調べ、キュアビート」
「爪弾くは女神の調べ、キュアミューズ」

『届け、二人の組曲。スイートプリキュア!!』




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2012年05月25日

第十話 「もう誰もが頼りない」-02

91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 00:12:58.19 ID:3N6NQXId0


     __√/___         _,--ミ
     { i======i `l   γ ‐ '"~´  __,)       .i'´ `i         /´ `i
     | i三三三i .|   ゝ−イ .√~´_,、     /´ヽ|   .|/^ヽ    ___ノ  ノ___
     l、_i二二二i_.ノ  γ^'"´   ̄´  )    .ノ  ノ.|  |ヽ .ヾ  i´         `i
    l´`ニ二 ̄二ニ´`i  ヽ-.‐┐ l' ̄´"_    /  / .|  | .ヽ  ヽ ` ̄フ  / ̄ ̄ ̄´
    | `ニニ'Wニニ´ .| γ‐‐'~  ` ̄ ´ )   ヽ ノ .|  |  .ゝ、丿  (´  く  /⌒
    ヽ ` ̄ V ̄´‐イ ヽー¬  i‐'"^ ̄´    `´  ヽ、ノ ,-‐、    ヽ  `´  ./
    ` ̄} { ̄} {´      |  |    ノ⌒l       _ノ  丿    ,`>   \
  ( ̄  ̄´    ̄ ` ̄ ´)   |  ヽ---'  ノ  '´ ̄ ̄´  /    i'´  彡へ、 ヽ
   ` ̄フ ノ ̄ {  | ̄´´    ヽーーーー'´   ゝー―-='      ゝ-‐'     ゝ-'
     `"´   `"´            ____        ____        ____
V I B R I S S A E  M A G I  √ヽ (___   _) _  √ヽ (___   _).__  √ヽ (___   _)._     _____         ○   _i´ `i__
B   O   B   O   B   O   |  | ___|  | ( )_ |  | ___|  | ( )_ |  | ___|  | ( )_   (____  ` ,         ○ (_   __  `i
M   A   G   I  C   A    |  | (___   .) `(__).|  | (___   .) `(__).|  | (___   .) `(__)        ./  /  __i⌒i__    |  |    |  |
                   |  ノ ___|  .|__    |  ノ ___|  .|__    |  ノ ___|  .|__           /  / (__   __)   /  /     |  |
                   `´ / __  ._)   `´ / __  .___)   `´ / __  .___).       i⌒ 、/  /   __|  |___   /  /     |  |
                    |  .i´ .|  l      .|  .i´  |  l       |  .i´ .|  l    ∧    ヽ   /  (__   __)  ゝィ       !  |
                    .ヽ  `‐'  ノ      ヽ  `‐'  ノ      ヽ  `‐'  ノ <  >   ヽ `、       |  |           _ ノ  |
                     `──―'        `──―'        `──―'   ! ヘ !     ` ´        ゝィ         .( __ ノ

このAA作っていたら色々と遅くなったというのは、ジョジョにも誰にもいえない秘密よ…

こんばんは>>1です
第十話残りの投下を始めます

92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 00:15:47.28 ID:3N6NQXId0



  〜町中〜


まどか「あ」

さやか「お、まどかじゃん」

まどか「上条君と病院に行ってたんじゃないの?」

さやか「うん。結構あっさり診察終わっちゃってさ。家に送って帰ってきたよ。あんたらは?」

まどか「みんなで杏子ちゃんの事を話してたよ。でも、話がまとまらなくてね」

首領パッチ「ムダナカイギザウルス〜♪」

天の助「んで、マミ達と分かれて帰る途中って訳」

さやか「そっか。じゃ、一緒に帰ろうよ」


    テクテク


まどか「……っていう感じで、書類とか色々必要ってボーボボが言ってたんだ」

さやか「ふ〜ん、やっぱり簡単にはいかなそうだね」

まどか「そうだ! さやかちゃん、杏子ちゃんの家族のこと何か知らない?」

さやか「えっ、杏子の家族? あー……」


   『変な宗教』『何か残念な親父』『埋蔵金を追え!』モヤモヤ〜


さやか「う、うん、ちょっと色々事情があるみたいだよ……」

まどか「そうなんだ……」

杏子「アタシがどーしたって?」

まどさや「「」」ギョッ

さかなクンの助「ギョギョッ!」

93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 00:17:13.78 ID:3N6NQXId0



さやか「きょきょきょ、杏子!? あんたいたの!?」

杏子「何でそんな驚いてんだ? アンタらの姿が見えたからちょっと声かけただけだよ」

まどか「も、もしかして聞いてた?」

杏子「 ? 何をだよ? つーかアタシの話してたろ、何の話だよ」

さやか<ど、どーしよ、どーやって誤魔化そう!?>テレパスィー

まどか<バレちゃったら大変だよぉ!>アセアセ

天の助<……>


天の助<みんなで……歌いましょう>



   交わした約束忘れないよ

            目を閉じ確かめる


           押し寄せた闇

                 振り払って進むよ



杏子「おい、何歌ってんだてめーら」

94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 00:17:52.04 ID:3N6NQXId0



       いつになったらなくした未来を



杏子「いつまで続けるつもりだ、コラ」



    変わらない思いをのせ 扉閉ざされた扉開けよう

      バカサバイバー 生き残れこれ バカサバイバー


杏子「おい、バカサバイバーになってるぞ」

首領パッチ「……」つ『J○SRAC』スッ

杏子「いらん気をつかわんでいい!」

95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 00:19:24.77 ID:3N6NQXId0



杏子「ホント、意味わからねーなお前ら」

さやか「は、ははは、あたしもこいつらに入れないでよ(誤魔化せたみたい……)」

杏子「一緒に歌ってた癖によく言うぜ」

まどか「ティヒヒ…」


さやか「そ、そうだ、杏子! あんた今からヒマ?」

杏子「あん? まあ、ソフトンの手伝いも終わったし、ヒマっちゃあヒマだけど?」

さやか「じゃあさ、ゲーセンいこ、ゲーセン! 一度杏子と一緒に遊びたかったんだ!」

杏子「ゲーセンかー。言っとくけどアタシ、かなり強いよ?」ニヤリ

さやか「ふっふふ、望むところよ!」


まどか「さやかちゃん? ゲーセンって……」

さやか<杏子にそれとなく聞いてみない? 学校のこととかをさ>テレパスィー

まどか<なるほど…>

首領パッチ「目から鱗だぜ……」鱗ポロポロポロ

さやか「ほ、ホントに鱗が落ちてる!?」

首領パッチ「はい、記念品」つ鱗 スッ

さやか「いらないよ、気持ち悪い!」


天の助「あ、金の鱗だ! おじさーん、『ハジケの缶詰』と交換してー!」つ金の鱗

まどか「どこぞのチョコ菓子!?」

首領パッチ「金なら100枚、銀なら500枚だよ。出直して来な」

さやか「難易度高ッ!?」

杏子「なー、そろそろ行こうぜ」

96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 00:21:37.32 ID:3N6NQXId0




  〜学校〜


ボーボボ「お前は先に帰ってもよかったんだぞ」

マミ「ボーボボさんの用事なら手伝いますよ。でも、どうしてまた学校に戻ってるんですか?」

ボーボボ「俺は教職に就く者だ。受験生一人一人の進路の事を考えないとな」

マミ(ボーボボ、佐倉さんだけじゃなくクラスのみんなのことも……!)

ボーボボ「こいつはシベリア送りで……、こいつはマグロ漁だな。あとこいつは闇払いに推薦しよう」つ名簿パラパラ

マミ(…………やっぱ心配)マミーン…


マミ「ところで、ボーボボさん。佐倉さんのことなんですけど……」

ボーボボ「何だ?」

マミ「昔、私は佐倉さんと一緒に行動してたことがあるんですけど、その時にあの子は家族のことを全く教えてくれなかったんです」

マミ「おそらく、何か複雑な事情があると思うんです。だから、家族状況などの書類を揃えるのはかなり難しいんじゃ……」

ボーボボ「そのことも想定内だ」

マミ「えっ、それじゃあ何か作戦でもあるんですか?」

ボーボボ「ああ……」スッ



父ボーボボ「杏子のヤツも随分成長したなぁ、母さん」ババン!

マミ「……」

ボーボボ「……」

マミ「ノリませんよ?」

ボーボボ「ガーン…」シュン…

97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 00:23:23.07 ID:3N6NQXId0




  〜ゲームセンター〜


     ワイワイガヤガヤ

さやか「ゲーセンに着いたよー!」

まどか「わーい!」

杏子「そーいや久々だな、ここ来るのも」

パチ天「「うおおおぉぉーーー、遊ぶぜぇーー!!」」ダッダッダ!

さやか「ちょっと、どこ行くの!?」

首領パッチ「決まってんだろうが! ゲーセンに来たら真っ先にすることはーーー!!」ダッダッダ!

天の助「ゲーセンと言えば、腕相撲マシンだろうがーーー!!」ダッダッダ!


 腕相撲マシン『フン、デカくなったな小僧』ウィーーン


まどか「まだそのゲーム置いてる店あったの!?」


首領パッチ「オラァーー!! 勝負じゃ、コラぁーー!」つガシッ!

      ボキィッ!

首領パッチ「うわぁーーーん、折れたぁーー!?」ギャァァァァ!

 腕相撲マシン『俺に後退は無い!』

天の助「コノヤロー、首領パッチの仇!!」つガシッ!

      パアァンッ!!

天の助「ひいいぃぃ、僕ちゃんの腕が木っ端微塵にぃーー!?」

 腕相撲マシン『天空の鳳凰は落ちぬ!』

さやか「何やってんのよ……」

98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 00:25:39.76 ID:3N6NQXId0


首領パッチ「杏子〜、俺たちの代わりに戦ってくれよ〜!」ウルウル

天の助「悔しいよぉ〜!」ウルルンタイザイキ

杏子「何でアタシが……」つガシッ

さやか「とか何とか言って、やる気マンマンじゃん」

杏子「うっせぇ」


杏子「ふんぬ〜!」グググ…

 腕相撲マシン『俺との戦いを避けてきたのではなかったのか?』ウィーーン

首領パッチ「行けー! やれ、杏子ー!」

天の助「そこだぁー! 秘孔を突けー!」

まどか「頑張って杏子ちゃん!」

      ワイワイヤンヤヤンヤ!!

さやか「いいぞー! ……あ(いけない、当初の目的を忘れるとこだった!)」

さやか(それとなーく、話を聞かなきゃ!)

99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 00:27:35.98 ID:3N6NQXId0


さやか「ねぇ、杏子……」


 腕相撲マシン『お、お師さん……』ガシャーーン


杏子「勝ったぁーー!」

首領パッチ「次! こっちに行こうぜ!」グイグイ

まどか「あ、待ってよ!」

杏子「おい引っ張るな!」グイグイ

天の助「次はガンシューティングだ!」

さやか「あ、ちょっと話が!」

     タッタッタッタッ…


  ドア < ウィーーン

モモ「うわぁ、ゲームがいっぱい!」

杏子母「あなた、どうして突然ゲームセンターに……?」

杏子父「杏子を見つけたんだ……」

杏子母「えぇっ!? ほ、ホントに? 見間違いじゃ…」

杏子父「確かに見たんだ、あの赤髪を……。あんな赤髪、私達の娘以外にあり得ない」

杏子母「た、確かに!」

杏子父「しかも、隣に青い子やピンクの子とかが居て、すごく目によろしくなかった」

モモ「お姉ちゃんいるの?」

杏子父「取りあえず探そう。離れないようにしなさい」

100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 00:31:17.05 ID:3N6NQXId0




  〜ほむら邸〜


ほむら「ど、どういうこと!?」

ほむら「少し気になって杏子の家のことを調べてみたら……」


ほむら「どこにも一家心中の記録がない!」


ほむら「当時の新聞も週刊誌もインターネットでも調べてみたけれど、どこにも見あたらない」

ほむら「私の知らないところで一体何が起こっているというの……!?」

テレビ『続いてのニュースです……』

ほむら「まさか、佐倉一家はまだ生きている? それなら何故杏子が……でも、もしかして……いや……」

ほむら「何らかの理由で風見野を離れているのかしら。もし見つけることが出来れば、杏子を学校に通わせることも……」

ほむら「でも、そう簡単に見つかる訳が……」


テレビ『織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、明智光秀、武田信玄、歴史に名だたる武将の埋蔵金を次々と発見したことで知られる佐倉さんが……』

ほむら「見つかったぁーーーーーッッ!?」ホムーーン!?


ほむら「って、埋蔵金!? 娘ほっぽって何してるのあのエセ神父!?」

ほむら「しかも、どんだけ見つけてるのよ埋蔵金!」


テレビ『佐倉さんは、見つけた埋蔵金の多くを恵まれぬ子供達への寄付、及びコードが絡まらないイヤホンの開発費にあてると発表しています』

ほむら「絡まらないイヤホン!? ますます意味が分からない……」

ほむら「見つかったのはいいけど、何だかイヤな予感がするわ……」

ほむら「とりあえずは杏子を探しにいきましょう」スッ


102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 00:33:10.69 ID:3N6NQXId0




  〜ゲーセン〜


首領パッチ「コレやろう、コレ! 絶対面白いぜ」つ100円 チャリン


  『カッパ君と遊ぼう! わくわくゲーム』<ピロリロリン♪


さやか「絶対つまんないでしょ、それ」

 カッパ君『僕はキュウリが大好きかっぱ〜。君と一緒に遊ぶかっぱ!』

パチ天「「うおおぉぉ、楽しそう〜〜!」」ワクワク!

杏子「おい、それよりあっちのリズムゲーを……」

   『襲い来るゾンビをせん滅せよ!!』

   ゾンビ『ウガアアァァ!』

   カッパ『チッ、もう嗅ぎつけて来やがった!!』

杏子「そういうゲームなのか、それ!?」アンアン!?


まどか「あ……」

さやか「どうしたの、まどか?」

まどか「あのお人形がカワイイなぁ…って」


    『UFOキャッチャー』ウィーーン

.

103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 00:34:59.55 ID:3N6NQXId0

さやか「あー、確かにまどかが好きそうなぬいぐるみだね」

まどか「お小遣いあるし、やってみようかな……」

杏子「止めといた方がいいよ」

まどか「えっ?」

さやか「何でよ?」

杏子「ありゃあ、取れないよ。店員がわざと取りにくい位置に置いてやがる。よっぽどの腕じゃないと無理だな」

さやか「な、何それ! 腹立つ店!」

杏子「まどかなら30回位やれば取れるんじゃない?」

まどか「そ、そんなお金ないよぅ……。それじゃ諦めよっかな」

杏子「ようし、安心しな。アタシが取ってやる!」

さやか「おっ? 出来るの?」

杏子「アタシを誰だと思ってんだい?」

天の助「ゲームセンターあらし」

杏子「出っ歯じゃねぇ、ふざけんな」

104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 00:36:43.90 ID:3N6NQXId0


杏子「アンタ達とはゲーセン歴が違うの。まあ、ちょっくらお手本ってのを見せたげるよ」スッ

杏子「どれが欲しいの?」

まどか「えっと……、あの黒猫のお人形がいいな!」

杏子「任せな!」

まどか「頑張ってね杏子ちゃん!」

さやか「いったれー!」

首領パッチ「どれ、私もその勝負に参戦しましょうか……」スッ

杏子「は? 勝負?」

首領パッチ「先にまどかのお目当ての人形を取った方が勝ちだぜ! 幸い同じ商品のUFOキャッチャーが二台ある!」

杏子「そんな下らないことしなくても……」

首領パッチ「おやおや、杏子さんは負けるのが怖いんですか? とんだ魔法少女ですねぇ」ニヤニヤ

杏子「な、何ィ!? 上等だ、コラ! ぶっ潰す!」

首領パッチ「望む所じゃボケェーー!!」

まどか「何だか大事になっちゃった……」

さやか「杏子も乗せられやすいね」


天の助「両者、位置について……」

天の助「よーい…ドン!!」


首領パッチ「うおおおおぉぉぉぉーーッ!!」

杏子「おりゃああああぁぁーーーッ!!」

105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 00:37:55.88 ID:3N6NQXId0




 UFOキャチャー < ウィン、ウィーーーーン…


さやか「うわ、絵面地味っ……」

杏子「おらおらおらぁーーーーーッ!!」

首領パッチ「うらららららぁーーーーーッ!!」

まどか「でもスゴく白熱して……してるのアレ?」

さやか「いや、叫びの割に動きが無いからよく分かんない」

まどか「だよね」


杏子「奥義『ヤマクズシ』!!」ウィーーン!

さやか「杏子、あんた……!」

まどか「上の方の人形を狙った!?」

さやか「UFOキャッチャーは穴近くの人形を引っかけて落とすのが定石でしょ!? どうしてそんな無茶を……」

杏子「へっ、見てなって」


   人形 < コテッ


まどか「掴めずに掠っただけ……、これじゃダメだよ!」

さやか「いや、よく見て!」


   人形 < コロコロコロッ!


まどか「こ、これは!? 引っかけた人形が斜面を転がっている!?」

さやか「しかも、他の人形も巻き込んで……! それはさながら極寒の雪山の雪崩の如く……!!」

まどか「これが、『ヤマクズシ』……!」

106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 00:39:30.19 ID:3N6NQXId0



天の助「不味いぞ、首領パッチ! このままじゃ負ける!」

首領パッチ「分かっている。こっちも奥義を使おう」

まどか「首領パッチくんも!?」

首領パッチ「奥義『暴虐の帝王 〜ネロ〜 』!!」ゴゴゴゴゴ!

さやか「ぼ、暴虐ぅ!?」


首領パッチ「オラララララぁーーーッ!!」ドガガガガガッッ!!


   UFOキャッチャー < ガンガンガンガンガン!!!


まどか「ただ単に筺体を殴ってるだけだぁーー!?」マドーン!?

首領パッチ「落ちろぉーーー! 落ちろぉーー!!」ガンガンガン!

さやか「それルール違反でしょ! 店員に怒られるよ!?」

店員「あのー、お客様……」

さやか「ほら来た!」

首領パッチ「む! ならば、第2奥義!!」


首領パッチ「奥義『クレーマー・クレーマー』!!」


首領パッチ「オカシくねぇか、おい? コレ絶対取れねぇだろコラ、あ゙ぁ゙ん!?」

店員「そ、それはお客様……」

首領パッチ「慰謝料払え! 慰謝料としてあの人形ヨコせ!!」グイグイ

店員「お、お客様ぁ〜……」

まどか「ガラの悪い客になった……」

107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 00:41:54.14 ID:3N6NQXId0


  ぬいぐるみ < ボトボトボトッ!


さやか「あっ」

杏子「っしゃあ! 5個ゲット!」

まどか「杏子ちゃんが先に取った!」

首領パッチ「どうやら引き分けか」

さやか「あれ、あんたも同時に取ったの?」

首領パッチ「ああ、ゴネまくったぜ」

杏子「反則だろそれ」


杏子「ほらよ、アンタのもんだよ。黒猫以外にも色々取れたけど」つ ぬいぐるみs スッ

まどか「ありがとう! スゴい……、1回で5個も……! あっ、お金払うね」ゴソゴソ

杏子「100円位いいって」

まどか「でも……そうだ! それじゃ、ハイ!」つ ぬいぐるみ

杏子「 ? アタシが取った人形……どういう意味?」

まどか「ティヒヒ、人形5個は流石に多いから。みんなにお裾分け! さやかちゃんにも!」つ ぬいぐるみ

さやか「あ、ありがと」つスッ

杏子「相変わらずだね。まあ、その人形はアンタのもんだし、どうしようがアンタの勝手だよ」

108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 00:43:28.20 ID:3N6NQXId0


まどか「はい、首領パッチ君、天の助君!」つ ぬいぐるみ

天の助「おう」

首領パッチ「んだよ、俺もせっかく取ってやったのに」

まどか「あ、首領パッチ君もありがとう!」

首領パッチ「せっかくお前の言ってた奴を取ったのによ」つ『きんにくピーマン』 スッ

まどか「何この人形!? 私コレ取ってって言った覚えこれっぽっちも無いよ!?」マドーン!

きんにくピーマン「喰らえ……」

まどか「しゃべった!?」

首領パッチ「ほらやる」

きんにくピーマン「喰らうがいい……」

まどか「い、いらない…」

109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 00:44:48.29 ID:3N6NQXId0


さやか(……はっ! 楽しすぎてまたまた目的を忘れてた! これじゃ、ただ遊んだだけで終わっちゃう!)

さやか「ねぇ、杏子。あんたさ学校に……」 ガンガン!>

杏子「あん? ん、何だこの音……?」 ガンガン!>

さやか「えっ?」チラッ



 UFOキャッチャー『田楽マン「……」』ジーーーッ



さやか「……」

杏子「……」


 UFOキャッチャー『田楽マン「し、しまった、コレは罠か!? 世界カワイイキャラ選手権の会場と間違えちまった!!』

 UFOキャッチャー『田楽マン「出してくれぇ! このままじゃ悪徳バイヤーに人身売買されちゃう〜〜!!」』ガンガンガン!!



さやか「……」

杏子「……」

さやか「向こう行こっか」

杏子「ああ」

UFOキャッチャー『田楽マン「ああっ、ちょっと待って! 助けてくれよ、ほらさっきみたいに俺をゲットしてよ!!』ガンガン!

さやか「えぇ〜〜……」

杏子「テメーの為に100円使うのはちょっと……」

UFOキャッチャー『田楽マン「ひ、ヒドい!!」』ガガーーン!



 「あっ! あのお人形さんかわいい!」


.

164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 02:22:10.74 ID:3N6NQXId0
あと、誤字の修正を


>>110


さやか「え?」

UFOキャッチャー『田楽マン「ほ、ほら見ろ! 俺の可愛さが分かる人間はちゃんといるんだよ!」

女の子「いや、あなたじゃなくて横のクマのお人形なんだけど……。あなた何だか怖いし」

UFOキャッチャー『田楽マン「おぶぇぐばああぁぁぁッ!!」』ゴバァッ!

まどか「しょ、ショックのあまり血を吐いた!?」マドーン!?

さやか「他のぬいぐるみも血まみれに……!」

首領パッチ「ば、バイオハザードだぁ……」ガタガタ

杏子「……」

さやか「ん、どうしたの杏子?」

杏子「……モモか?」

さやか「えっ?」


モモ「……お姉ちゃん?」


まどか「え……」

まどさや「「えええぇぇーーー!?」」

111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 00:47:03.23 ID:3N6NQXId0



杏子父「モモ! 勝手に走ったら……なっ!?」

杏子母「あ……!」


杏子「お、父さん……お母さ…ん?」


まどか「え、えぇっ!? これって……!?」

さやか「杏子! 本当に……!?」

天の助「誰こいつら?」

首領パッチ「安田大サーカスじゃね?」サンニンダシ

まどか「まったく違うよ!!」

さやか「ねぇ、杏子!」

杏子「……」



   キィィーーーーーーン!!



まどさや杏「「「!!」」」

112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 00:48:10.03 ID:3N6NQXId0


まどか「これって!」

さやか「魔女……!? す、すごく近い!!」

モモ「な、何?」



  結界 < ガパァッ!



モモ「きゃあぁぁぁぁッ!?」ゴオォォーー!

杏子父「モモ! うっ、うわああぁぁ!?」ゴォーー!

杏子母「あなたっ、きゃああぁぁーーーッ!?」ゴォーー!


まどか「ああッ! 取り込まれた!?」

さやか「すぐに追おう!」ダッ

杏子「くっ!」ダダッ!

首領パッチ「暴れるぜぇーーーッ!!」ダッ!

天の助「な、何だって娘が誘拐された!? 分かったすぐに帰るぞ」

天の助「ちょっと急用が出来たから、さようなら」エ、エヘヘ

首領パッチ「はい、散歩しましょうねポチ〜♪」ガシッ

天の助「ぐえええぇぇ〜〜!? ごめんなさい、逃げないから首輪はやめてぇーーーッ!!」

首領パッチ「オラッ、走れ!」

天の助「ひいぃーーーッ! わんわーーん!!」


  結界 < ゴゴゴゴゴ…



UFOキャッチャー『田楽マン「……」』

UFOキャッチャー『田楽マン「えっ、俺置いてけぼり?」』

113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 00:49:34.24 ID:3N6NQXId0




  〜町中〜


ほむら「この感じは……魔女!」

マミ「そうね!」

ほむら「と、巴さん!? いつの間に背後に!」

マミ「あなたの知らぬ間によ」ファサッ

ほむら「それは私の真似ですか……?」

ボーボボ「場所はどこか分かるか」

ほむら「ボーボボも居たのね」

ボーボボ「俺たちはちょうど学校から帰る途中かもしれん」

ほむら「そこはハッキリしてくれないかしら……」

マミ「魔女の気配は向こうからですよ、ボーボボさん!」

ボーボボ「よし、俺の愛車に乗れ!」


  ベンツ『ププー!』


マミ「スゴいセレブぅーーーッ!?」マミーン!

ボーボボ「ボーナスで買ったんだ。傷は付けるなよ」ドアガチャッ

ほむら「この高級車なら一瞬で目的地に付けるかも……」ドアガチャッ

ボーボボ「みんな乗ったな? 全力でペダルを漕げ!!」キコキコキコキコキコ!!

ほむマミ「「人力ィーーーッ!?」」


ボーボボ「急げ! 間に合わなくなるぞ!」

マミ「で、でもこれ走った方が早いんじゃ……」

ボーボボ「とにかく漕ぐんだぁーーー!!」

114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 00:50:48.29 ID:3N6NQXId0



      キコキコキコキコキコキコ……


ボーボボ「うおおおぉーーー! 音速じゃぁーーー!!」キコキコキコ!


       ザワザワ… ナニアノクルマ…


マミ(は、恥ずかしい……)キコキコ…

ほむら「どんなに漕いでもやっぱり遅いわ! 大体この車ホントにベンツなの!?」チラッ


   『メロスです-Benz』チーン


ほむら「メロスですぅ!? メルセデスじゃなくて!?」ホムーン!?

マミ「ぱ、パチモンじゃない!!」

  ベンツ『待ってろセリヌンティウス!!』プップー

マミ「ホントにメロスだった!!」

ほむら「ちょっとボーボボ! こんな車じゃいくら漕いでも……」


ボーボボ「うるせぇ!! 一度本気でやってみろ! 熱意が伝われば必ず道は開ける!」

ボーボボ「うおおおおぉぉーー!!」キコキコキコキコ!

  ベンツ『私は友情の為に死にに行くのだ!!』プップー

ボーボボ「うおおぉぉ! 頑張れ! 頑張れメロス! 暴君に友情を見せつけるんだ! 頑張れ頑張れ頑張れ頑張れ〜〜〜!!!」キコキコキコキコ!!

ボーボボ「って、バカぁーーーーーッ!!!」鼻毛ズパァーン!!

  ベンツ『ぐわああぁぁーー!?』ゴシャッ!

  ベンツ『』ドサァ…

ボーボボ「フー……」スッキリ

ボーボボ「じゃ行くか」スタスタ

ほむら「」


ほむら「……と、巴さん」

マミ「いつものボーボボさんよ。気にしないで……」

ほむら「そう……」

115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 00:53:41.67 ID:3N6NQXId0




  〜結界内〜


まどか「杏子ちゃん、さっきの人たちってホントに……」

杏子「ああ」


杏子「アタシの両親と妹……だよ」

まどか「!!」


父パッチ「嘘だ! 杏子の本当の家族は俺たちだ!」

妹の助「お姉ちゃん!!」

母さやか「杏子……」

杏子「フザケてんじゃねーぞオイ!! あれはオメーらがしつこかったから付き合ってやっただけだ!!」アンアーン!

まどか「な、何があったのかな……?」


さやか「でも、何で杏子のお父さん達がここに? まさか……」

杏子「な、何だよ」

さやか「埋蔵金……」

杏子「……いやいやいや、あり得ないでしょ」

さやか「だけどあの書き置き……。帰ってくる時は埋蔵金を発掘した時とかって」

杏子「あり得ないって。いくら何でも埋葬金なんてさ、ないないない」


まどか「あっ!」

さやか「どうしたの?」

まどか「あの人達どこかで見たことあると思ったら……」

まどか「ニュースに出てたよ! 確か埋蔵金を発見して億万長者になったとか……!」

杏子「ま、マジかよ……?」

首領パッチ「杏子、困ったことがあったら何でもおじさんに言いなさい」ポンポン

天の助「杏子さん肩揉みますよ、へへへ」モミモミ

杏子「急にひっつくな! 親父が金持ちって知った途端コレかよ!」

116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 00:55:16.03 ID:3N6NQXId0


さやか「この近くにお父さん達はいないみたいだね。どこに行っちゃったんだろう?」

まどか「もしかしたら、結界の奥に飛ばされてたりして……!」

さやか「速く助けにいこう! 一般人が生身では危ないよ!」

杏子「そうだね、まずは親父達の救出だ」


まどか「それにしても、この結界ってなんか不思議だね、豪華っていうか……」

さやか「ケバイね。趣味の悪い金持ちの家みたいな感じ」

杏子「的を得てるな」

首領パッチ「金だ、金だぁーーー!!」ヌスミヌスミ!

天の助「これは俺のもんだバカヤロー!」ヌスミヌスミ!

さやか「一応、他人の物だし止めなよ」

杏子(つーか、結界から出たらそれ消えるだろ)


使い魔「キキー!!」ガバッ!

さやか「 ! 使い魔!」

使い魔「キッキー!」ヌスムナ!

   バキィッ!

天の助「ぐっばぁッ!?」ゴバッ!

首領パッチ「ひいぃ、許してぇ〜!!」ボカッ!

杏子「言わんこっちゃねぇ」

117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 00:56:26.36 ID:3N6NQXId0


使い魔「キッ?」クルッ

まどか「えっ」

使い魔「キッキーー!」ダッダッダ

まどか「きゃあぁぁーっ!?」


さやか「ま、まどか!」

杏子「ちっ!(バカ共に気を取られてた!)」


使い魔「キキー!」スカッ

まどか「きゃぁぁ……ってあれ?」


さやか「 !? まどかを素通りした……!?」

杏子「いや、よく見ろ」

さやか「えっ?」


使い魔「キキキー♪」つサイフ

まどか「あっ私のサイフ! 返してよ!」

使い魔「キキー!」ダッダッダッダ!!

まどか「行っちゃった……」

さやか「ガメツい奴ね。ということは魔女本体はよっぽどの守銭奴か」

まどか「私のサイフが……、ママが買ってくれたのに……」

首領パッチ「どんまいどんまい」

天の助「久々にストレッチマンを見たら、まいどんとかいうのが居てビビった」

118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 00:58:03.25 ID:3N6NQXId0


さやか「それじゃ、杏子のお父さん達が引き込まれたのは、金持ちオーラを感じ取ったからかな?」

杏子「フザケた魔女だな、ますます腹が立ってきたよ」

まどか「でもさ……」

杏子「あん?」



まどか「でも、その魔女も元は魔法少女なんでしょう……?」



さやか「まどか……」

杏子「……」

まどか「その魔女だって、さやかちゃんの時と同じように元に戻せるかもしれないんだよね?」

杏子「かもな」

杏子「だけどな、今アタシの家族が危ない目に遭ってるんだ。そんなできるかどうか分からないもんに賭けられるか。さやかの時は奇跡だったわけだし」

まどか「それは、分かるよ……。でも魔女を含めてみんなを助けられる可能性があるんだよ?」

杏子「もしかすると、使い魔が成長した魔女かもしれないよ。今更そんなこと考えてどうするの」

杏子「元は同じ仲間だったかもしれないけどさ、奴らを倒さないとアタシらも魔女になるわけ」

まどか「確かにそうだけど……」

119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 00:59:31.50 ID:3N6NQXId0


さやか「まどか」

まどか「さやかちゃん……」

さやか「あのね、前のあたしだったらまどかの意見に賛成してたと思うよ」


さやか「でもさ、一回魔女になって実感したよ。もうあんなのになりたくないって……」

さやか「自分が何かも分からずに、ただただ絶望し続けるんだよ? 辛いなんてもんじゃない。知らず知らずの内に親友も傷つけてたりするし」

さやか「だからさ、もう絶対に絶望しない。そして、魔女は倒す」


さやか「魔女もキュゥべえの被害者ってことは分かる。だけどあの子達も本心ではこんな事したくないって思ってるよ」

さやか「だから、魔女が新たな絶望を生む前に倒す。それこそが魔女の為だし、あたし自身の為でもある」


まどか「さやかちゃん……」

さやか「このやり方も無理があるだろうけどね。でも今はこれしか方法がないと思う」

杏子「よく言ったなさやか!」

さやか「まどか……、これじゃダメかな? あんたにとってはスゴく辛いだろうけど、お願い」

まどか「……」

まどか「……分かったよ。ごめんね、呼び止めちゃって」

杏子「いいって、気にしてないよ。ちゃちゃっと倒して、親父達を助ければいいだけだし」

さやか「じゃ、行こっか」

首領パッチ「あ、話終わった?」ジャラジャラ

天の助「全自動の卓買おうぜ」ジャラジャラ

杏子「何麻雀してんだよ!」

まどか「……」

まどか(さやかちゃんの言ってることは理解できるけれど……やっぱり……)

まどか(考えてみれば、倒してきた魔女も元は魔法少女なんだよね……)


まどか(今まで倒した魔女も、これから倒さないといけない魔女も、魔女になる前の魔法少女も……)

まどか(みんなを助けることは本当に出来ないのかな……?)

120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 01:00:31.84 ID:3N6NQXId0




  〜結界・再深部〜


魔女「ウケケケケケェーーッ!!」

さやか「いた! 魔女!」

杏子「親父達は……」キョロキョロ


佐倉一家「「「」」」キゼツ


まどか「あそこだよ! みんな気を失っているみたい……」

さやか「先に助けよう!」

杏子「おう……、あっ!」


使い魔s「「キキー!」」


佐倉一家「「「」」」ズルズル


杏子「親父達を引きずって……、どこに連れてくつもりだ!!」

さやか「杏子、アレ!」


使い魔「キキッキー!」

  金庫 < バッターーン!


まどか「き、金庫の中に入れちゃった!?」

杏子「 フザケやがって!!」

魔女「ウケケケケェーーー!!」

121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 01:03:03.64 ID:3N6NQXId0


天の助「よしっ、杏子の家族は俺に任せろ! お前らは魔女の相手だ!」

さやか「大丈夫なの、天の助?」

天の助「安心しろ、こういうのは慣れてる!」


  プルプル真拳奥義<ピッキング天ちゃん>!


天の助「うおおおぉぉーーーッ!!」カチャカチャ!

金庫(く、くやしい……でも……!)カチャカチャ!

まどか(犯罪だ……)

天の助「俺が救出しているうちに速く!!」カチャカチャカチャ!

金庫▓░▓▒(んほおおおおぉぉーー!!)カチャカチャ!

さやか「あ、テレビのピッキングの防犯講座みたいにちゃんとモザイクかかるんだ」

杏子「というより雰囲気オカシいだろ、あれ」

122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 01:03:59.59 ID:3N6NQXId0



魔女「ウガアアァァーー!!」

さやか「いくよ、杏子!」

杏子「おう!」

首領パッチ「この成金野郎がぁーーッ!」


魔女「ウケケェーーー!!」ゴォッ!

   コイン < ヒュン! コイン < ヒュン! コイン < ヒュン!

さやか「お金を飛ばしてきた! 銭形平次!?」

杏子「下らねー技だな!」

首領パッチ「馬鹿め! そんな攻撃、屁でもねーぜ!」


首領パッチ「うおおおぉぉぉーー!!」つ100円 シャカシャカ!

首領パッチ「おりゃりゃーーーー!!」つ10円 シャカシャカ!

首領パッチ「おおお、大玉ゲットぉ!」つ500円 シャカシャカ!

杏子「何してんだ貧乏人!!」ドガッ!

首領パッチ「ウゲェッ!?」チャリンチャリーン!

杏子「これも敵の攻撃だぞ、アホか!」

首領パッチ「お前に貧乏人呼ばわりされるとか無いわ〜……」

杏子「うっせぇ!」アンアン!


魔女「ウケケケ〜!」ギャハハハ!

さやか「魔女にも笑われてるよ」

首領パッチ「んだとぉ!? 俺を怒らせたらどうなるか、その身に教えてやるぜーーー!」

首領パッチ「うおおぉぉぉぉーーーッ!!」ダダダッ

魔女「ウケッ!?」

首領パッチ「うおおおぉぉーーーッ!」ババッ

123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 01:05:22.24 ID:3N6NQXId0


   スチャッ!


首領パッチ「肩凝ってるね、お婆ちゃん!」トントントン!

魔女「???」

さやか「お小遣いをそれとなくせびる孫になった!?」

杏子「まだまだ金を搾り取る気じゃねーか!!」

魔女「ウケケ……♪」

まどか「ま、魔女もいい気分になってる……」

首領パッチ(くっくっく、シメたぜ!)トントン

魔女「ウケケェ……♪(これ、駄賃だよ)」つ スッ

首領パッチ(キタキタキタァーーー!!)グッ!



       つ『干し柿』



首領パッチ「いらんわ糞ババアーーー!! 通帳よこせやぁーーッ!!」ボキャッ!


      奥義<ハジケ流超劇場型詐欺>!!


魔女「ウゲェーーッ!?」ゴバァッ!

さやか「ここまでが奥義だったぁーーー!?」サヤーン!?

首領パッチ「てめぇらの年金はな、全部俺たち孫のもんなんだよ」つタバコ スパー

まどか「む、むごい……」


魔女「ウギギギ……」

魔女「ウケーーッ!!」ブワァッ

     コインs < ジャラジャラジャラ!

首領パッチ「ぶげぇッ!?」

杏子「魔女の反撃っ……!」

さやか「首領パッチが金に埋もれた……」

首領パッチ「久しぶり!! この感覚久しぶりぃーーーッ!! ハレクラニ以来!!」アップアップ!

    ドゴォーーーン!!

まどか「首領パッチくーーーん!?」


124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 01:07:12.64 ID:3N6NQXId0



     しゅうぅ〜〜〜

首領パッチ「  」

杏子「無事か、首領パッチ!?」

さやか「首領パッチ……? ちょっと、何とか言いなさいよ!」

首領パッチ「キ……」

杏子「き?」


首領パッチ「キキキーー!」キー!


杏子「!?」

さやか「!?」

まどか「ど、首領パッチくんが使い魔みたいに……!?」



魔女「ウケケケ♪」ニヤニヤ

杏子「あの馬鹿、操られやがった!」

首領パッチ「キキッキー!」

さやか「ていうことは『魔女の口づけ』が!? ってどこにあんの!?」

杏子「あそこじゃね? ほらあの首……いや、首無かった! じゃあ、どこだ!?」

まどか「ほら、あの上から三番目のトゲの端っこに……」

さやか「アレ違くない? つーか地肌がオレンジだから見つけにくい!」

125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 01:07:56.34 ID:3N6NQXId0


首領パッチ「キキキー!」ポカポカポカ!

さやか「いたたた! 正気に戻りなさいよ!!」

首領パッチ「キキッキー!」

杏子「マズいな。洗脳されたっつーことは本体を倒さねーと……」

天の助「ふん、どいつもこいつも。お前らは首領パッチのことを何も分かってないな」スッ

さやか「どういう意味よ」

天の助「奴はあの程度の敵に洗脳されるほどフヌケちゃいない。あれはいつものボケの延長線上だ」

杏子「じゃあ、全部演技っつーのか?」

首領パッチ「キキー!」

天の助「当たり前だ。なあ、首領パッチ!?」

首領パッチ「キ……キキ……」


首領パッチ「いや、洗脳されてるけど?」


さやか(普通にしゃべった!?)

天の助「ガーーン!」ガーン!

杏子「おい、見当外れじゃねーか」

まどか「天の助君……」

さやか「あんなに偉そうに言ったのに恥っずかしー」プププ

天の助「……」ダラダラ…


パチ天「「キキキー!」」キー!

杏子「何一緒に洗脳されてんだよ」

126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 01:08:40.17 ID:3N6NQXId0



さやか「というか、天の助! あんた金庫の方はどうなったの!?」

天の助「ああ、見事に打ちひしがれたぜ」

  金庫 < シャッキーン☆

杏子「ダメだったんじゃねーか!」

まどか「自信満々に言うことかな……?」


魔女「ウケー!」シュバッ

使い魔s「「「キキキー!!」」」ダッダッダ

首領パッチ「キキー!」ダッダッダ

さやか「げっ! 使い魔の奴らが来た!」ツイデニバカモ!

杏子「迎え打つぞ!」スッ


さやか「てぇーーい!」ブン!

使い魔「ウギャーー!」ズバァッ!

首領パッチ「あぶなっ」スカッ!

杏子「オラァッ!」ヒュン!

使い魔「グエェー!」ズブッ

首領パッチ「おっとっと」ヒョイッ

まどか(あれって絶対理性あるよね……)

127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 01:10:06.11 ID:3N6NQXId0


使い魔s「「「キッキー!」」」ダッダッダ!

首領パッチ「ヒャッハッハー!」ダッダッダ!

まどか「あっ!?」

さやか「しまった、あっちには金庫が!」

杏子「人質をとるつもりか!」

天の助「俺に任せろ!」


     プルプル真拳奥義『旅先の免税店ってワクワクするよね?』!!


天の助「安いよ、安いよ〜」『50パーセントOFFセール』

まどか「なに店開いてんの!? こんなんで使い魔が引っ掛かる訳が……!」



                 『使い魔s』<ウオオオオォォーー!!
                   │
                   │ダ
                   │ダ
                   │ダ
                   │ッ
.    \ヤスイヨ〜/       │
     『天の助』 ←────┘カクンッ!
            ダダダダッ!

                 『金庫』



使い魔「「ヤスーイ!!」」キキー

首領パッチ「ちょっとコレはアタシのよ!」

まどか「全員が吸い込まれるように特売に向かったぁーーッ!?」マドーーン!


天の助「ウチは優良店だからね〜」

首領パッチ「ブランド品がこんなに安いなんて信じられないわー! ……ん?」


       ヴィ ト ・ ン
            ↑
       拡大(コロテ)



首領パッチ「パチモンはいらんわぁーーー!!」ドゴォッ!

天の助「ぐへぇ!? バレるとはぁーー!?」ゴバァッ

まどか「お粗末すぎるコピー商品だった……」


首領パッチ「こんなシケたところに居れるか! 金持ちの所に行くぞ!」

使い魔s「「「キキキー!」」」オー!

さやか「使い魔たちのリーダーみたいになってる!?」


128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 01:10:57.55 ID:3N6NQXId0



首領パッチ「金庫についたぜ! さあ、開けるぞ!」

使い魔s「「「キキー!」」

さやか「くそう、あいつら速い!」ハァハァ

杏子「ちくしょう!」


首領パッチ「鍵無くしたぁーーー!!」ウワァァン!

使い魔s「「「キキ〜!!」」」ウワァァン!

さやか「想像以上にバカだったこいつら!」

首領パッチ「ちくしょう力技だ! 開け開け開けー!!」ドガガガガ!

使い魔s「「「キキキキー!!」」」ドガガガガッ!

     ボキィッ!!

首領パッチ「腕が折れたぁーーー!?」ギャアアァァ!

使い魔s「「「ギギィーーッ!?」」」ウギャアァァ!

杏子「敵なのに、こっちが心配になってくる……」


さやか「あの金庫、思ったよりも頑丈らしいね」

杏子「あれなら中の親父たちも無事だろうな」

129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 01:12:12.33 ID:3N6NQXId0



まどか「大丈夫かな……、ん?」キラッ

まどか「何だろうコレ? 鍵……?」つ鍵 スッ


使い魔「キキー!」

首領パッチ「そうか、あれが金庫の鍵か!!」

まどか「えぇっ!?」

首領パッチ「それをよこせぇーーーッ!!」ダッダッダッダ!!

使い魔s「「キキキーー!!」」

まどか「ひっ!? こっち来ないでぇーー!」ダッダッダッダ!

首領パッチ「待ちやがれぇーー!!」


さやか「まどか!」

まどか「助けて、さやかちゃーん!」

さやか「アゴを引いて脇を締めると速く走れるよ!」

まどか「そんなアドバイスはいいから助けてぇ!!」


130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 01:13:16.34 ID:3N6NQXId0


天の助「おい、この金庫を利用するぞ!」

杏子「どうやってだよ!」

天の助「今奴らは金庫に背を向けている。そこで、この馬鹿デカイ金庫を滑らせてブツケる!」

さやか「こんなデカくて重いモノ無理でしょ!」

天の助「やってみなくちゃ分からないだろ!」



天の助「この前ね、太平洋に会ったのよ、太平洋に」

天の助「最近会ってなかったから聞いたんだよ。『仕事忙しいんですか?』って」

天の助「そしたら何ていったと思う?」


    太平洋「太平洋は大変よ(太平洋とかけている)」



金庫「ズコーーーーッ!!」スッテーーン!


さやか「ホントに滑ったぁーーーッ!?」サヤーーン!

  金庫 < ズガガガガガガッ!

杏子「しかもすげぇ勢いで! 止まんねぇ!」


131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 01:14:41.65 ID:3N6NQXId0


まどか「来ないで〜〜!!」ダッダッダッダ!

首領パッチ「どこに逃げるつもりだ、小娘ー!!」ダッダッダ!

使い魔s「「「キキー!」」ダッダッダ!

まどか「いやぁ〜〜!」

首領パッチ「はっはっはっは〜〜!!」 ズガガガッ!

首領パッチ「んだよ、うっせぇな!」クルッ


    金庫 < ズガガガガガ!!!


首領パッチ「ええええぇぇーーーッ!?」ガビーン!



     ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!




           小さき者よ……



                  首領パッチ「あ、ああ……!!」ガタガタ



                                    力の差を知るがいい……!




首領パッチ「あああああーーーッ!!」ガタガタガタ

      金庫 < ブチッ

首領パッチ「ぶっ!!」

さやか(潰された……)

使い魔s「「「ギギー!?」」」ブチブチッ!

杏子「よっし、他の使い魔も潰した!」

132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 01:16:33.37 ID:3N6NQXId0


まどか「ありがとう、みんな! もう金庫を止めていいよ!」ダッダッダッダ!

   金庫 < ズガガガガガガッ!


さや杏「「え……」」

まどか「え?」ダッダッダッダ!

さや杏「「……」」

まどか「ね、ねぇ何で黙ってるの? このままじゃ私もあの金庫に潰されちゃうんだけど……」ダッダッダッダ!

さやか「大丈夫安心して、まどか!」

杏子「おい、天の助……」

天の助「あっしは滑らせる担当ですぜ」

さや杏「「……」」


まどか「だ、黙らないでよ! 足も限界だし、早く止め……!」ダッダッダッダ!

さやか「まどか」

まどか「えっ?」ダッダッダッダ!

さやか「アゴを引いて脇を締めると速く走れるよ」

まどか「そのアドバイスさっきも聞いたよーッ!? これ本格的にヤバいんじゃないの、ねえ!」

杏子「落ち着け、まどか! ギャグ漫画なら団子みたいにコネたら元に戻るもんだよ!」

まどか「何でぺっちゃんこになった後のことを考えてるのぉーーーーッ!?」ダッダッダッダッダ!


133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 01:18:29.17 ID:3N6NQXId0


   金庫 < ズガガガガガガガッッ!


まどか「いやあぁぁー! 本当の意味で二次元の住人になっちゃう〜〜!!」ダッダッダッダ!

魔女「ウゲェッ!?」ビクッ!

さやか「まどか!? そっちには魔女が!」

まどか「ひいぃーーーッ!!」ダッダッダッダ!

魔女「ウケケェッ!?」アセアセ

杏子「ありゃ、聞こえてないよ」


   金庫 < ズガガガガガガッ!


    ドゴオォーーーーーン!!


まどか「きゃああぁぁッ!?」ドゴォーーン!

魔女「ウゲゲェーーーーーーッッ!?」ドゴォーーン!


杏子「魔女にブチ当たった!!」

さやか「まどかぁーーッ!?」


魔女「ウググ……」ピクピク

杏子「相当のダメージだ!」

さやか「で、でもまどかが……! まどかは!?」

134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 01:19:27.98 ID:3N6NQXId0


    しゅうぅ〜〜……


まどか「うぅ……、あれ? 無事? どうして……あっ!?」

???「……」ゴゴゴゴ…

さやか「だ、誰かがまどかの前に……! あの人がまどかを守ったの!?」

まどか「あなたは……! どうしてあなたが!?」

???「……」ゴゴゴゴ…




きんにくピーマン「……」ゴゴゴゴゴ!




杏子「オメーかよ!?」

まどか「ど、どうして私の身代わりに……!?」

きんにくピーマン「気がついたら体が動いていただけさ……ゴフッ!」

まどか「ああっ! ヒドい怪我!」

きんにくピーマン「まどか……一つだけ、願いを聞いてくれないか……」

まどか「それ以上しゃべったら体が……!」

きんにくピーマン「最期の願いだ……! ……喰ってくれ、俺を……喰らってくれ!」

まどか「それは無理」

きんにくピーマン「先っちょだけ…」

まどか「無理」

さやか「何にせよ、まどかが無事で良かった」ホッ

135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 01:20:36.05 ID:3N6NQXId0



魔女「ウギギギギギ……」ボロボロ

さやか「見て! 魔女が弱っている!」

杏子「よしっ!」

首領パッチ「ウググググ……」ボロボロ

天の助「見ろ! 首領パッチが唸っている!」

杏子「よしっ……、ってどうでもいいわ!」

天の助「あれは首領パッチがサナギから成虫になる合図だ」

杏子「あの状態でサナギなのかよ」


首領パッチ「ううぅぅ!」バリバリッ

まどか「体にヒビが……! まさか本当に蝶になるの!?」

首領パッチ「うああぁーーーッ!」ピキピキピキ!


     バリン!


パチニューラ「キシャアアァァ!!」バタバタバタ!

まどか「きゃああぁぁ!? ゴジラに群れをなして戦いそうな怪獣に進化したぁーー!?」

さやか「ぐ、グロイ……」

136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 01:21:33.24 ID:3N6NQXId0


パチニューラ「キシャアアァァーー!」バタバタ!

天の助「こ、これが首領パッチの真の力……!」

パチニューラ「キシャシャァーー!」バタバタ!

杏子「こんなやつ倒せるのかよ……」

まどか「ひぃ、怖い……! すごく凶暴になってる……」ガタガタ


     ウワー  ヤベー コワイー


パチニューラ「キシャ……アぁ……」



パチニューラ「あ、あの自分、場違いなら帰りますけどっ……?」

まどか「思ったより気が弱い!?」マドーーン!

首領パッチ「何なら幼虫にもどりますし……」イソイソ

さやか「意外と話が通じる奴だったね……」


杏子「つーか、オメー洗脳解けたのか?」

首領パッチ「ああ、あの<江戸 金庫の乱>でな」

さやか「さっきの騒動に変な名前付けとる!」

首領パッチ「恐ろしかったぜ。まるで<呪いのローラー>を喰らったかのような衝撃……」

  サンシャイン『アパッチのおたけび? うん、オッケー☆』テヘペロッ

まどか「ローラ違いだよ」


首領パッチ「しかし、俺を洗脳するとは死ぬ覚悟は出来てんだろうな、成金野郎?」ゴゴゴゴゴゴ!

天の助(首領パッチがキレた! こうなったアイツはもうブルドーザーを止めることも出来ないぜ……)

杏子「出来ないのかよ」

137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 01:22:31.11 ID:3N6NQXId0



魔女「ウギギギ〜〜!」プルプル

さやか「今がチャンスだね。使い魔は皆始末したし、後は魔女一人!」

杏子「4人で力を合わせて、ソッコーで終わらそうよ」

首領パッチ「ならば、連続奥義でケリを付ける!」

天の助「私たちのカルテットをご馳走させて差し上げましょう」フフフ!


魔女「ウケケケェーーー!!」

天の助「金、金、金とウルサいワガママBOYめ!」ダッダッダッダ!

首領パッチ「金以外にも目を向けろ! その考えを叩き直して有り金全部頂く!!」ダッダッダッダ!

まどか「前半と後半が噛み合ってない!」


魔女「ウケケーーーッ!!」

    コインs < ヒュンヒュンヒュン!!

さやか「わわっ! またこの攻撃ぃ!?」キン! キン!

杏子「ショボイもんだけど、こうも数が多いとしんどいな!」キン! キン!

天の助「ならば、その必死に集めた金も重みとなることを教えてやろう!」プルプルプル〜!

魔女「ウケェ!?」プルプル!

杏子「何だ!? ところてんが魔女の体に絡まった!?」



     プルプル真拳奥義<衝撃吸収! ところてん貯金箱!>


                 ズンッ!!

.

138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 01:29:06.55 ID:3N6NQXId0


魔女「ウグググ……!?」オモイー!

まどか「魔女の背中に巨大な貯金箱が!」

さやか「中にはお金がぎっしり詰まってる!」

天の助「へへへ! その貯金箱はちょっとやそっとじゃ壊れねーぜ!」

天の助「どうだ、動きにくいだろ! それが金の重さだ!」

魔女「ウゲゲゲェ……!」ググググ…


首領パッチ「でかした、天の助! これならあの奥義を使えるぜ!」

天の助「おう、元よりそのつもりよ! 行くぜ首領パッチ!」


    協力奥義<氷河期を勝ち抜いたエリート新入社員>!!


 『ウィッチ・コーポレーション』

首領パッチ「社長! ともに世界規模の会社を作りましょう!」

天の助「新しい企画なんですが!」

魔女「???」


さやか「変な会社を立ち上げたぁーーーッ!!」

杏子「それのどこが奥義だよ!?」

まどか「よく見て二人とも!」

さや杏「「へ?」」


首領パッチ「海外への展開も視野に入れて、社内公用語は英語に……」セッセ!

天の助「はい! 我が社のスポンサーになっていただくと……」セッセ!

まどか「才気溢れる社員が汗水垂らして働くことによって……!」


首領パッチ「やったGoogleを抜いたぞぉーー!!」

天の助「社長! ついに我が社が世界1の企業に!」

   貯金箱 < チャリンチャリンチャリンチャリン……!

魔女「ギギギギギギィ〜〜!?!?」グググググ!!

まどか「稼いだお金がそのまま魔女に!!」

さやか「そんな規模のデカい奥義だったのぉーーーッ!?」サヤーーン!

139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 01:31:27.91 ID:3N6NQXId0



魔女「ウゲェアァーーーッ!!」ブン!

首領パッチ「グヘェッ!?」ズサーー!

天の助「ゴバァッ!?」ズサーー!

まどか「ああっ! 殴り飛ばされた!」

首領パッチ「チッ! まだあんな力が残っているとはな!」

天の助「一生懸命尽くしてきたのにリストラかよ〜〜!」


魔女「ウガアアァァァーーッ!!」ダッダッダッダ!

首領パッチ「せっかく億万長者になったのに、まだ金の正しい価値が分からねーのか!」

天の助「お前のような分からず屋は……!」

首領パッチ「分からず屋は……!」

魔女「ウガガガーーーッ!!」


パチ天「「アフリカに行って恵まれぬ子供達と触れ合ってきやがれーーーッ!!」」メキャァッ!


    バッキィーーーーンッ!!


魔女「ウゲバァーーーーッ!?!?」ヒューーーーン!


165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 02:23:17.38 ID:3N6NQXId0


>>140



杏子「魔女が飛んでいく……。まさかたった一発のパンチで本当にアフリカに飛ばすつもりか!?」


       ヒューーーーーン……


          ドスン!


魔女「ウグググ……」シュウゥ〜…

コパッチ「アンニョンハセヨ!」

まどか「韓国!?」

さやか「大陸ですらない!」

杏子「でもなんで韓国に……」


コパッチ「飛行機に乗せるハムニダ」ズルズル…

魔女「グググ……」ズルズル


    『ソウル国際空港』


まどか「あぁッ!? 一旦ハブ空港を経由してアフリカに送るつもりだぁーーー!!」

さやか「旅行気分かよ!!」



     そして、アフリカについた


魔女「ウグググ……」ピクピク…



166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 02:24:06.70 ID:3N6NQXId0

>>141



まどか「で、でもここからどうするの? 魔女はアフリカにいるし攻撃できないよ?」

杏子「魔女がアフリカの暮らしを見て改心するとは思えねーしな……」

天の助「そこで、お前らの出番だ!」

さやか「へ? あたしら何するの?」

首領パッチ「…………」



首領パッチ「……寄付をしよう」




  100円でもいい 10円でもいい

  その小銭で救える命がある

  あなたの小さな優しさが、いずれ大きな愛を生むでしょう

  恵まれぬ子に愛の手を  すべての人々に愛の手を……




    貯金箱 < チャリリリリーーーンッ!!

魔女「ウギャアアァァァーーーーー!?」バキバキベキッ!!


まどか「世界中の寄付がアフリカに集まって魔女の重しになってる!!」

首領パッチ「これぞ、究極奥義<ピースフル・地球>!!」

杏子「無駄に壮大だな」

さやか「あたしも徹子の方のユニセフに寄付したよー!」



魔女「ウギャギャギャギャーーー!?」ベキベキバキィッ!

天の助「どうだ、普通の小銭でも桁違いに重いだろう! 100円で救える命……、それは命の重さだ!」


魔女「ウグググ……!!」

日本人「アフリカに来たら変なのが居た……。何だアレ?」

魔女「ギギャギャーー!」ブンブン

日本人「え? ここ掘れワンワン? まあ俺は元からそのつもりで来たんだけどね……」

142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 01:38:13.47 ID:3N6NQXId0



天の助「ヒャッハッハ! これで買ったも同然だぜ!」ガッサガッサ!

首領パッチ「戦利品を頂くとするかー!」ガッサガッサ!

さやか「うわ……、さっきまで金の重さがどうとか言ってた癖に……」


      地面 < プシュッ!


パチ天「「ん?」」


      地面 < ブシュウゥゥゥゥーーー!!


パチ天「「ぶべぇらぁーーーッ!?」」ドゴーーン!

まどか「首領パッチくん、天の助くーーん!?」

杏子「き、急に地面から水柱が……!?」


魔女「ウケケケェ〜」ズルリッ


さやか「アフリカに居るはずの魔女も一緒に出てきた!? これは……」

首領パッチ「あの野郎……! アフリカにボランティアで来ている日本人井戸掘り職人に穴を掘らせてここまで戻って来やがった!」

まどか「ええぇぇーーーッ!? すごくまどろっこしい!!」マドーーン!

魔女「ウケケケッ!」ニヤニヤ

143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 01:40:03.96 ID:3N6NQXId0



天の助「ううぅ……、足の骨が折れちまったぁーー!」エグエグ…

さやか「落ち着いて天の助! 落ち着いて自分の言葉に疑問を持って!!」


魔女「ウケケケーーーッッ!」ブンブン!


杏子「うおっ!? 金の攻撃から素手にシフトしやがった」

まどか「これ以上背中の貯金箱を重くしない為だ!」


魔女「ウケケケェーーー!!」ブンブン!


さやか「うわ、こっち来た!? 天の助、早く起きあがってよ、邪魔!」

天の助「無理だ〜、もう俺は二度と立ち上がれねぇ! これ絶対骨だけじゃなくてアキレス腱もイッてる!」

さやか「言いたいこと山ほどあるけど、逃げないとブチ殺されるよ!」グイグイ

天の助「おい、重傷人を引っ張るな! 見ろよこの足! 指が全部消失してんだぞ!」

さやか「あー、うっとおしい!! ツッコミたいけど早く逃げないと……」

魔女「ウケェーー!!」ブン!

さやか「うぇっ!? 危なっ……」グラッ

さやか「きゃあぁーー!?」ビターーン!

天の助「ぎゃあッ! 重い!」

さやか「ちょっと、失礼でしょ!」

天の助「だって勢いよく乗られたら……ハゥッ!」ピキーーン!


天の助(そうだ、この感覚……久しく忘れていた。上に乗られるこの感覚……!)


天の助「俺ってバカだなぁ……。そうだよ、例え足がモゲても手がチギレても……!」

さやか「て、天の助?」



            風と同化出来る胴体があるじゃないか……!!



天の助「うおおぉぉーー! そうだ、俺にはこの技がある!!」

天の助「ところてんジェットぉーーーーッッッ!!!」ゴオォッ!

144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 01:41:50.01 ID:3N6NQXId0




魔女「……」

さやか「……」

天の助「……」

天の助「あ、動力がなかった」

さやか「何がしたいのあんた!?」サヤーン!

天の助「さやか、ちょっとその状態でオナラこいてくんない? ぶっ飛ぶくらいのデカイヤツ」

さやか「失礼すぎるわ!!」


魔女「ウケェーー!!」ドゴォッ!

天の助「ぐわあぁーーッ!!」ズサー!

さやか「きゃあぁぁッ!?」ズサー!

まどか「さやかちゃーーーん!!」

天の助「ううぅぅ……、まさかこんなことになるとは……!」


    敗因:さやかのオナラがデカくなかったから


さやか「何であたしのせいになってんの!? しかもあたしが一応オナラしたみたいになってるし!」

145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 01:43:08.20 ID:3N6NQXId0



魔女「ウケケケケケッ!!」ニヤニヤ

杏子「ちっ、あのヤロー調子に乗ってやがるな」

首領パッチ「ハイ、先生! ここは一発お見舞いしてやった方がいいと思います!」

杏子「珍しく意見が会うな。こっちに気づいてない内にちょっくらヤルか」つ槍 スッ

首領パッチ「お供しますぜ!」

杏子「なるべく音を立てるなよ」

首領パッチ「イエッサー!」



       終了条件1:「魔女」を倒す



まどか「うわぁ、急にSirenっぽくなった!?」

さやか「なるほど、これなら隠密行動に適してるね!」


杏子「よっしゃ行くぜ!」

堕辰パッチ「ウウウウウウウウウゥゥゥゥーーーーッッ!!!!!」

まどか「全然適してなぁーーーーい!?」マドーン!

さやか「何でよりによってそれに……」

146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 01:45:14.09 ID:3N6NQXId0


魔女「!!」

杏子「魔女に気づかれた!?」

堕辰パッチ「ウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーッッッ!!!!」

さやか「当然だね」

魔女「ウケケケェーー!!」ブン!

杏子「ぐおッ!?」ガキン!

堕辰パッチ「ウウウウウ……ぐばぁっ!?」ゴバァッ!

堕辰パッチ「ぐふぅ! 頭を刈られちまった!」ズサーー!

杏子「元から頭だけだろ」

堕辰パッチ「この世界はダメだ杏子。俺の首を持って過去のお前に渡すんだ……!」ハアハア

杏子「いや、アタシ確かに協会の人間だけど、ループできる訳じゃねーし……」



魔女「ウケケケケケケェーーーーッ!!」ゴゴゴゴゴゴ!

まどか「な、何なのこのオーラ!?」

さやか「魔女を見て! とんでもない量の魔力が魔女に集まってる!」

杏子「次の一撃でケリをつけるつもりか」

天の助「あの威力……やべぇ……!」

首領パッチ「そうはさせるかぁーーーッ! 行くぞ杏子!」バッ

杏子「お、おう」ダッ


       協力奥義<正月路地裏の風物詩>!!


杏子「大人しく金出しなよ」グググ!

首領パッチ「お年玉もらってんだろ、坊っちゃんよーーーッ!!」ゲシゲシッ!

魔女「ホンマカンベンシテクダサイ……」オドオド…

まどか「カツアゲだぁーーーー!?」


さやか「これで魔女の攻撃は中断され……」

天の助「あの馬鹿! カツアゲなんてしやがったら……!」

さやか「えっ!?」

147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 01:48:47.62 ID:3N6NQXId0


首領パッチ「へへへ、中々持ってるじゃねーか!」

杏子「お、おい首領パッチ!」

首領パッチ「ん?」


魔女「ウケケケケケッ!!」ミガル!


まどか「ああっ!? 魔女の背中の貯金箱がほとんどカラに!」

天の助「カツアゲしちまったからだ」

さやか「で、でもカツアゲで取られる金の量なんてたかが知れてるじゃん! あの貯金箱をカラにするほどの大金を、首領パッチがカツアゲしたとでも言うの!?」

首領パッチ「しまったぁーー! 小切手でカツアゲするんじゃなかったぁーーーーッ!!」


  首領パッチ『えぇッ!? こんなにくれるの!? ホントにいいの!?』

  魔女『ウケケ』つ小切手 カキカキ


さやか「どんなカツアゲの仕方だぁーーーーッ!?」サヤーン!?


魔女「ウケェーーー!!」ブン!

首領パッチ「ぐへえぇーーーーッ!?」ズサーー!

杏子「拘束が外れたから魔女が素早くなりやがった!」

さやか「どーすんの、首領パッチ! あんたのせいで……!」

首領パッチ「分かってる、テメーのケツはテメーで拭くぜ」つ小切手 スッ

148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 01:50:22.31 ID:3N6NQXId0



首領パッチ「この小切手を換金してぇーーー!」つ札束



      違法カジノでざわざわしてやるぜぇーーー!!



首領パッチ「ククク……倍プッシュだ……!」


           ざわ…

                      ざわ…


   〜五分後〜


首領パッチ「うわぁーーーん、ボロ負けしたぁーー!!」ウワァァン!

ヤクザ「兄ちゃん、ここまでしでかしてどう落とし前つけるつもりだ?」

さやか「何やってんのーー!?」

杏子「つーか、遊んでんじゃねーー!」


ヤクザ「どっちの腎臓を執ってほしい?」

首領パッチ「ひいぃぃ! 勘弁してぇ! 違うんです、あっちの人のお金なんです! あの人が払ってくれます!」

魔女「!?」ビクッ

まどか「魔女に責任転嫁した!?」


     極道奥義<プロフェッショナル・YAKUZA>!!


ヤクザ「なかなか活きのいい腎臓だ」ヒュバッ!

魔女「ウギャァーーー!?」グシャ!

ヤクザ「角膜もいただくぞ」シュバッ!

魔女「ウゲゲェーーーーッ!?」ブシュッ!ブシュッ!

まどか「ヤクザがスゴいスピードで次々と魔女の内蔵を抉り取っていく……」

さやか「ヤクザ怖ええぇぇーーーーッ!?」サヤーン!

149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 01:51:22.15 ID:3N6NQXId0



魔女「ウギギギ…ギギ……!」ピクピク…

天の助「弱っている! 今がチャンスだ!」ダッダッダ!

首領パッチ「みんなでトドメの一撃をお見舞いするぜ!」ダッダッダ!

杏子「りょーかい!」ダッダッダ!

さやか「任せて!」ダッダッダ!

ヤクザ「やってやろうじゃないか」ダッダッダ!

さやか「あんたも!?」ダッダッダ!



       究極奥義<ヤクザのケジメ>!!



杏子「オラァーー!」ザクッ!

魔女「ウゲェーーッ!?」ブシュッ!

さやか「てぇーーいっ!」ズバァッ!

魔女「ウガァーーーーーッ!?」ドガッ!

ヤクザ「組に泥を塗ったんだ、覚悟は出来てるだろうな?」ゴシャッ!

魔女「ウギャァーーー!?」ズサー!

ヤクザ「フン、ゲスい鳴き声だ」シュババッ!

ヤクザ「二度と、裏の世界を嗅ぎ回るんじゃねーぞ……」ゴゴゴゴ…

魔女「ウギャギャギャァーーーーーーッ!!」ドゴォッ!



       ドゴオオォォーーーーン!!



まどか「奥義名から何から何までほとんどヤクザの奥義だぁーーーーッ!?」マドーーン!



         しゅううぅぅ〜〜…


  グリーフシード < カランッ


天の助「よっしゃー!」

首領パッチ「ありがとうございます、ヤクザさん!」

ヤクザ「残りの3000万円……ちゃんと返せよ」

首領パッチ「」ぐにゃぁ〜


150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 01:52:50.48 ID:3N6NQXId0




   〜ゲーセン〜


さやか「結界が消えた!」

杏子「お、おい、親父たちはどこだ!? 魔女が死んだなら解放されてるハズだろ!?」

まどか「あれっ? ホントだ、居ない……!」

首領パッチ「ああぁ、しまった!!」

杏子「何か分かったのか、首領パッチ!?」

首領パッチ「人質が金庫に入ったまま魔女を倒してしまったから、現実世界でも不都合が生じた! アレを見ろ!」

まどさや杏「「「えっ!?」」」チラッ


 UFOキャッチャー『佐倉ファミリー「「「う〜ん…」」」キゼツ』


首領パッチ「UFOキャッチャーの中に入っちまってる!」

天の助「な、なるほど、納得いったぜ!」

杏子(納得出来ねぇ……)アンアン…

151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 01:54:10.68 ID:3N6NQXId0


首領パッチ「杏子! いまこそ家族を救出するときだ!」

天の助「さあ、得意のUFOキャッチでGETするんだ!」

杏子「いや、流石に無茶がねーか!?」

首領パッチ「やってみなくちゃわからねぇぶれぼひゃぎゃーー!!」

天の助「これは首領パッチが熱くなっている時特有の噛み方! 早く助けねぇとどんどん奴が何言ってるか分からなくなるぞ!!」

杏子「元から何言ってるか分からねーだろ……」

首領パッチ「いいからさっさとしろじゅびぎゃどんべーーーー!!!」

杏子「ちっ、分かったよ……」



杏子「……」カチャカチャ…

   キャッチャー < ウイィーーン…

 UFOキャッチャー『杏子父「」』

   キャッチャー < ウィーーン、ガシィッ!

 UFOキャッチャー『杏子父「痛てててててぇッ!? なに!? 何コレ!?」』


 UFOキャッチャー『杏子父「私は何を……? ってどこここ!? 何で周りに人形が……、あっ』

杏子「……」

 UFOキャッチャー『杏子父「杏子……」』

杏子「お、おう、親父……」

さやか「何この再会……」サヤーン…

152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 01:56:13.72 ID:3N6NQXId0



 UFOキャッチャー『杏子父「本当に杏子なのか……?」』

杏子「ああ……」

 UFOキャッチャー『杏子父「大きくなったな……。いや、育児を放棄した私なんかに言われたくはないか」』

杏子「……」

 UFOキャッチャー『杏子父「お前はきっと私を恨んでいるだろう。許してくれ……とは言わない」』

さやか「え、ええぇーーッ!? このまま話を始めちゃうの!? 一回出ようよ! 何かすごくマヌケな絵面だよ!」

 UFOキャッチャー『杏子父「む、そうか、すまない……」』

杏子「ちょっと退いててよ。今開けるから」つ槍 ズパッ!

まどか「あれが本当に杏子ちゃんのお父さんなの? 何だか雰囲気が違うような……」

天の助「ぬ〜ん、俺たちも再現VTRでしか知らぬから分からないな」

まどか「再現……?」



杏子父「モモ、気をつけなさい」スッ

モモ「うん、ありがとうお父さん」ヨイショッ

杏子母「あ、あなた……手!」

杏子父「うん? 手がどうし……た」つぬいぐるみs <プラーン…

さやか「あ、腕に人形のヒモが絡まってる」


杏子父「ふ……ふぅん……! ううぅぅ……!!」プルプルハァハァ……!


さやか「あ、ああぁ〜〜〜〜ッ!? 興奮してるぅーーーッ! これは間違いなく杏子のお父さんだぁーーーッ!!」

杏子「頼むから止めてくれ……」

153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 01:57:27.10 ID:3N6NQXId0



杏子母「あなた! 気をしっかり持って!」

杏子父「す、すまない。禁断症状が……」

杏子「親父」

杏子父「あ、杏子……」

杏子「今頃ノコノコと、何しに帰ってきたんだよ」

モモ「お、お姉ちゃん……?」


杏子「アンタ、自分が何したか分かってる? 自分の娘を捨てたんだよ」

杏子父「……」

杏子「埋蔵金を探しに行く? ふざけんな」

杏子「運良くお目当てのモノを見つけたみたいだけどさ……、それでどうなるの?」

杏子「金持ちになって帰ってきたから許してくれってか?」


杏子「それでも親か」



さやか「杏子……、そんな言い方……」

杏子「さやかは黙っててくれ……、これは家族の問題だよ」

首領パッチ「杏子……、どんな言い方……?」

杏子「聞くなよ」


杏子父「杏子……」

杏子「話しかけないで」

杏子父「聞いてくれ」

杏子「聞きたくない」

杏子父「……ならば勝手に話させてもらう」

154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 02:00:46.89 ID:3N6NQXId0



杏子父「私は馬鹿だった。どうしようもない大馬鹿者だった」

杏子父「下らないプライドに囚われて、家族のこともロクに考えていなかった」

杏子父「あの日、協会を離れるとき、お前も連れていくかどうか悩んだ。だが、前日にあんなことを言った手前、お前と話すのが怖かった」

杏子父「悩みに悩んで、置いてきてしまった。心のどこかで、お前の力に恐怖していたんだ」

杏子父「家族に非難されても譲ることは出来なかった。家族を守る為と自分に言い聞かせていた」

まどか「そんな……」

さやか「最低……」

杏子「……」


杏子父「そこからは後悔の日々だった。許されぬ罪を背負った罪人になったかのようだった」

杏子父「私は考えた。どうすれば罪が許されるのか? そして私はあの書き置きを実行することにした」

杏子父「私が不甲斐なかったから、家が貧しかったから……。だから娘は魔女になってしまった」

杏子父「なら、ちゃんと家族を養えるようになれば、お前も許してくれるんじゃないか……と」


杏子父「埋蔵金を探している時、生きているという実感を感じられた。この時になってようやく私は、下らない宗教に魅せられていたと気づいたよ」

さやか「遅せぇ」

杏子父「しかし、一つ埋蔵金を見つけてもまだ心は満たされなかった。私はいつの間にかトレジャーハンターが職業となっていた。これでは神父をしていた時と少しも変わらない」

杏子父「もっと大きな価値のあるものを発掘しようと、次々と新たな埋蔵金を堀り尽くした。家族までも巻き込んで……」

杏子父「そんな馬鹿な私が、何故今になって帰ってきたと思う?」

杏子「……さあね」

杏子父「悪魔が……現れたんだ……」

杏子「悪魔……?」



杏子父「白い獣が……モモに甘言を囁いてきたのだ」

155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 02:03:25.82 ID:3N6NQXId0



杏子「白いっ……、キュゥべえか!?」

まどか「えぇっ!?」

さやか「アイツ、どこにでも湧くのね……!」

杏子「そ、それでモモは……!? まさかお前っ!」ガシッ!

モモ「い、痛いよ、お姉ちゃん……!」

杏子「言えっ! お前まさか、魔法少女に……!」

杏子母「杏子……」

杏子父「その子は拒んだ」

杏子「えっ……」


杏子父「叶えたい願いもあった筈だ。願いさえすれば、お前に会うことや、元の家庭に戻ることも出来たのに、モモはそれを望まなかった」

杏子父「本能的に理解していたんだろうな。甘い言葉には裏があることを……」

杏子「そうかぁ……、お前強いなぁ……。お姉ちゃんよりずっと賢いよ」

モモ「えへへ、ありがとう。それにね……」

杏子「ん?」

モモ「お願いは、やっぱり自分の力で叶えたいもん!」

杏子「モモ……」

156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 02:05:19.00 ID:3N6NQXId0


杏子父「モモから悪魔のことを聞いてやっと理解したよ、杏子。お前は何も悪くはなかった」

杏子父「ただ、貧しくても幸せな家庭が欲しかったんだな……」

杏子「親……父……」

杏子父「これは都合のいいワガママだとは分かっている。だが私は、私たちは心から望んでいるんだ」

杏子父「私に出来る罪滅ぼしはこれしかない」



杏子父「お前の願いを叶えるよ、杏子。もう一度、あの協会でみんな一緒に暮らそう」



杏子「お……お……」

杏子「お父さん……!」

杏子母「杏子……!」

モモ「お姉ちゃん!」

杏子「お母さん……モモ!」




さやか「杏子……良かったね……!」

まどか「杏子ちゃん……!」ウルウル

天の助「これで一件落着か」

首領パッチ「ハンカチ無しでは見れねぇ〜〜!」

 UFOキャッチャー『田楽マン「ふ、困った奴らだ」』

まどか「田ちゃん、まだそこにいたの!?」

157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 02:06:37.32 ID:3N6NQXId0



       コソコソ…

 ボーボボ「あれが杏子ズファミリーか」コソコソ

 マミ「まさか、佐倉さんの家族がトレジャーハンターだったとは……。でも、いい雰囲気ね」コソコソ

 ほむら「まさか、到着した時にはもう終わっていたなんてね」コソコソ

 マミ「私たちはもうちょっとしたら出てきましょう」コソコソ

 ほむら「そうですね、数年ぶりの家族の団らん……邪魔しないほうがいいわ」コソコソ



さやか「そうだ! ねぇ、杏子! 学校のことなんだけどさ!」

杏子「あ? 学校?」


 マミ「……」

 ほむら「……」

 ほむら「…………空気読めよ青が」チッ

 マミ「あ、暁美さん!?」


さやか「あんた、学校に行きたくない? 私たちと同じ学校にさ!」

杏子「え、えぇッ!? で、でもアタシ全然勉強できないし……それに……」

さやか「グズグズ言わないの! あんたが本当は学校に行きたがってるっていうネタは挙がってるんだから!」

杏子「なぁっ!? 何で知ってるんだよ!」

首領パッチ「みんなにバレてるぞ」

天の助「そーそー」

まどか「ご、ごめんね」

杏子「ななな何で……アレは独り言で……ハッ!」チラッ

 UFOキャッチャー『田楽マン「ぷぷぷ」ニヤニヤ』

杏子「田楽てめええぇぇぇ!!」

158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 02:07:49.86 ID:3N6NQXId0


杏子「コノヤロー! よくも!!」ガンガン!

 UFOキャッチャー『田楽マン「おいおい、店のモノに暴力を振るうんじゃねーぜ〜」ギャハハハ!』

杏子「ならば!」つ100円 チャリン!

 UFOキャッチャー『田楽マン「え」』


   キャッチャー < ギャルルルルルッ!!


 UFOキャッチャー『田楽マン「え、ええぇぇーー!? 何この動き!?」』


杏子「オラオラオラオラァーーーッ!!」カチャカチャカチャッ!!

   キャッチャー < ガシィッ!!

 UFOキャッチャー『田楽マン「ぐえぇッ!?」』

   キャッチャー < グルングルングルングルン!!

 UFOキャッチャー『田楽マン「ぎゃああぁぁーー!? 殺されるぅ!! UFOキャッチャーに殺されるぅーーッ!!」』

   キャッチャー「地獄の断頭台!!」ゴシャァッ!

 UFOキャッチャー『田楽マン「ぶうぅッ!? 悪魔将軍!?」』


まどか「でも、さやかちゃん、言って良かったの? 学校のことは杏子ちゃんへのサプライズって…」

さやか「よく考えてよ、まどか。数年ぶりに家族と再会したんだよ? これを超えるサプライズなんてあたし達には無理だってば」

さやか「だから、杏子への祝福として……ね?」

まどか「そっか……そうだよね!」

159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 02:10:14.22 ID:3N6NQXId0



杏子「オラァーー! 調子乗ってんじゃないよコラァ!」

田楽マン「ひいぃぃ、許してぇ!」プルプル

杏子父「杏子」

杏子「あ、親父」

杏子父「学校に……行きたいのか? いや、それも当然だろうな」

杏子「え……、いや、その、それは……」

杏子母「杏子、遠慮しなくてもいいのよ?」

杏子「遠慮なんて……。でもさ、学校に入学って書類とかお金とか色々必要に……」

杏子父「子供がそんな心配するものではない」

杏子「魔法少女だって……」

さやか「はいはい! あたし魔法少女だけど、ちゃんと女子中学生やってますよー!」

杏子「ぐっ!」

杏子父「ああ言ってるが……」

杏子「で、でもさ……」


杏子父「お前はどうなんだ?」

杏子「えっ……?」

杏子父「お前は行きたくないのか、学校に」

杏子「……」


杏子「……行きたい」


杏子父「そうか……任せておけ」ナデナデ

杏子父「お父さんの力でどうにかしよう」

まどか「え、でもどうやって……?」

杏子父「安心したまえ、杏子は必ず入学する。……そして」

杏子父「そして、君の学校の設備はモロモロが向上するよ。記念碑と記念樹が出来て、図書室の寄贈書は数百万を越え、学食の食べ物も全て無料になるはずだ」

さやか(金だ……! 金の力を使うつもりだ……!!)ガタガタ

160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 02:11:42.44 ID:3N6NQXId0



ボーボボ「俺も協力しよう」スッ

まどか「あっ、ボーボボ!」

杏子父「君は……?」

ボーボボ「彼女達の学校の支配者だ」

杏子父「えッ!?」

ほむら「良かったわね、杏子」

マミ「佐倉さん!」

杏子「ほむら……マミ……、あ、ありがとな」

杏子「そうだ、さやかもまどかも首領パッチも天の助も! ありがとう!」

さやか「いいっていいって!」

まどか「うんうん!」

パチ天「「礼には及ばん、小娘」」


杏子父「この子達も、お友達かい?」

ほむら「どうも」

マミ「初めまして!」

モモ「わあ、お姉ちゃんがいっぱい!」

杏子「みんな、いい奴だよ。仲間だし友達」

杏子「あと、その、もう一人世話になった奴がいるんだけど……」

杏子父(話し方が少し変わった……、ということは)

杏子父「そうか、その人はお前の大切な人か……」

杏子「た、大切って何言ってんだよ!? そ、そりゃ大切といっちゃ大切だけどさ……」

さやか「やーい、赤くなってるー」

杏子「止めろコラ! ……あっ、いた! おーい、ソフトーン!」手フリフリ

杏子父「え?」チラッ

161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 02:13:48.79 ID:3N6NQXId0



ソフトン「杏子、ここにいたのか。荷物のことだが……ん?」

杏子「おう、紹介するよ。アタシの家族で、さっき帰ってきたところで……」

杏子父「!! あ、あぁ……!」


杏子父「う、ウンコ……!」ガタガタ


杏子父「と、父さんは認めんぞぉーーーーッッ!!!」

杏子「何を!?」アンアン!?



         語り継ぐ 人もなく

                 吹きすさぶ 風の中へ



まどか「何か流れ始めた!?」

杏子父「認めん、認めんぞぉーーーッ!!」ダッダッダッダッ!

マミ「あっ、そっちには……!」

      ブギュゥッ!

田楽マン「ウギャァッ!?」グバァッ!

杏子父「うわあぁッ!? 何か踏んだ……!?」グラッ



          紛れ散らばる  星の名は  忘れられても



 UFOキャッチャー < ガッシャァーーーーンッ!!

162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2012/03/22(木) 02:17:20.66 ID:3N6NQXId0


杏子父「ウギャアアアァァーーーーッ!?」バリリーーン!

杏子「親父ぃーーーーーッ!?」

杏子母「あなたーーー!?」

モモ「お父さぁーーーん!?」



         ヘッドライト・テールライト

                       旅はまだ終わらない



         ヘッドライト・テールライト

                       旅はまだ終わらない



まどか「何でいい話で終わらそうとしてるの!?」マドーン!?

さやか「ヘッドライト・テールライト勿体ねえぇぇーーーッ!!」サヤーン!?



佐倉杏子―――家族と再会し学校に通い出す 
  
杏子母・モモ―――再び杏子と生活する

杏子父―――再起不能
                                    ___________|\
                                   [|[||  To Be Continued....!    >
                                     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|/



まどか「あれぇ、ジョジョっぽい!?」



  第十話「もう誰もが頼りない」 完


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posted by 保管予定者 at 12:58| Comment(0) | アニメ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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